政策工房 Public Policy Review

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

September 2014


【山本洋一・株式会社政策工房 客員研究員】  

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日の新聞を読んでいて、思わず「おっ」と声を漏らしてしまった。驚くような記事が載っているわけではない。日本経済新聞が民主党人事を巡る誤報を「おわび」しているのにびっくりしたのだ。朝日新聞による度重なる報道の訂正が、メディアの無責任体質に影響を与え始めたのだろうか。

 
 日経新聞が「おわび」を載せているのは、民主党の新体制を紹介する政治面記事の末尾。「13日付政治面で民主党の選挙対策委員長に岡田克也元代表、14日付総合・政治面で政調会長に大塚耕平参院議員を起用すると報じたのは誤りでした。おわびして訂正します」としている。

 
 さかのぼって紙面を確認すると、確かに13日付朝刊で「選挙対策委員長の後任には岡田克也元代用が就く」、14日付朝刊で「政調会長の後任に大塚耕平参院議員を起用する」と断定調で書いている。

 


以下、引用
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日本経済新聞 913日付朝刊

 
 民主党の海江田万里代表は12日、大畠章宏幹事長の後任に枝野幸男元官房長官を起用する人事を内定した。馬淵澄夫選挙対策委員長の後任には岡田克也元代表が就く。16日の党両院議員総会で承認される見通しだ。枝野氏は地元さいたま市で講演し「選挙で負けた民主党が第2ステップに入る」と、党再建に意欲を示した。民主党政権で幹事長、官房長官などを歴任したが、海江田執行部とは距離を置いてきた。

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日本経済新聞 914日付朝刊

 
 民主党の新たな党役員人事の大枠が固まった。桜井充政調会長の後任に大塚耕平参院議員、松原仁国会対策委員長の後任に川端達夫元総務相を起用する。幹事長はすでに枝野幸男元官房長官、選挙対策委員長は岡田克也元代表がともに内定している。海江田万里代表は来春の統一地方選や次期衆院選をにらみ、挙党態勢を重視した布陣で党の立て直しをはかる。

 
 役員人事は16日の党両院議員総会で承認される見通し。29日に召集予定の臨時国会は新体制で安倍政権と対峙する。

 
 野党第1党を率いる海江田代表の当面の課題は、党内の求心力向上と野党間の選挙協力だ。枝野、岡田両氏を執行部に加えて、自身の党運営に批判的な議員を取り込むとともに、参院からの政調会長起用で自らの支持勢力にも気を配る。

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 実際に民主党が16日の両院議員総会で決めた人事は、岡田氏が選対委員長ではなく代表代行に就き、政調会長には大塚氏ではなく福山哲郎元官房副長官を充てるというものだった。

 
 明らかな誤報だが、通常の環境であれば「訂正」も「おわび」もしなかっただろう。日経の17日の記事でも「政調会長についても、一時は大塚耕平元厚生労働副大臣で調整が進んだが、最終的に福山哲郎参院議員が就いた」と書いているように、政局報道においては「報道が間違ったのではなく、人事権者側が方針を変えた」と開き直るのが普通。日経だけでなく、読売や朝日、毎日新聞などがいずれも似たような記事を載せているから、なおさらである。

 
 だが、今回は朝日新聞が「吉田調書」を巡る報道を撤回し、読者と東京電力に謝罪した直後。その前には慰安婦問題を巡る報道を訂正した経緯もあり、新聞の報道ぶりに世間から厳しい目線が注がれていた。誤報を放置すれば、朝日のように槍玉にあげられかねない。日経はリスクマネジメントの一環として、事実関係の明らかな誤りには真摯に向き合うべきだと判断したのだろう。

 
 それはそれで「朝日問題がいい方向に作用した」と言えるが、本質的には各社が人事報道の速報性を競い合う、メディアの体質を見つめ直すことこそが必要だ。読者は「当たる」か「外れるか」もわからない飛ばし記事を読みたいわけではない。新聞に期待しているのは正確な情報と、わかりやすい解説だ。今回においては人事が野党再編にどう影響するか、そんな分析こそ読みたい。

