会議の日程を見ると、開催日は11月4日、13日、14日、
こうした日程やGDP一次速報の公表を踏まえると、
一方で、政治サイドとしては、消費増税先送りを争点にした解散・
ちょうど2年前に、11月16日(赤口)解散-12月16日(
12月の日曜日をみると、7日(先勝)、14日(友引)、
また、11月30日会期末の今国会を小幅延長して、
先の内閣改造は、来年の本格組閣までのつなぎ内閣であったが、
霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!
先週21日、経済産業大臣に宮沢・自民党政調会長代理(参議院議員)が、法務大臣に上川・自民党女性活躍推進本部長が就任した。政府・与党は、「政治とカネ」をめぐる問題で女性2閣僚のダブル辞任で受けた打撃から立て直すべく、新たな態勢のもと引き続き「経済再生」「地方創生」「女性活躍推進」などの看板政策に取り組み、信頼回復に全力を挙げる方針だ。
【新たな「政治とカネ」問題も浮上】
一方、民主党や維新の党など野党側は、安倍総理の任命責任や、閣僚の資質や疑惑を追及する構えで、攻勢を強めている。資金管理団体による政治資金収支報告書の記載ミスを訂正した江渡防衛大臣に続き、就任したばかりの宮沢大臣にも「政治とカネ」をめぐる問題が明らかとなった。
宮沢大臣の資金管理団体による不適切な政治活動費支出が過去にみつかったほか、電力会社への監督を所管する経済産業省のトップである宮沢大臣が東京電力株600株(時価約20万円)を保有していることは利益相反の恐れがあり、中立・適正な判断が担保されるのかなどと問題視されている。
宮沢大臣は、不適切な交際費計上があったことを認めたうえで、事務所秘書にその代金を弁済させ、政治資金収支報告書を訂正する考えを明らかにした。東電株をめぐっては、菅官房長官が、政務三役在任中の株式などの取引を自粛し、保有株などを就任時に信託銀行の管理下に置くよう定めている大臣規範にのっとって、「宮沢氏はすでに信託の手続きに入ったので、全く問題ない」と擁護した。27日には、宮沢大臣が信託手続きを完了したと発表した。
また、宮沢大臣が衆議院議員時代に代表を務めていた政党支部に、外国人が過半数の株式を所有する広島県の企業から計40万円の献金を受けていたことも判明した。宮沢大臣は、「先週末にその事実を把握した」「(当時は)外国人が過半数を持っていると知らなかった」と説明し、26日付で全額を返却したことも明らかにした。野党側は、外国人や外国企業からの寄付を禁じる政治資金規正法に抵触する可能性もあるとして問題視しているが、菅官房長官は「事実が判明した後、すぐに返金した。適切な処理だ」と強調し、辞任する必要はないとの考えを示した。
さらに、有村女性活躍担当大臣が代表を務める自民党の参院比例支部が、脱税で罰金判決を受けた企業から計60万円の寄付を受けていた。有村大臣の事務所は、返金手続きを取ったという。この件に関して、菅官房長官は「企業から献金を受ける時点では脱税していなかった。後に脱税が分かったことが原因で、問題ない」と擁護した。このほか、望月環境大臣に関係政治団体の政治資金収支報告書で交際費計約660万円分の記載漏れが指摘されている。
ただ、野党側は、こうした説明にいまだ疑問が残るとして、30日に安倍総理出席のもと開催する衆議院予算委員会での集中審議などで、「政治とカネ」をめぐる閣僚の疑惑を徹底追及し、安倍総理の任命責任を問い質す方針でいる。特に、民主党は、政権時代に同様の「政治とカネ」をめぐる問題で閣僚辞任に追い込まれた経緯もあるだけに、閣僚辞任をも求めていくようだ。
【法案審議入りにも影響】
女性2閣僚のダブル辞任や、第二次安倍改造内閣の閣僚の「政治とカネ」をめぐる問題で、国会運営の主導権をめぐる与野党の駆け引きが活発となっている。
当初、与野党の合意にもとづき、土石流や地滑りで住民の命に危険が生じる場所を土砂災害警戒区域に指定に先立って基礎調査を実施し、その結果公表を都道府県に義務付ける「土砂災害防止法改正案」が21日の衆議院本会議で審議入りすることとなっていた。
