昨年末、出版社から急に依頼され、ピケティ本の解説本を書いた。2月上旬くらいに発売される予定だ。
現代ビジネスに書いた「ピケティ本『21世紀の資本』は、この図11枚で理解できる」の延長で、「【図解】ピケティ入門
たった21枚の図で『21世紀の資本』は読める!」という本のタイトルだ。アマゾンではもう広告もでている。
従来の解説本とかぶらないように、ピケティの最新論文を翻訳している。その箇所を一部紹介してみよう。
ピケティの『21世紀の資本』は、出版されるや多くの注目を集めた。
とりわけ学者たちの反応は機敏であり、経済学のみならず、社会学や政治学、人類学、歴史学など、社会科学系の学者にも広く読まれたようだ。
ここに、『The British Journal of
Sociology』(2014年12月号)というイギリスの社会学雑誌に寄稿された、ピケティの論文がある。これは、いわば、社会科学系の学者たちが書評などを通じて表した批評への、ピケティからの「返答集」だ。
ピケティは、まず『21世紀の資本』が学問の枠を超えて広く読まれたことへの謝意を述べ、さまざまな批評に応える形で、みずからの研究の今後の展望を示している。
その中で、累進課税に関する部分ついては、次の通りだ。
格差と制度への私の歴史的アプローチは、いまだ探求の途上にあり、まだまだ未完の思索である。特に、今勃興している新たな社会運動や政治活動への参加動員が、今後、はたして制度改革にどのような影響を与え得るかなどについては、この著では十分に語ることができていない。
また、私は累進課税に思索を集中させた一方、たとえば所有権制度の他の可能性など、多くの制度改革の様相や可能性については、十分に言及できなかった。
累進課税がとりわけ重要であると考えたのは、この制度によって、企業の資産や口座の可視化が可能になるかもしれないからだ。そして可視化によって新たな形のガバナンスが可能になると考えている(たとえば企業での雇用機会を増やすなど)。
Plachaudは、グローバルな課税提案に対する極端な論及は、その他、実行可能であるかもしれない社会発展から注意をそらしてしまう危険がある、と論じている。
そういった指摘をしたのは、おそらく私が、富裕税の進歩と改善を一歩ずつ着実に推進することの重要性を、ことさら強く信じているということについて、十分に説明できていなかったからだろう(そのような税制が何百年にも渡って制度化されていたことも、過去にはあった)。
富裕税を徐々に、純資産に対する累進課税へと変化させることは可能で、イギリスなどでは、すでにそういった動きが始まっている。さらに、この動きが仮に進歩したとして、それは資本主義を再び民主主義の手に取り戻すための、いくつもの可能性の一つに過ぎないということ。この点については、もっと明瞭に説明しておく必要があったのかもしれない。
このほかにも、ピケティ本の効率的な読み方など、ピケティ本をさらに深く読むためのヒントも書いてある。ご興味があれば、ご一読いただきたい。