 
 これまで大きな影響力を発揮してきた全国紙をはじめとするマスコミに対し、読者は疑義を抱き始めている。今、変わらなければ手遅れになる。

今週16日、安倍総理は政府与党協議会で、国際連合総会出席(9月21~27日)後の29日に臨時国会を召集する方針を示した。政府・与党で調整のうえ、19日に衆参両院の議院運営委員会を開催し、召集日を決定する見通しだ。臨時国会の会期は、12月6日までの69日間で調整しているという。

 

 消費税率10%への引き上げを2015年10月に予定通り実施するか否かについての年末の判断を前に経済再生への道筋を示すべく、第2次安倍改造内閣が最重要課題として掲げる「地方創生」と「女性活躍」の推進法案を臨時国会に提出予定だ。

官邸と与党は、地方創生関連法案の早期成立を図るべく、関連法案を審議する特別委員会を衆参両院に設置する方針を固めた。また、自民党は、「地方創生」や「女性活躍」に係る政策を検討する総裁直属の実行本部を党内に設置する予定だ。19日の総務会で正式決定する。本部長は、地方創生に河村建夫前党選対委員長、女性活躍に上川陽子元少子化担当大臣を充てるという。

 

 地方創生では、9日、安倍総理が石破地方創生担当大臣と会談し、省庁横断的に地域振興策を策定する「まち・ひと・しごと創生本部」(本部長:安倍総理、副本部長:菅官房長官、石破地方創生担当大臣)の基本方針を指示した。また、12日には、全閣僚が出席してまち・ひと・しごと創生本部の初会合を開催し、50年後に人口1億人程度を維持するための「長期ビジョン」と、今後5年間に実施する「総合戦略」を年内にも取りまとめることなどを盛り込んだ基本方針を決定した。

 基本方針では、「地方が成長する活力を取り戻し、人口減少を克服する」との目標を設定するとともに、「若い世代が就労・結婚・子育てを希望通りにできる環境づくり」「東京一極集中の歯止め」「過疎や高齢化など地域の特性に即した課題解決」などを基本的視点に据え、「従来とは次元の異なる大胆な政策を実行する」と明記した。歳出・税制・地方交付税・社会保障制度の改革などを検討していく予定だ。また、地域の個性を生かした取り組みを政府一丸となって後押しする姿勢を明確にするため、各省庁の類似事業を統合して窓口を一元化するワンストップ型の政策展開を進めるなど「各府省の縦割りを断固排除」や、国・地方の協議や自治体間の連携体制の構築などが盛り込まれている。さらに、国の財政支援策などがバラマキ型に陥らないよう、地方創生担当大臣による総合調整と一元的な政策実施を担保し、短期・中長期の政策目標を具体的に設定して政策効果を厳しく検証するとしている。 

 

 創生本部は、基本方針や、近く創生本部の下に発足する有識者会議「まち・ひと・しごと創生会議」の議論などを踏まえ、東京一極集中の是正や地域再生に向けた今後5年間の総合戦略の策定作業を本格化させる。まち・ひと・しごと創生会議のメンバーには、伊東香織岡山県倉敷市長、坂根正弘コマツ相談役、冨山和彦経営共創基盤代表取締役CEO、増田寛也元総務大臣、樋口美雄慶応義塾大学教授ら12人が内定した。

 地方関連事業の総点検や、各府省にまたがる地方創生関連事業の総合調整などは、副本部長の石破地方創生担当大臣が担う。政府は、まち・ひと・しごと創生本部が司令塔として機能させるため、現在70人規模態勢の事務局を、総務省や国土交通省、農林水産省などのほか、民間からの起用も視野に人員を拡充するほか、地域ブロック別チームを設置する方向で調整が進められている。また、石破大臣は、今年4月に成立した国家公務員制度改革関連法で新設が可能になった大臣補佐官に、伊藤達也元金融担当大臣を9日付で任命した。

 臨時国会には、まち・ひと・しごと創生本部を司令塔として法制化し、国が地方を支援する基本理念を示した基本法案のほか、まちおこしに取り組む自治体の意向を反映しやすくする地域再生法改正案などの関連法案も提出する予定だという。

 

女性活躍の推進については、有村女性活躍担当大臣を中心に、女性活用のための政策パッケージを10月に取りまとめる方針だ。企業などに女性の採用・昇進などの情報開示義務づけや、企業役員に占める女性比率を有価証券報告書に記載するよう求めるほか、女性を積極登用する企業に対し政府調達や公共事業の発注などで優遇することが検討されているようだ。

