政策工房 Public Policy Review

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

March 2015

【来年度予算案、13日にも衆議院通過へ】

今週9日、衆議院予算委員会で、来年度予算案に関する中央公聴会が開催された。中央公聴会に出席した有識者からは、「長期的に財政の持続性が確保されたとは言いにくい」(鈴木準・大和総研主席研究員)として、財政再建と経済再生に向けた努力や、基礎的財政収支の2020年度黒字化などの財政健全化目標に向けたより一層の取り組みが必要との指摘が相次いだ。4日に開催された地方公聴会(金沢市、松江市)では、出席者から地方で景気回復の実感がないないなどの意見も出た。
 

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 中央公聴会の開催で、来年度予算案の採決環境が事実上、整った。衆議院予算委員会では10日に分科会を、12日に一般質疑と社会保障などをテーマにした集中審議を行う。予算委員会での実質的な審議時間が73時間、日数が15日間となり、昨年を上回る計算となる。自民党は、10日に開かれた衆議院予算委員会理事会で、13日に締めくくり質疑を行ったうえで委員会採決を行う日程を、野党側に正式提案した。また、13日に衆議院本会議へ緊急上程することも求めた。しかし、野党側は、閣僚の政治とカネ問題などを念頭に「まだ審議が続いている」「議論を見届けたい」などと難色を示し、回答保留とした。

 

来年度予算案の衆議院通過をめぐって与野党の駆け引きが行われているが、野党側が最終的に与党の提案を受け入れ、13日に衆議院通過・参議院送付、16日に参議院で審議入りとなる見通しだ。

政府・与党は、4月の統一地方選をにらんで、地方創生や経済再生への取り組みをアピールするべく、これまで年度内成立にこだわってきた。しかし、閣僚の政治とカネ問題が相次いで浮上したことで、審議・採決日程に遅れが生じているうえ、限られた時間内に来年度予算関連の日切れ法案を優先処理しなければならないことから、年度内成立が困難な情勢だ。

政府・与党は、暫定予算案を編成して、4月第1週までの成立をめざしている。ただ、民主党など野党側は、引き続き閣僚の政治とカネ問題の追及を行っていく方針で、新たな疑惑が発覚すれば攻勢を強める姿勢を崩していないことから、成立が4月第2週にずれ込む可能性もありそうだ。

 

 

【献金規制も議論の焦点に】

国の補助金交付を受けている業界団体や企業から交付決定通知より1年以内に政治献金を受けていた問題について、西川前農林水産大臣、下村文部科学大臣や望月環境大臣、上川法務大臣のほか、安倍総理や麻生副総理・財務大臣、菅官房長官、甘利経済再生担当大臣、宮沢経済産業大臣、塩崎厚生労働大臣、林農林水産大臣にも同様の疑惑が浮上した。また、民主党の岡田代表や生活の党の小沢代表、維新の党幹部などにも同様の件近々問題が出ている。いずれも「違法性がない」と説明している。

 

安倍総理は、補助金交付企業から政治献金を受け取った事実を認めたうえで、「指摘された企業は、利益を伴わないものが明確に入っている」「(補助金交付は)知らなかった」(3日の衆議院予算委員会)と献金受け取りの違法性について否定した。

政治資金規正法の規定で政治献金を受けた政治家が補助金交付決定を知らなければ同法に抵触しないことや、補助金の性質が試験研究や災害復旧のほか「性質上利益を伴わないもの」などの場合は違法とはならないとなっていることについて、補助金交付決定を把握しないまま政治献金を受けてしまうことがありうるとして「違法であるかないかは冷静に見なければならない」と述べた。そのうえで、「国民に分かりにくい」「あいまいなところがあることも否めない」として、「現行法制度のもとでこうした問題が生じないように何ができるのか、規制そのものの在り方はどうあるべきかについて各党・各会派で議論をしていただくべき問題だ」「自民党でも検討を進めている」と、再発防止のための明確化が必要だと表明した。

 

 来年予算案審議への影響を懸念する安倍総理はじめ自民党は、「違法性がないことは確認できているが、何かおかしいのではないかというイメージづくりのような質疑が行われている」(萩生田・自民党総裁特別補佐)と野党側を牽制し、早期の幕引きに躍起となっている。これまで徹底追及の姿勢を示してきた民主党も、このまま泥仕合を続けるのは得策ではないと判断し、反社会勢力との関係があるとされる企業に融資していた男性から献金を受けていたことなどを認めるなど、答弁訂正や食い違いが目立つ下村大臣を除いて、追及のトーンを弱めつつある。

