【高橋洋一・株式会社政策工房 代表取締役会長】

 

 46月期のGDP一次速報は年率換算▲1.6%だった。民放のニュース番組でも取り上げられていたが、某テレビ局の解説は酷かった。今回のマイナス成長について、エコノミストはすべて的中していたといい、そのエコノミストの説明を紹介していた。

 

 
 エコノミストの3ヶ月前の予想は全くあてにならない。今回の場合も、3ヶ月前にはやはりプラス予想をしている人も多かった。しかし、8月になれば46月の各種統計が出そろい46月期のGDPはほとんど予想できるので、直前の予想は当たるに決まっている。それをわざわざテレビで取り上げた。

その解説で、消費と輸出が落ち、輸出の減少は、中国などの景気後退ということだった。ここまではいい。年率換算▲1.6%は前期比▲0.4%だが、消費減少と純輸出減少の寄与度は、それぞれ▲0.4%と▲0.3%だった。


 しかし、問題は消費減少の理由だ。将来不安で消費が伸びないというものだった。消費の低迷は、20144月からの消費増税であるのに、消費増税とは一言もふれない。その一方で、将来不安で消費低迷と、財務省のよくいうセリフそのものと同じだった。漠然とした将来の不安より、増税によって可処分所得が減少した目先の不安のほうが大きいのだ。

 
 

 消費の低迷を示すのが、7月末に公表された家計調査による8月分の消費の大ブレーキだ。6月の実質消費は前年比2.0%減、4-6月期の実質消費水準6数は前期比1.0%減だった。1年前の消費増税の影響が長引いているのだ。消費増税は恒久的な増税であり、そのマイナス効果は1年限りではなく永続的である。消費はそのマイナス影響をまだ飲み込めていない。


 家計調査で消費が減少した理由を見てみよう。大きなマイナスの寄与度になっているのは、「その他の消費支出」0.93%減少と「被服及び履物」0.59%減少の2項目で、これらで実質消費の減少の大半を説明できる。さらに詳しく見ると、「その他の消費支出」は交際費、「その他の消費支出」は男子用上着・ズボンが目立っている。この点から、百貨店がセールを7月に後ろ倒しした効果が大きかったことが指摘されている。もしそうであれば、7月は盛り返すはずだが・・・。

 
 

 将来不安で消費が伸びないといういいぶりは、2013年秋頃にも、多くのエコノミストやマスコミ関係者がいっていた。そして、将来不安を消すために、消費増税がいいと推奨した。その大合唱の末、20144月からの消費増税が決められ、実行された。その結果、2014年度のGDP成長率は▲0.9%。消費増税を推奨した人たちは、増税の影響は軽微といっていたが、まったくウソだった。


 将来不安で消費が伸びないというのは、20174月からの10%への再増税を目論んでいる人たちだ。消費増税で落ち込んだ消費なのに、その消費増税の悪影響をいわずに、再増税への落とし穴になるような解説を、テレビで垂れ流すのは、あまりに酷いだろう。

 
 

 景気の落ち込みへの対策は、消費増税の失敗であるので、それを取り返すためには財政政策、できれば消費増税の悪影響を除去するためには、消費減税と同じような効果がある減税や給付金政策が望ましい。


 ちなみに、GDPギャップを計算すると10兆円近くになる。この分、景気対策で戻そうとすれば、510兆円規模の対策がいい。

 

 




0821高橋さん

(表作成:政策工房) 

 


 財政政策というと財源が気になる人もいるが、心配ない。アベノミクスの円安によって、政府は儲けている。外債投資をしている外為特会では含み益は20兆円もあるので、それを国民に還元すればいい。そうすれば、増税による可処分所得減少は補われて、消費の落ち込みは避けられ、成長路線に乗るだろう。