臨時国会に提出する女性活躍推進法案(仮称)では、行政機関や企業に対し、女性幹部の登用を促すための行動計画策定や目標設定を求めることなどが柱となるという。長時間労働の解消や在宅勤務の推進なども盛り込む方向で検討されているという。

 

 

 議員1人あたりの人口格差(1票の格差)是正策に向けた参議院選挙区制度改革をめぐっては、11日、参議院各会派でつくる「選挙制度協議会」の会合が開催された。

会合では、脇座長(自民党参議院幹事長)が隣接する10選挙区を5選挙区に統合する新たな「合区案」を提示した。新たな座長案は、22選挙区を11選挙区に統合する案について、自民党内などから強い反発が相次いだことを踏まえ、(1)鳥取・島根、(2)徳島・高知、(3)佐賀・福岡、(4)福井・滋賀、(5)山梨・長野をそれぞれ合区して、5選挙区に統合するというものだ。

 これに対し、合区案に一定の理解を示している民主党が「座長案が自民党案ということで議論してほしい」と求めたほか、「座長案は次善の策として十分検討し得る。議論が後退しないようにしてもらいたい」(みんなの党)などと前向きに進めるよう求めた。これに対し、都道府県単位の現行の選挙区制度を維持すべきと反対意見が相次いでいる自民党は、「合区案には依然、反対論とやむなし論がある。10月末までに自民党案を出せるよう努力したい」と理解を求めた。

 

自民党内では、参議院選挙制度改革をめぐって、合区案を提案し選挙制度改革の議論を主導してきた脇座長と、合区案に消極的で脇座長の議論の進め方は拙速と批判する溝手参議院議員会長の対立が激化していった。第2次安倍改造内閣の発足を前に、溝手議員会長が脇氏を参議院枠で入閣させるよう安倍総理・総裁に求めて、参議院自民党執行部から外そうと画策した。これに脇氏は入閣を固辞し、参議院推薦の閣僚枠が事実上ゼロとなった。

一方、脇氏は、9日の参議院執行部会で「来春の統一地方選後まで選挙制度の見直しをやらないという会長の考えには大変な誤りがある。自民党の信用を失墜させる行為だ。責任を取るべきだ」と、参議院自民党の改革案がまとまらない現状を批判し、溝手議員会長に辞任を求めた。溝手議員会長は、脇氏の要求を「個人の意見」として取り合わず、任期満了に伴う人事で、脇氏を事実上、更迭することを決めた。

 

12日、溝手議員会長は、所属する全参議院議員が出席する特別議員総会を開催し、参議院幹事長を交代させ、後任に伊達国対委員長を昇格させる人事案を提示した。人事案は、特別議員総会で賛成多数により了承された。参議院議員副会長に岩城参議院議院運営委員長、国対委員長に吉田幹事長代行、政審会長に鶴保参議院議員をそれぞれ充てることが16日に決まった。

幹事長交代に伴い、脇氏は協議会座長からも退く見通しで、参議院選挙制度改革をめぐる与野党の意見集約が遅れるのは避けられそうもないようだ。

 

 

 今月末召集予定の臨時国会では、安倍総理が重要課題と位置付ける「地方創生」や「女性活躍」の推進法案のほか、通常国会で継続審議となった「特定複合観光施設整備推進法案」(議員立法)、政府が再提出する予定の「労働者派遣法改正案」、「土砂災害防止法改正案」などが審議される予定だ。また、集団的自衛権行使を限定容認に向けた憲法解釈変更のための閣議決定に関することや、消費税率10%への引き上げの是非、原発再稼働などをめぐって与野党論戦になるとみられている。臨時国会に向けた各府省の政策・立法動向とその中身について、引き続き確認しておくことが大切だろう。

【山本洋一・株式会社政策工房 客員研究員】 


 朝日新聞が「吉田調書」を巡る記事の誤りを認め、謝罪・撤回した。木村伊量(ただかず)社長は誤報の原因について「思い込みやチェック不足が重なったこと」としているが、それだけではないはずだ。競合他社との競争を優先し、スクープを捻り出そうとするメディアの体質にこそ、問題の本質が隠れている。朝日新聞だけの個別問題ととらえ、同社への糾弾で終わらせるべきではない。