 

 こうした状況変化を受け、焦点は、献金規制のあり方にシフトしつつある。自民党と公明党は、国の補助金交付決定から1年以内の献金を禁じた政治資金規正法の趣旨と内容を周知徹底することがまず重要との認識で、谷垣幹事長も「条文への習熟が必要だ」と、運用改善や党内のチェック機能強化などで対応していくべきとしている。同法の規定の曖昧さなどの課題が残っている点については、両党で検討を進めていくとしている。

 一方、野党は、政治資金規正法改正による規制強化を主張している。維新の党は、企業・団体献金を全面禁止する政治資金規正法改正案も議員立法で国会に提出している。共産党も、政治資金パーティー券購入(実費分の徴収除く)も含めすべての企業・団体献金を禁止する法案を通常国会に提出する考えを明らかにした。次世代の党や社民党も全面禁止の方針を打ち出している。

民主党は、与野党間の協議を念頭に、(1)違反企業・団体への罰則強化や政務三役への献金の全面禁止、補助金交付企業への政治献金禁止通知の義務付けなどを図ったうえで政治資金規正法の周知徹底・厳格運用を行うことを優先し、(2)将来には企業・団体献金を全面禁止にする二段階の見直しを検討している。パーティー券の企業・団体による購入の禁止も検討しているという。3月中旬にも政治資金規正法改正案をまとめる方針だ。

 

 ただ、自民党内には「献金禁止は民主主義の自殺に等しい」などとの考えから、まずは規正法の周知徹底・運用改善によって対応すべきであり、野党が求める罰則強化などの法改正には消極的だ。安倍総理も「金の見返りに政治的な力を使って何かをやることが問題であって、企業・団体献金そのものがいけないとは考えていない」として、企業・団体献金そのものを禁じることについては否定的な見解を示している。与党側は、野党の動きなどを見極めながら対応していくようだ。

 また、民主党も「最終的には企業団体献金廃止に行き着ければベストだが、自民党が乗らなければルールとして確立されることにはならない。自民党に乗ってもらうための次善の策も必要」(安住国対委員長代理)として、全面禁止に二の足を踏んでいる。野党側は、民主党案がまとまり次第、野党間協議を行うことで一致しているが、全面禁止を求める維新の党などと意見の隔たりを埋めていくことができるかは、いまのところ未知数だ。

 

 

【労働者派遣法改正案、13日にも閣議決定】

 自民党は、5日の厚生労働部会で、昨年11月の衆議院解散により臨時国会で廃案となった労働者派遣法改正案を了承した。

同法案は、派遣労働者の柔軟な働き方を認めることを目的に、企業の派遣受け入れ期間の最長3年という上限規制を撤廃(一部の専門業務を除く)する一方、派遣労働者一人ひとりの派遣期間の上限は原則3年に制限して、派遣会社に3年経過した後に派遣先での直接雇用の依頼や、新たな派遣先の提供などの雇用安定措置を義務づける内容となっている。

民主党など野党が「派遣労働の固定化につながる」との懸念・批判を行っている点を踏まえ、直接雇用を促す姿勢を示すねらいから、1月30日の与党政策責任者会議で合意した「派遣就業が臨時的・一時的なもの」との文言を明記するなどの修正が施された。

 

 政府は、13日にも改正案を閣議決定し、通常国会中の成立をめざしている。しかし、成立は、容易ではない。格差是正解消を旗印に掲げる民主党や、改悪批判を展開する共産党や社民党などが、改正案成立の阻止を掲げており、訂正案にも冷ややかだからだ。通常国会提出予定の成果で賃金を決める新たな労働制度を盛り込んだ労働基準法改正案も「残業代ゼロ法案」と批判している。

また、労働者派遣法の担当課長が1月末、日本人材派遣協会の新年賀詞交歓会で、「派遣労働は、期間がきたら使い捨てだったというふうなモノ扱いだった」「ようやく人間扱いするような法律になってきた」などとあいさつしたことも問題になっている。塩崎厚生労働大臣は、5日の衆議院予算委員会で、課長発言が誤解を招く不適切な発言だったとして陳謝のうえで、「発言した課長に対し今月2日に厳重注意」したことも明らかにした。厚生労働省も、3日の衆議院予算委員会理事会で「派遣の雇用が不安定だという課題があるのに対し、今般の法改正案は派遣労働者の保護を一層強化する観点から、派遣労働者の立場に立った制度改正を行うとの趣旨で発言した」と釈明する文書を提出した。