しかし、野党7党が「極めて異常な事態で、本会議開会には応じられない」「新任閣僚の所信表明を優先すべき」などと審議入りを拒否した。断続的に協議した結果、与党が衆議院科学技術特別委員長ポストを野党に譲るとともに、新たに就任した2閣僚の所信聴取を行うことで、同法案の趣旨説明と質疑を23日の本会議で行うと合意するに至った。
また、派遣労働者の柔軟な働き方を認め、3年経過した後に派遣先での直接雇用の依頼を派遣会社に義務づける「労働者派遣法改正案」の審議入りも、与党が想定していた23日の衆議院本会議から、28日の衆議院本会議へとずれ込むことが決まった。
23日、「土砂災害防止法改正案」の趣旨説明と質疑が衆議院本会議で行われ、審議入りとなった。基礎調査にもとづき土砂災害警戒区域の指定予定区域を公表することで、住民に土砂災害の危険性を認識してもらい、災害発生時の早期避難につなげることを目的としている。同法案には、自治体を援助するよう国の努力義務を定めているほか、国土交通大臣が基礎調査の遅れている都道府県に是正を要求できる規定も盛り込まれている。野党側も同法改正に反対する動きはないことから、臨時国会中に成立する見通しだ。
一方、労働者派遣法改正案をめぐっては、28日の衆議院本会議に安倍総理と塩崎厚生労働大臣が出席して同法案の趣旨説明と質疑を行うこととなった。同法案は、一部の専門業務を除き最長3年とされている企業の派遣受け入れ期間の上限を撤廃する内容となっている。このため、民主党は、「低賃金労働者を増大させかねない」と対決法案に位置付け、成立阻止に全力を挙げる方針だ。共産党や生活の党、社民党も反対している。
審議入りがずれ込んだことで、同法案の会期内成立(11月30日まで)は微妙な情勢となっている。野党側は、安倍総理が消費税率10%への引き上げの是非について7~9月期の国内総生産(GDP)改定値が発表される12月8日の直後にも判断することを念頭に、法案審議の遅れを生じさせることで、12月8日以降への会期延長をねらっている。こうした事態を回避したい政府・与党は、会期どおりに閉会したい考えだ。ただ、11月中旬には安倍総理の外遊日程が控えており、参議院での審議が11月後半まで持ち越される可能性もあって、窮屈な国会日程となってきているようだ。
【自民党と民主党それぞれ参院選改革案の提示へ】
議員1人あたりの人口格差(1票の格差)是正策に向けた参議院選挙区制度改革をめぐっては、22日、山崎参議院議長が、参議院「選挙制度の改革に関する検討会」で、参議院自民党会派が推薦された伊達参議院幹事長(自民党)を参議院各会派でつくる「選挙制度協議会」の座長に指名した。
自民党の溝手参議院議員会長が、任期満了に伴う人事で、隣接する選挙区を統合する「合区案」を提案した脇氏を参議院幹事長から更迭するとともに、9月19日、協議会メンバーからも外した。これにより、脇氏が務めていた座長ポストが、自動的に空席になっていた。
検討会では、自民党を代表し出席した溝手議員会長に対し、野党側から「これまでの協議会での議論を尊重すべき」「自民党は協議会で参院選挙制度の具体的な改革案を示すべきだ」といった注文が相次いだようだ。
24日、自民党は、参議院選挙制度に関する検討会(岡田直樹座長)を開催して、鳥取・島根を1選挙区に合区する案と、高知・徳島を加えた4県を2選挙区にする2案が提示された。これ以外に、2人区で人口の少ない3県(宮城・新潟・長野)を1人区にして、東京などに割り振る「6増6減」案、比例の定員を6議席(改選時3議席)削って都市部に割り振る案、兵庫県北部を鳥取県に加える選挙区域調整案なども示された。自民党は、これら複数案を組み合わせた改革案を、31日に開催される協議会に提示する予定だ。
民主党も、23日の参議院議員総会で、東京都など23都府県を13選挙区に再編する案を決定した。脇前座長が示した隣接22府県を11選挙区に合区する案をベースに、現在1選挙区の東京選挙区を2選挙区に分割(23区内が改選数4、23区外が改選数2)する案となっている。これにより、選挙区が144、比例94の計238となる。民主党は、同案を31日の協議会で提案する予定だ。
【集中審議に注目】