 
 問題となっていたのは520付朝日新聞朝刊の一面トップ記事。政府が福島第一原発所長だった吉田昌郎(まさお、故人)氏に対して行ったヒアリング調査の結果、通称吉田調書を独自に入手したとして、それを基に「9割の所員が待機命令に違反して第二原発に撤退していた」と報じた。

以下、引用


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朝日新聞 520日付朝刊

所長命令に違反、原発撤退 政府事故調の「吉田調書」入手

 
 東京電力福島第一原発所長で事故対応の責任者だった吉田昌郎(まさお)氏(2013年死去)が、政府事故調査・検証委員会の調べに答えた「聴取結果書」(吉田調書)を朝日新聞は入手した。それによると、東日本大震災4日後の11年3月15日朝、第一原発にいた所員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発へ撤退していた。その後、放射線量は急上昇しており、事故対応が不十分になった可能性がある。東電はこの命令違反による現場離脱を3年以上伏せてきた。

 
 吉田調書や東電の内部資料によると、15日午前6時15分ごろ、吉田氏が指揮をとる第一原発免震重要棟2階の緊急時対策室に重大な報告が届いた。2号機方向から衝撃音がし、原子炉圧力抑制室の圧力がゼロになったというものだ。2号機の格納容器が破壊され、所員約720人が大量被曝(ひばく)するかもしれないという危機感に現場は包まれた。

 
 とはいえ、緊急時対策室内の放射線量はほとんど上昇していなかった。この時点で格納容器は破損していないと吉田氏は判断した。

  
 午前6時42分、吉田氏は前夜に想定した「第二原発への撤退」ではなく、「高線量の場所から一時退避し、すぐに現場に戻れる第一原発構内での待機」を社内のテレビ会議で命令した。「構内の線量の低いエリアで退避すること。その後異常でないことを確認できたら戻ってきてもらう」

 
 待機場所は「南側でも北側でも線量が落ち着いているところ」と調書には記録されている。安全を確認次第、現場に戻って事故対応を続けると決断したのだ。

 
 東電が12年に開示したテレビ会議の録画には、緊急時対策室で吉田氏の命令を聞く大勢の所員が映り、幹部社員の姿もあった。東電はこの場面を「録音していなかった」としており、吉田氏の命令内容はこれまで知ることができなかった。

 
 吉田氏の証言によると、所員の誰かが免震重要棟の前に用意されていたバスの運転手に「第二原発に行け」と指示し、午前7時ごろに出発したという。自家用車で移動した所員もいた。道路は震災で傷んでいた上、第二原発に出入りする際は防護服やマスクを着脱しなければならず、第一原発へ戻るにも時間がかかった。9割の所員がすぐに戻れない場所にいたのだ。

 
 その中には事故対応を指揮するはずのGM(グループマネジャー)と呼ばれる部課長級の社員もいた。過酷事故発生時に原子炉の運転や制御を支援するGMらの役割を定めた東電の内規に違反する可能性がある。

 
 吉田氏は政府事故調の聴取でこう語っている。

  
 「本当は私、2F(福島第二)に行けと言っていないんですよ。福島第一の近辺で、所内にかかわらず、線量が低いようなところに1回退避して次の指示を待てと言ったつもりなんですが、2Fに着いた後、連絡をして、まずはGMから帰ってきてということになったわけです」

  
 第一原発にとどまったのは吉田氏ら69人。第二原発から所員が戻り始めたのは同日昼ごろだ。この間、第一原発では2号機で白い湯気状のものが噴出し、4号機で火災が発生。放射線量は正門付近で最高値を記録した。(木村英昭)

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 朝日新聞の「スクープ」から3か月後、産経新聞も吉田調書を入手したと報じた。産経は「調書を読むと、吉田氏は所員らが自身の命令に反して撤退したとの認識は示していない」と指摘。朝日新聞の報道が誤りだと批判した。その後に続いた読売新聞と共同通信も産経と同じ立場をとった。

 
 メディア間の非難合戦を受けて政府は11日、これまで非公開としてきた吉田調書を一転、公開した。内閣官房のホームページには7日間に分けて行われたヒアリングの全文(一部黒塗りあり)が掲載されているが、焦点となる個所は88日、9日の「事故時の状況とその対応について④」にある。この中に、次のようなやりとりが出てくる。「回答者」とあるのが吉田氏の発言だ。