対決姿勢を前面に打ち出したい民主党など野党は、引き続き政府側の認識・姿勢を質していく方針だ。法案の国会提出後には、民主党、共産党や社民党、生活の党などが共闘して成立を阻止することを模索している。もっとも、維新の党は改正案に賛成する方向で、野党側は一枚岩ではない。

 

労働者派遣法改正案や労働基準法改正案などは、通常国会後半の与野党対決法案になるだろう。労働者派遣法改正案や労働基準法改正案など計9本の厚生労働省所管法案が提出される予定で、審議に多くの時間を割くのが難しい情勢だ。このことから、審議・採決日程をめぐっても与野党攻防となりそうだ。

 

 

【集団的自衛権行使容認の法整備について議論】

 6日に行われた衆議院予算委員会での集中審議で、民主党は、集団的自衛権行使の限定容認について、安全保障法制に関する与党協議で憲法9条の枠内を超える議論を行っていると追及した。安倍総理は「海外に武力行使を目的として自衛隊を派遣することは、3要件の中にある必要最小限度を超えるものだ。憲法上、出せない」と説明したうえで、「今までの憲法解釈との関係をきっちり整理してきた。憲法改正をしなければいけない法律はない」と反論した。

 

 6日、安全保障法制整備に関する与党協議会(座長:高村・自民党副総裁、座長代理:北側・公明党副代表)が開催された。政府は、集団的自衛権行使を限定容認するための法整備骨格について提示した。

昨年7月に閣議決定した「集団的自衛権を行使できる武力行使の3要件」を盛り込むべく、日本と密接な関係にある他国が攻撃され日本の存立が脅かされる「存立危機事態」を防衛出動の発動要件に加える法改正(自衛隊法、武力攻撃事態対処法)を行うとしている。政府は、集団的自衛権行使の事例として、(1)中東などの(海上交通路)シーレーン上の機雷掃海、(2)退避する在外邦人が乗船している他国船舶の護衛、(3)米国に向かう弾道ミサイル防衛などを想定している。存立危機事態にあたるか否かの決定手続きは、総理大臣が「対処基本方針」を策定し、国家安全保障会議(NSC)で審議のうえ閣議決定としている。防衛出動に関する国会承認は、原則として事前承認とし、緊急時は事後承認を認める。事後承認を得られない場合は直ちに撤収命令を出す仕組みで検討している。

改正の検討を要する法律については、自衛隊法や武力攻撃事態対処法のほか、米軍など他国軍の支援を可能とする「米軍行動関連措置法」や、武力攻撃をしている他国軍に武器などを輸送する艦船を規制する「外国軍用品海上輸送規制法」など6法をあげている。日本への武力攻撃発生時における国の責務や民間企業や自治体の義務などを定めた「国民保護法」も検討対象としているものの、集団的自衛権行使と国民保護法発動は別に判断するため、現行法でも対応可能とし、存立危機事態が武力攻撃予測事態にあたれば同法を適用するとしている。

 

自民党と公明党は、政府案を大筋で合意した。ただ、公明党は、中東・ホルムズ海峡のシーレーン上での機雷掃海など日本国民に直接危険の及ばない状況での適用には慎重な考えを改めて示し、「(7月の閣議決定の内容を反映した)政府答弁をしっかり踏まえた法制をつくっていかなければならない」(北側副代表)と新3要件を法整備において厳格に定めるよう念押しした。

また、新事態の認定に関しても「攻撃国の意思、能力、事態の発生場所、その規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮」すると説明した政府答弁をそのまま条文に盛り込むとともに、新3要件のうち「他に適当な手段がない」との要件を加えるよう求めた。

 

 

【与党、安全保障法制の方向性について取りまとめへ】

昨年7月の閣議決定に基づいて政府が想定する安全保障関連法案の全体像<武力攻撃に至らないグレーゾーン事態への対応強化、国際協力の拡大、集団的自衛権の限定行使>は、6日の与党協議会をもって出そろった。

 