閣僚の「政治とカネ」問題が相次いで浮上するなか、今週30日、衆議院予算委員会で集中審議が開催される。野党側が攻勢を強めており、水面下での与野党の駆け引きなどにより法案審議の日程も影響が出始めている。野党の追及に、安倍総理や疑惑にあがっている閣僚たちが説明責任をどのように果たすのだろうか。今後の影響を見極めるためにも、答弁内容に注視していくことが重要だ。
また、自民党内では、岩盤規制など規制改革や、消費税率引き上げの是非をめぐる党内論議がスタートしている。これらのテーマでは、賛否をめぐって党内を二分する可能性もあり、今後、紛糾する場面もありそうだ。こうした自民党内での政策動向もあわせて押さえておいたほうがいいだろう。
労働者派遣法改正案が、今臨時国会での争点のひとつとなりつつある。民主党やマスコミなどからは、この改正案は、派遣を使いやすくしようとするビジネス側の要望に沿った「規制緩和」であり、非正規雇用の拡大につながるのでないかとの指摘がなされている。
だが、今回の改正案の内容をみると、一言でいえばルールの明確化。従来の「古びて複雑で不明瞭な制度」を、明確にわかりやすくしようというものだ。必ずしも「規制緩和」の面だけではなく、「規制強化」の面も含まれている、というのが本当のところだ。
従来の制度では、「専門26業種」(事務用機器操作、秘書、通訳など)と「それ以外の業種」が峻別され、それぞれの適用ルールがわけられていた。
・「専門26業種」では、派遣受入れ期間の制限なし、
・「それ以外の業種」では、業務単位で原則1年・例外3年の期間制限がかかっていた。
ただ、これに対しては、かねてより、専門26業種にあたるのかどうか、専門業務以外の付随業務まで処理した場合にどうなるのかなどの面で、ルールが不明瞭でわかりにくいとの指摘がなされていた。そもそも、「事務用機器操作」などが専門的で特殊な業務・・といった捉え方自体、時代に合わない古びたルールになっている面もあった。
今回の改正では、こうした区分を改め、「専門26業種」か「それ以外の業種」かを問わず、
・個人単位: 同じ派遣労働者が同じ派遣先で働く期間の上限は三年まで、
・事業所単位: 同じ事業所における派遣の継続的な受け入れは三年まで、ただし、過半数組合等からの意見聴取をしたうえで延長可能、
というルールを設定しようというものだ。
これは、現行制度の不備に対応した「制度の手直し」としては合理的な改善と評価してよいと考えられる。あえて「規制緩和」か「規制強化」かといえば、
・「専門26業種以外の業種」では、受入れ期間の延長(一定の要件のもとで)が可能になるが、
・「専門26業種」については、むしろ新たに期間制限が課される「規制強化」、という両面が含まれている。
臨時国会では、「この改正で派遣労働者が増えるのか」を野党議員が何度も問いただし(10月3日衆議院予算委員会など)、この点を争点化していこうとしているようだが、こうした改正内容を考えれば、あまり実りある質疑とは考えられない。
むしろ議論すべきは、今回の「制度の手直し」の先のステップとして、「非正規雇用をどうするのか」という根本問題にどう対応するかだろう。
非正規労働者がいわゆる正社員と比べ、厳しく不安定な状況に置かれており、これを何とかしなければならないことは間違いない。問題は、どう解決策を提示するかだ。
第一の道筋は、非正規労働という働き方を否定し、労働者をみな正社員にしていこうという方向性だ。民主党政権下でなされた制度改正は、基本的にこうした発想にたつものが多くみられた。
しかし、この道筋には、以下の問題がある。
・まず、非正規労働者は、みなが「正社員になりたい」と希望しているわけではなく、自ら望んで非正規を選択している労働者も相当程度存在する(比率には議論があるが、衆議院予算委員会でのやりとりによれば、政府見解では約半分、民主党見解では4割)。
・また、全員を正社員にしようというのは、一見雇用環境を改善する取組のように見えるが、現実には、多くの人々の仕事を奪いかねない(極端なケースとして、非正規労働を全面禁止した場合、すべての非正規労働者が正社員になるとは考えられず、相当数の労働者が完全に仕事を失うことになる)。
そこで考えられる第二の道筋が、多様な働き方は認めつつ、ただし、非正規と正社員の待遇格差を解消する、すなわち「同一労働同一賃金」を徹底していくということだ。