自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法制定を容認するにあたって、歯止めをかけたい公明党は、派遣条件として(1)国際法上の正当性、(2)国民の理解と民主的な統制<国会承認>、(3)自衛隊員の安全確保の3原則を重視して法整備を進めるとの確約を政府に求めている。国際法上の正当性として「国連の安全保障理事会決議」が前提と主張する公明党に対し、「国連の統括下でない活動にも広がっている」(安倍総理)として、海外派遣の制約をなるべく取り払いたい政府・自民党との間で意見の隔たりがある。政府・自民党は、海外派遣にあたって国会の事前承認を原則とし(緊急時は事後承認)、国会承認を得られない場合は直ちに撤収命令を出す仕組みとすることで、公明党の理解を得ていきたい考えだ。

 

自衛隊による船舶検査活動については、「国際社会の平和と安定」のために活動する他国軍の後方支援にも対象を拡大して、対象船舶が帰属する国の同意があれば船長の同意がなくても検査できるよう要件を緩和することに、公明党が「解釈に無理がある」(北側副代表)と難色を示していた。公明党は、強制的な船舶検査について、憲法が禁じる武力行使にあたり、隊員の安全確保が難しくなるとの考えだ。このことから、政府・自民党は公明党に配慮し、船長の同意を条件に残す方向で調整している。

 

自民党と公明党は、20日もしくは27日までに安全保障法制の方向性について取りまとめる方針で、政府はこれを踏まえて法案化作業に着手する。その後、自民党と公明党が具体的な条文案にもとづき、自民党と公明党の対立点についての擦り合わせのうえ、詳細を詰めていくこととなる。

 ただ、集団的自衛権行使の範囲や、恒久法に盛り込む自衛隊派遣の歯止めなどをめぐって、なおも紆余曲折が予想される。公明党の山口代表は、「公明党が提起した具体的な論点に対し、政府は十分答え切れていない点が多々ある」と述べ、「与党の議論にちゃんと政府が答え、足並みがそろわないとスケジュール通りに進まない」と政府・自民党を牽制している。

 

 

【引き続き与野党の駆け引きに注意を】

来年度予算案の審議が大詰めを迎えており、今週13日にも衆議院を通過する見通しだ。民主党など野党は、予算委員会などで安倍内閣のスキャンダル追及を行っていくとともに、政府・自民党との対決姿勢を前面に打ち出そうと、3月中の党首討論開催なども要求したいとしている。来年度予算案や予算関連法案の審議・採決日程をめぐる与野党の駆け引きに注意を払いながら、国会論戦の行方を見極めていくことが大切だ。

 また、通常国会後半の最大争点と目される安全保障法制について、与党としての議論がほぼ一巡した。与党は、安全保障法制の方向性とりまとめに向け、それぞれの項目詳細をどのように調整し結論を出していくのかもチェックしておいたほうがいいだろう。
 

原英史・株式会社政策工房 代表取締役社長】 

 地方議会はこのままでよいのでしょうか?

 
 昨年は、号泣議員やセクハラ野次問題など、地方議員の質が問われる事案が続きました。「あまりに低レベル」と感じられた方が多いことでしょう。しかし、そんな議員たちを選んだのは、私たち有権者です。ただ、「ダメだ」と言っているだけでは、問題は解決しません。

 
 4月の統一地方選挙が近づく中で、どうしたらよいのか、改めて考えるべきではないでしょうか。

 
 

 2月26日、「地方議会を変える国民会議」という団体を、筆者も参画し、立ち上げました。

26日夕方に半蔵門で行なわれたキックオフ会合には、堺屋太一氏(作家、元経済企画庁長官)、屋山太郎氏(政治評論家)、佐々木信夫氏(中央大学教授)、岸博幸氏(慶應義塾大学教授)、藤原里華氏(プロテニスプレーヤー)らが参加。また、ビデオメッセージを寄せた竹中平蔵氏(慶應義塾大学教授、元総務大臣)ほか、20人を超える発起人が名を連ねました。


 

 ポイントは、結論から先にいえば、地方議会の「土日・夜間開催」です。


 欧米各国の地方議会は、「土日・夜間開催」で、普通の人が仕事をもったまま議員になることが当たり前です。一方、日本の場合は、「議員=特殊な仕事」です。議員になるといったら、勤めていた会社は退職し、すべてをなげうって立候補することが一般的です。これは決して世界標準ではありません。そして、「議員=特殊な仕事」となっているが故に、議員になる人材の幅がごく限られ、多様性や質を損なっているのではないか、ということです。


 こうした問題提起は、かなり以前からなされています。例えば、政府の地方制度調査会(総理大臣の諮問機関)では、2005年に、「休日、夜間等に議会を開催」「勤労者が議員に立候補でき、また、議員として活動できるような環境の整備」を進めるべきとの答申が出されました。しかし、10年経っても、何も進んでいません。


 「議会は平日昼間にやらないといけない」と法律で決まっているわけでも何でもありません。それぞれの議会で、「土日・夜間開催」と決めればできることです。しかし、現実の地方議会では、これがなかなかできないのです。


  

 できない理由は、地方議員の現状をみればわかります。


「地方議会を変える国民会議」の資料で、現状を整理していますが、簡単にご紹介しておきましょう(資料は以下のサイトでご覧いただくことができます)。

http://www.chihougikai-kaikaku.com/


 

 日本の地方議員は、総数34,879人(都道府県:2,739人、市・特別区:20,425人、町村:11,715人)です。議員たちに報酬などの形で支払っている総額は、試算してみると、2,690億円(報酬、期末手当、政務活動費、費用弁償・諸経費の合計)に達します。例えば、ゲームソフトや携帯電話向けゲームの市場規模は0.2~3兆円ですから(経済産業省ホームページより)、これに匹敵する、かなりの規模の“産業”なわけです。

 
 また、一人あたりの報酬等の合計額(年額)は、試算によれば、都道府県:2,026万円、市・特別区:833万円、町村:370万円です。これは、多くの国の地方議会と比べると、かなり突出しています。例えば、イギリスの地方議会は一人あたり支払が73万円、ドイツは50万円程度、フランスの基礎自治体はほぼ無報酬です。アメリカも、100万人以上の都市を除けば、交通費や日当程度(50万円程度)とされています。(いずれも佐々木信夫『地方議員』PHP新書より。)もちろん、こんな金額で生活はできませんから、ふつうの仕事をもったまま議員を務めることが当たり前なのです。

 
 

 世界的に異常な金額を支払っていても、金額に見合う成果があがっているならば、まだよいでしょう。現実はどうでしょうか? 


 議会の平均会期日数をみると、都道府県:98日、市・特別区:85日、町村:44日です。キックオフ会合で佐々木教授も指摘されていましたが、一日当たりこれだけの金額を稼げる人は、日本にそう多くいません。

 
 もちろん、仕事の成果は、日数がすべてではありません。そこで、実質的な活動ぶりはどうかというと、


・議員提案の政策条例が一つもない「無提案」議会が91%、

・首長が提出した議案を全く修正・否決していない「丸のみ」議会が50%、

(2011年朝日新聞アンケートによる)

などといった状態です。つまり、到底機能を果たしているとはいえない議会が大半なのです。


 

一方で、90日程度とはいえ、これが平日昼間に開催されますから、ふつうの仕事をもった人の兼職は難しくなります。「議員専業」が多くを占めるわけです。


 この結果、日本では、地方議員になることは、多くの場合は仕事をやめ、高いリスクを背負って、「政治」という特別な世界に飛び込むことを意味します。これは、ほとんどの人にとって、およそとりえない人生の選択肢です。「議員=特殊な人」になってしまうわけです。


 もし、多くの国でなされているように、地方議会は「土日・夜間開催」にし、ふつうの仕事のある人が地域貢献の一環として(いわばPTA活動や地域活動などのように)、ふつうに務めることが当たり前になったら、どうでしょうか。もっと多様な知識・経験・能力のある人材が参画し、議会の機能を高めることができるのでないでしょうか。


 一方で、ふつうの仕事のある人が兼務するならば、報酬等の額はずっと少なくてよいのでないでしょうか。

 
 これが私たちの問題提起です。(提案の詳細は、前記のウェブサイトをご覧ください。)

 

 
 議論しているだけでは、10年経っても進みません。どこかでまず、具体的に実現してみることが必要です。

 
 そこで、私たちは、まず日本のど真ん中の千代田区で、区議会の「土日・夜間開催」を実現することを提案しています。

 
 千代田区には、永田町・霞が関・丸の内・大手町はじめ、日本の政治・経済・文化の中心がすべて集まっています。こうした特別な場所だからこそ、先端的な変革を実現できる可能性が十分あります。そして、キックオフ会合で岸教授も強調したように、こうした特別な場所だからこそ、その効果と意義も極めて大きいと考えられます。これまでならば決して議員にはならなかったような人たちが、「土日・夜間開催」を前提に参画することで、議会と地方行政を大きく転換できるはずです。