欧州などでは、「同一労働同一賃金」の原則は一般にルール化されているが、我が国では、非正規と正社員に格差があることが当たり前のようになっている。こちらを解決していくことを目指すべきではないか。
付言すれば、非正規と正社員の格差問題は、企業だけの問題ではない。雇用政策を担う厚生労働省を含め、中央官庁にも同じ問題がある。
例えば、厚生労働省のホームページには「非常勤職員採用等」の案内ページがあり、一般行政事務補助・秘書業務につき日当7千円~1万円程度、といった条件で募集がなされている。この条件は、言うまでもなく、身分保障と人事院勧告で守られた一般職公務員(正社員に相当する)とは全く異なる。
http://www.mhlw.go.jp/general/saiyo/hijoukin.html
非正規雇用をどうするのか、「同一労働同一賃金」を目指すのか。まずは官庁自らが範を示すことも含め、問題解決が必要だ。
国会では、こうした根本的な問題解決に向けた議論が望まれる。
2、一方で、残っている課題も。
・基本は、「同一労働同一賃金」を徹底し、働き方を制約する規制は外していくべき。
・「非正規を禁止して、みな正社員に」より、「多様な働き方を認める」+「非正規を差別的に扱うことの禁止」によるべき。
・労働市場の流動性を高める観点でも、多様な働き方の容認は重要。誰も「正社員になりたがっている」という前提は間違い(半数程度)。
・「日雇い派遣禁止」も残された課題
○派遣労働者数 130万人(今年3月発表データ)
非正規
女性閣僚のダブル辞任を受け、国会の審議が停滞し始めた。野党は閣僚交代を理由に、21日の衆院本会議で法案審議を拒否。労働者派遣法改正案など重要法案の審議日程を先送りさせた。「是々非々」を名乗っていた野党はなぜ、抵抗路線に転換したのだろうか。
小渕優子経済産業相と松島みどり法相は20日、政治資金問題や公職選挙法違反疑惑の責任をとって辞任。安倍晋三首相は後任にそれぞれ宮沢洋一氏と上川陽子氏を充てることを決め、2人は翌21日の認証式を経て正式に就任した。
21日は元々衆院本会議が予定され、土砂災害防止法改正案が審議入りするはずだった。しかし、野党各党はそろって「閣僚の認証式の日に審議入りした例は聞いたことがない」と反発。本会議への出席を拒否する姿勢を示し、同法の審議入りを23日に先送りさせた。
参院の外交防衛委員会では、片山さつき委員長(自民党)が政府の答弁を事前に入手していたことが発覚。野党は「中立性が疑われる」と主張して審議を拒否し、結局そのまま審議を途中で打ち切った。
野党側の狙いは重要法案の成立を阻止すること。本会議は定例日が決まっており、衆院の場合は火曜、木曜、金曜の3日だけ。特別な理由がない限り、月曜や水曜、はたまた週末に開くことはない。本会議は全議員が出席対象となるため、定例日であっても国会や政府の重要な案件と重なれば開催は見送られる。
21日(火)での審議を拒否すると、次は最短で23日(木)の本会議となる。そうなると本来、23日の審議入りが想定されていた労働者派遣法改正案が玉突きで28日に先送りとなる。民主党は支持母体である連合の強い要請で派遣法改正案に反対しており、今国会での時間切れに追い込みたい。他の野党も重要法案の成立を遅らせ、安倍政権の求心力を低下させたい思惑がのぞく。
「是々非々」や「建設的野党」を名乗り、安倍政権への協力姿勢を打ち出していた維新の党やみんなの党まで日程闘争に転じた理由とは何か。一つはなかなか党勢が上向かないことへの焦りだ。
産経新聞とFNNが今月18~19日に実施した世論調査によると、内閣支持率は2.7ポイント下落の53.0%。小渕優子経済産業相の辞任が取りざたされていたにも関わらず50%台を維持。自民党の支持率も38.1%と高い水準を保った。
対する野党は民主党の6.6%が最高で、維新の党4.4%、共産党3.3%、みんなの党1.4%と「どんぐりの背比べ」状態。半年後に統一地方選、来年夏にも衆院選が見込まれるという状況で、与党の失策をなるべくアピールし、自分たちの支持率を上げたいという本音がちらつく。
二つ目の理由は日程闘争や審議拒否といった手法が有効であるという現実だ。民主党は政権を担う前の野党時代、小沢一郎氏を先頭に徹底して「抵抗野党」を演じた。ねじれ国会を存分に利用し、審議拒否や参院での法案たなざらし、国家同意人事の反対、物理的な本会議の開会阻止などあらゆる手を使って自公政権の邪魔をした。