 

 
 「地方議会を変える国民会議」は、特定の政党や党派に与するものではありません。政党・党派を超えて、問題意識を共有できる方々とともに、「土日・夜間開催」を実現したいと考えています。当面は、


・これまでならば決して議員にならなかったような人たちに、議員兼務という可能性の検討を呼びかける、

・企業の経営者などに、自社の役職員の議員兼務を認める(さらには、地域貢献の一環として奨励する)よう呼びかける、

・現職の地方議員を含め、できるだけ多くの方々との意見交換の場を設ける、

といったことを進めていくつもりです。


 

 ぜひ、一人でも多くの方々に、この運動にご賛同・ご参画いただければ幸いです。

 
 具体的な活動予定などは、「地方議会を変える国民運動」のウェブサイ<http://www.chihougikai-kaikaku.com/>をご覧いただければと思います。
 

【衆議院予算委員会、政治とカネ問題の追及続く】

 今週3月2日に行われた衆議院予算委員会で、来年度予算案採決の前提となる中央公聴会について、9日実施を全会一致で議決した。同日に開催された衆議院予算委員会理事会では、与党が、野党側に13日の衆議院予算委員会で締めくくり質疑と採決を行うことも提案した。民主党など野党は、回答を保留した。自民党は、当初、9日の締めくくり質疑・採決を提案していたが、野党側は、政治資金問題で昨年辞任した小渕前経済産業大臣、西川前農林水産大臣を参考人として招致して9日に質疑を行うよう要求したため、結論が出なかった。このことから、予算の年度内成立をめざす与党は、参議院での審議日程も考慮して、13日には衆議院を通過させたいとしている。

 

 *衆参両院の本会議や委員会での審議模様は、以下のページからご覧になれます。

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衆議院予算委員会での質疑では、引き続き安倍内閣の「政治とカネ」をめぐる問題に集中した。辞任した西川前農林水産大臣の政治献金問題のほか、新たに浮上した下村文部科学大臣や望月環境大臣、上川法務大臣の政治資金問題も追及の対象となった。

 西川氏の献金問題をめぐっては、26日の衆議院予算委員会理事会で、野党の求めに応じて西川氏が顧問を務めた企業と顧問料等の報酬額などの関係資料が提示されたが、民主党など野党は、説明が不十分だとして、衆議院予算委員会で西川氏を参考人として招致するよう求めた。今後、政治とカネ問題をテーマにした集中審議や政治倫理審査会の開催も含め、西川氏にさらなる説明を求めていきたいとしている。

 

 下村大臣が代表を務める政党支部が、支援者で組織する全国10の任意団体「博友会」の集めた年会費を個人寄付として処理していたなどの問題をめぐっては、民主党などが政治資金収支報告書の提出が求められる政治団体にあたり、政治資金規正法に違反するのではないかなどと質した。下村大臣は、「民間教育者による懇親のための団体」「任意団体は私の政治活動とは無縁」と説明したうえで、「寄付を受けたり、政治資金パーティー券を購入してもらったりしたこともない」などと違法性を否定した。

 望月大臣が代表を務める政党支部が、国の補助金を受けた企業から献金を受けていた問題について、望月大臣は、補助金交付を報道で初めて知ったとした説明したうえで「国でなく一般社団法人が交付決定をしており、政治資金規正法違反には当たらない」「知らずに受け取った。受け取った行為は法に抵触するものではない」などと違法性を否定した。政治資金規正法は、国の補助金を受けた企業が交付決定から1年間、政治献金することを禁じている。望月大臣は、国土交通省と、環境省から一般社団法人を通じてそれぞれ補助金が交付されていた企業から、1年以内に献金を受けていた。「道義的な立場から返金した」とも説明している。

 上川法務大臣の政党支部も、同企業から政治献金を受けていた。上川大臣は「法に抵触するような献金をいただいていたという認識は全くなかった」「補助金をもらっていたことは全く承知していなかった」などと釈明して違法性を否定した。

 

民主党など野党は、それぞれの疑惑の全容解明と安倍総理の任命責任について徹底追及していく方針だ。民主党は、27日の衆議院予算委員会で、国会提出が必要な所得等報告書に顧問として得た収入を西川氏が記載していないことを問題視し、「明らかに資産公開法に反している。脱税の疑いがある」「安倍政権はカネまみれ政権だ」(後藤議員)などと批判した。これに、安倍総理や疑惑を指摘された閣僚は「何の根拠もなく、とんでもない決めつけ」「イメージを付けるためだけに質問するのは非生産的」「あたかも不正があるかのような言い方だが、根拠はあるのか」などと反論した。

 また、安倍総理は、望月大臣や上川大臣の献金問題について、補助金交付を「知っていたか、知らなかったかが構成要件」「知らなければ違法行為ではないと法律に明記されており、違法行為ではないということは明らか」と、政治資金規正法違反はないことを強調した。

 

 閣僚らの政治とカネ問題が相次いでいることから、野党各党は、全容解明と任命責任の徹底追及だけでなく、再発防止策を示す必要があるとの認識から、企業・団体献金の禁止を打ち出し始めている。

維新の党は、2月27日、全政党や政党支部、政治家個人の政治資金団体への企業・団体献金の全面禁止する「政治資金規正法改正案」を議員立法で衆議院に提出した。維新の党は自主的な取り組みとして、来年から所属議員らが企業・団体献金の受け取りを禁止する方針を決めている。民主党は、大臣・副大臣・政務官は在任中の企業・団体献金の受け取りを自粛するなどの服務規律を定めた大臣規範の改正が必要との見解を示した。この他の政党も「企業・団体献金禁止と政党助成金廃止を議論すべき」(共産党の穀田国対委員長)、「企業・団体献金禁止の立法化を進めるべき」(社民党の又市幹事長)と述べている。

安倍総理は、維新の党などが求める企業・団体献金の全面禁止について、「政党や政党支部は認められている。民主主義のコストをどう分かち合うかだ」と述べるにとどめた。民主党が主張する大臣規範の改正については、「閣僚は大臣規範の精神をしっかり守っている。今後、変えていく必要はない」と述べた。

 

 

【船舶検査の拡大や日本人救出などについて議論】

 政府は、2月26日に開催された安全保障法制整備に関する与党協議会(座長:高村・自民党副総裁、座長代理:北側・公明党副代表)で、朝鮮半島有事などの周辺事態において、国連安全保障理事会の決議や船舶が帰属する国の同意を得ることを前提に、自衛隊が船舶(軍艦除く)の積み荷や目的地を検査し、必要に応じて航路の変更を要請できると規定している船舶検査活動法を改正して、「国際社会の平和と安定」のために活動する他国軍の後方支援に船舶検査を追加するよう提案した。民間船による核関連物資やテロ目的の武器の海上輸送を阻止することなどを想定して、対象船舶が帰属する国の同意があれば船長の同意がなくとも検査できるよう要件を緩和することや、正当防衛に限って認められている船舶検査の武器使用基準の緩和も求めている。

自民党は、「任意検査だけでは実効性が担保されない。船長承諾のない検査も認めるべき」と強制的な船舶検査を容認するよう求めたのに対し、公明党は、強制的な船舶検査は憲法が禁じる武力行使にあたるため、現行法に沿って「船長の承諾」を必要とする任意検査に限定するよう主張している。また、周辺事態法改正で「周辺事態」という概念が削除されるため、船舶検査も周辺事態に限定されず、活動場所も地理的制約がなくなることへの警戒もあるようだ。

 

 政府は、米軍などに物資提供などの後方支援を行う枠組みの簡素化などの検討も要請した。共同訓練や国際緊急援助活動などで自衛隊と他国軍が物資や燃料を相互に融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)は、日本とACSAを結んでいる米国・豪州以外の対象国とACSAを締結した場合、現在、個別に自衛隊法を改正して逐次、協定内容を盛り込んでいる。こうした国内法制定手続きを簡略化するため、物品や役務を提供する根拠となる条文を自衛隊法に盛り込み、政府間合意だけで支援を可能にするとしている。また、弾道ミサイルへの共同対処や海賊対処活動も実施対象とするほか、協力範囲も情報提供や警戒監視にひろげるようだ。ただ、公明党などから「政府間の取り決めだけで提供が続く事態は避けるべき」「国会承認は残すべき」などと国会関与は必要との声も出ている。

 