その結果が「決められない政治」であり、批判の矛先は民主党ではなく与党に向かった。政権の求心力は低下し、官僚たちも離れていった。政府・与党の支持率はどんどん下がり、2009年の総選挙で与党は惨敗。民主党に政権の座が渡ったのは周知の通りである。
ただ、国民もバカではない。「非自民」として選択した民主党政権が失敗したのは記憶に新しいし、「牛歩戦術」などを繰り返した社会党のような、前近代的な抵抗路線に嫌悪感を持つ国民は増えている。
野党が21日の本会議を拒否した理由など、国民にとっては到底理解できない話。片山さつき委員長の不祥事も稚拙ではあるものの、審議を止めなければならないほど深刻な問題とは思えない。野党が抵抗すれば、国民生活にとって重要な法案まで成立が先送りされていく。
今週20日、小渕経済産業大臣と松島法務大臣が安倍総理に相次いで辞表を提出した。第2次安倍内閣の看板政策のひとつ「女性活躍推進」を象徴する女性閣僚5人のうち2人が、約1カ月半で相次いで辞任に追い込まれる異例の事態となった。
*衆参両院の本会議や委員会での審議模様は、以下のページからご覧になれます。
【閣僚辞任は不可避に】
先週の国会審議で、小渕大臣は資金管理団体や関連政治団体での多額の不透明な資金処理を行っていた問題などで、松島大臣は有権者に似顔絵や政策、肩書きなどが記載されたうちわを配布したことが公職選挙法で禁じる寄付行為にあたる点などで、民主党など野党から追及されていた。
また、民主党の階・衆議院議員が17日に松島大臣を公選法違反容疑で、群馬県の市民団体が20日に小渕大臣を政治資金規正法違反容疑などで、告発状を東京地検に提出した。さらに、民主党などが小渕大臣の不信任決議案提出に向けて検討にも入った。
野党各党の攻勢が強まっていくなか、国政の重要課題や国会審議への影響、政権運営のダメージを最小限にとどめ、早期に政権基盤の立て直しを図るためにも「辞任はやむを得ない」との見方が政府・与党内で急速にひろがった。
今月30日に沖縄の米軍普天間飛行場移設問題が争点となる沖縄県知事選(11月16日投開票)が告示される。年末には消費税率10%への引き上げ判断、年明けには九州電力川内原発の再稼働、平成27年度予算案の国会審議がある。春の統一地方選後には、集団的自衛権の行使容認に向けた安全保障法制の審議も控えている。今後、野党と対決する局面が続くことが予想されるだけに、政権基盤の安定が欠かせない。
また、衆議院法務委員会でテロ資金提供処罰法改正案の審議入りメドがたたないなど、臨時国会の法案審議にも影響が出始めており、早期に事態を収拾する必要にも迫られていた。
【ダブル辞任で即日のうちに後任決定】
小渕大臣と松島大臣は、問題長期化による影響拡大を懸念して、早期に辞任する選択を行った。両大臣からの辞表を受理した安倍総理は、「2人を任命したのは私であり、任命責任は首相である私にあります。こうした事態になったこと、国民の皆様に深くおわびを申し上げる」と陳謝した。
20日夜、安倍総理は、経済産業大臣に宮沢・自民党政調会長代理(参議院議員)を、法務大臣に上川・自民党女性活躍推進本部長を起用することを決定した。21日、宮沢氏と上川氏は、皇居での閣僚認証式に臨み、それぞれ大臣に就任した。その後、安倍総理から閣僚の辞令を受けた。
安倍総理は、「政治、行政に難問が山積している。政治の遅滞は許されない」「経済最優先で政策を前に進めていかなければならない。行政と景気に遅滞があってはならない」点を強調して、人選を急いだ。党税制調査会メンバーで参議院政審会長も務めた宮沢大臣は、政策通として知られている。安倍総理は「成長重視の税制を含めて成長戦略をしっかりと進めていただきたい」と期待を述べた。第1次安倍政権で少子化担当大臣を務めた上川大臣については「法務大臣をしっかり務めていただけると確信している」と語った。
臨時国会が開会中で国会運営への影響を最小限にとどめるため、女性登用にこだわらず、政策通・即戦力を重視して人選したようだ。