自衛隊による海外での日本人救出については、自衛隊法を改正して、(1)領域国の受け入れ同意、(2)領域国政府の権力が維持されている範囲などの一定の要件を満たせば、現地の警察当局などによる救出が期待できない場合などに限って自衛隊が日本人救出をできるようにする案も示した。派遣前の国内手続きを厳格化するため、国家安全保障会議(NSC)で議論したうえで閣議決定することを義務づけている。また、正当防衛などに限定されてきた自衛隊の武器使用について、国家または国家に準ずる組織ではないことを条件に、警察的活動に限って使用できるようにするとしている。

 これに対し、公明党は「積極的に救出や奪還をするのは、武器の使用権限などから次元が異なる」「自衛隊には人質奪還まで担う能力はない」と慎重姿勢を示した。武器使用が武力の行使にあたらない担保として「受け入れ同意が安定的に維持されている」点を重視しており、「自衛隊を派遣できる判断の基準を明確にしてほしい」と注文した。政府は、自衛隊派遣を認める場合の基準を策定する予定だ。

 

 このほか、与党協議で焦点となっている自衛隊の海外派遣を可能にするための恒久法について、政府は、「これまで通り特別措置法で対応するべき」と恒久法制定に慎重な公明党が自衛隊の海外派遣について厳格な要件を求めていることに配慮して、一定の歯止めがかかるよう、憲法9条が禁じる武力行使に抵触しない、海外派遣された自衛隊の現地での武器使用基準について正当防衛などに限る方向で検討しているという。公明党の北側副代表は、(1)国際法上の正当性、(2)国民の理解と民主的な統制、(3)自衛隊員の安全確保の3原則を踏まえて法制化を検討する考えを示しており、今後、容認も視野に、派遣基準など条件面の議論について行っていくようだ。

 

 

【国会監視機関が始動へ】

 2月26日、昨年12月に施行された特定秘密保護法にもとづいて政府の運用状況を監視する「情報監視審査会」について、衆議院本会議で、委員8人の人事を与党などの賛成多数により選任した。委員は、議席数に応じての配分となり、額賀福志郎、岩屋毅、平沢勝栄、松本純、大塚高司(以上、自民党)、漆原良夫(公明党)、松本剛明(民主党)、井出庸生(維新の党)の各衆議院議員が選任された。会長には、初会合で額賀衆議院議員が互選される予定だ。

衆議院本会議に先立って開催された衆議院議院運営委員会では、特定秘密を扱う国会職員の適性評価に関する運用基準について決定した。同基準は、秘密漏洩防止を目的としており、犯罪歴、節度ある飲酒、経済状況など7項目について調査するとしている。

参議院では、各党への委員配分などをめぐって対立しているが、与野党で委員配分のあり方を調整、適正評価基準を定めて身辺調査などを実施したうえで委員選出、3月中旬にも衆参でそれぞれ初会合を開催する方針でいる。これにより、与野党対立などで遅れていた国会の監視機関の始動にメドがつくこととなる。

 

 

【採決日程をめぐる与野党攻防に注視を】

衆議院予算委員会での審議が大詰めを迎えつつある。今週3日に外交・安全保障などをテーマに集中審議、4日に来年度予算に関する地方公聴会、5日に衆議院予算委員会での一般的質疑、6日に地方創生などをテーマにした集中審議がそれぞれ開催される。来週10日に衆議院予算委員会分科会、12日に格差問題を含めた社会保障政策をテーマにした集中審議が開催される予定だ。

今後、来年度予算案の採決日程をめぐる与野党攻防がより活発となっていくだろう。年度内成立をめざす与党は、来週後半にも衆議院を通過させる方針だ。窮屈な日程により困難な情勢となりつつあるため、遅くとも統一地方選前半戦が告示される4月3日までには成立させたいとしている。一方、民主党など野党は、閣僚の政治とカネ問題で攻勢を強めるとともに、4月の統一地方選を前に党としての独自性を打ち出そうと躍起になっている。ただ、野党側の質疑がスキャンダル追及・政権批判に集中し、政策論争があまり深まっていかない状況にあるだけに、野党内でも来年度予算案の衆議院通過にあたって徹底抗戦などの国会戦術はなるべく控えたほうがいいのではとの声が出始めているようだ。

引き続き閣僚の政治とカネ問題の行方を抑えつつ、水面下での心理戦も含め、与野党の駆け引き動向を見極めることが重要だろう。

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