20日の衆議院では、まち・ひと・しごと法案など地方創生2法案を審議する「地方創生特別委員会」が開会され、野党が質疑を行う予定だった。しかし、出席を求められていた小渕氏の大臣辞任で、小渕氏の出席そのものが困難となった。与党側は、経済産業大臣臨時代理となった高市総務大臣の出席のもと開会を打診したが、野党側はこれを拒否した。これにより、特別委員会は流会となった。
与党側は、週内にも安倍総理出席のもと地方創生2法案の締めくくり質疑を行い、28日に衆議院を通過させたい考えだが、野党側は早期の審議再開には応じない構えをみせており、今後の審議日程にも影響が及びそうだ。
【野党、安倍総理の任命責任も追及へ】
政府・与党は速やかな後任決定で早期の事態収拾に踏み切ったが、野党は安倍総理の任命責任も問う方針だ。
小渕大臣や松島大臣らを追及してきた野党各党は、「納得のいく説明ができない以上、辞任は当然」(海江田・民主党代表)、「政権運営に緩み、おごりが生じている。行政の長を任命するに当たり、事前のチェックなどやらなければならないことが十分できていない」(枝野・民主党幹事長)、「女性に焦点を当てる看板づくりを優先し、大臣の資質が後回しになったのではないか」「疑惑は解明されていない」(山田・次世代の党幹事長)などと厳しい見方しており、安倍総理に対しても「任命責任は極めて重い」(小沢・維新の党国会議員団幹事長)と、衆参両院予算委員会での集中審議開催などを求めて徹底追及する構えだ。
20日、民主党・維新の党・次世代の党・みんなの党・共産党など野党7党の幹事長・書記長らが緊急会談して、安倍総理の任命責任の追及に向けて足並みをそろえていくことを確認した。また、資金管理団体による政治資金収支報告書の記載ミスを訂正した江渡防衛大臣や、和牛商法の安愚楽牧場から献金を受け取った西川農林水産大臣らの問題追及に加え、閣僚を辞任した小渕氏と松島氏には、衆議院政治倫理審査会での弁明や予算委員会での証人喚問などを求めていくことも視野に、引き続き説明責任を果たすよう求めていくことでも一致した。
今後、与野党による攻防激化が確実視されており、安倍総理は厳しい政権運営が迫られることとなりそうだ。
【女性活躍推進法案を国会に提出】
女性活躍推進をめぐっては、17日、女性の採用・昇進機会を増やす取り組み加速を企業などに促すことを目的に、従業員301人以上の大企業に採用者や管理職に占める女性割合、勤続年数の男女差などを把握したうえで、各企業の自主判断で最低1項目の数値目標を設定し行動計画とともに公表するよう義務付ける「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」を閣議決定し、衆議院に提出した。
女性活躍推進法案<2016年度4月1日から10年間の時限立法>では、国や地方自治体にも同様の義務を課している。優れた取り組みを行う企業を国が認定して事業入札で受注機会を増やす優遇策についても盛り込まれた。ただ、企業の自主性を重んじて一律の数値目標が設けられず、従業員300人以下の企業に対しても努力義務にとどまった。また、国に虚偽報告などを行った場合の罰則は設けられ、国は必要に応じて助言や指導、勧告はできるものの、数値目標を設定・公表しない企業への罰則はないとしている。
安倍総理が重要政策と位置付ける女性が輝く社会づくりを進めるべく、11月30日までの臨時国会中の成立をめざしている。
【与野党による日程闘争の影響の見極めを】
これまで与党ペースで進んでいた国会運営が、小渕氏や松島氏の辞任や、閣僚の資質問題を受け、与党側は、野党との審議の日程協議で強気に出られずにいる。
21日の衆議院本会議で審議入りすることを与野党で合意していた「土砂災害防止法改正案」について、野党側が「異例事態で本会議には応じられない」として協議が続けられている。また、派遣労働者の柔軟な働き方を認め、3年経過した後に派遣先での直接雇用の依頼を派遣会社に義務づける「労働者派遣法改正案」について、政府・与党は当初、14日の改正案の審議入りをめざしていたが、軌道修正をよぎなくされているようだ。
野党は、今後も安倍総理の任命責任も含め閣僚追及で共闘する方針で、国会日程をめぐる与野党攻防がより一層激化していくだろう。こうした日程闘争が、それぞれの法案審議にどのような影響が生じることとなるかを見極めていくことが重要だ。