以下、引用


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○回答者 本当は私、2Fに行けと言っていないんですよ。ここがまた伝言ゲームのあれのところで、行くとしたら2Fかという話をやっていて、退避をして、車を用意してという話をしたら、伝言した人間は、運転手に、福島第二に行けという指示をしたんです。私は、福島第一の近辺で、所内に関わらず、線量の低いようなところに一回退避して次の指示を待てと言ったつもりなんですが、2Fに行ってしまいましたと言うんで、しようがないなと。2Fに着いた後、連絡をして、まずGMクラスは帰ってきてくれという話をして、まずはGMから帰ってきてということになったわけです。


○質問者 そうなんですか。そうすると、所長の頭の中では、1F周辺の線量の低いところで、例えば、バスならバスの中で。


○回答者 今、2号機があって、2号機が一番危ないわけですね。放射線というか、放射線量。面心重要党はその近くですから、ここから外れて、南側でも北側でも、線量が落ち着いているところで一回退避してくれというつもりで言ったんですが、確かに考えてみれば、みんな全面マスクしているわけです。それで何時間も退避していて、死んでしまうよねとなって、よく考えれば2Fに行った方がはるかに正しいと思ったわけです。いずれにしても2Fに行って、面を外してあれしたんだと思うんです。マスク外して。

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 確かに吉田氏は「2F(第二原発)に行けとは言っていない」と述べているが、第一原発で待機するよう命令したとは言っていない。むしろ「よく考えれば2Fに行った方がはるかに正しいと思った」と評価している。それがなぜ「所長命令に違反」との記事になったのか。「命令違反、原発撤退」と書いた方がセンセーショナルだと思ったからだろう。

 
 日本の新聞は日々、競合他社との内向きな「スクープ合戦」に明け暮れている。他社の持っていない資料を独自に入手したとなれば、自分たちの優位性をアピールする格好の機会。記事化にあたってはいかにその資料が重要か、その資料に意味があるか、必死で「意義づけ」をする。

 
 吉田調書は事故対応を検証するための一級の資料ではあるものの、いざ入手してみると取り立てて目新しいニュースがなかった。そのまま報じれば大きな記事にはならないし、社内で評価されることもない。そこで他の資料と組み合わせることで事実関係をデフォルメし、読者の関心を誘うような見出しを捻り出し、スクープに仕立てあげた。見出しで「吉田調書入手」と書いておきながら、記事の根拠に
「東電の内部資料」を挙げているのがその証拠だ。

 
 「ねつ造」を煽ったのはスクープを重視する新聞社の体質であり、よりセンセーショナルな記事を書くよう日頃から指示している上司である。朝日新聞は「記者の思い込み」として個人の責任に押し付けようとしているが、それは責任逃れだ。重大な誤報が相次ぎ明らかになったこと、それが日本の国益を損ねたことを深刻に受け止め、報道のあり方を抜本的に見直さなければならない。

 
 他紙も「朝日に勝った、勝った」と浮かれるのではなく、自分たちの足元を見つめ直すべきだ。内向き競争に励んでいるのは朝日新聞だけではない。

【山本洋一・株式会社政策工房 客員研究員】

 
兵庫県議会で、また政務活動費の不適切な支出疑惑が浮上した。神戸新聞によると、10人の議員が配偶者ら親族を事務所職員などとして雇い、政活費を充てていた。国会では10年も前に配偶者の公設秘書への採用が禁止されている。地方議会も国会や他議会の「正しい改革」は見習わなければならない。

 
 神戸新聞によると、2013年度の収支報告で全議員89人のうち69人が人件費を計上。同新聞の取材に対し、このうち少なくとも10人が妻や父親、きょうだいらを政務活動補助職員や事務所連絡職員として雇い、人件費の一部を政活費から支出していたと回答した。

 
 

以下、引用

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政活費で親族に給与 10県議以上勤務実態は不透明 兵庫県会

 
 兵庫県議会の複数の議員が配偶者ら親族を事務所職員などとして雇い、政務活動費(政活費)から給与を支出していたことが4日、議会関係者などへの取材で分かった。県議会にはこうした支出を禁じる規定はないが、勤務条件などは議員が決める一方、大半の議員が給与の算定基準や勤務内容などを示す資料を収支報告書に添付しておらず、政活費の不透明な運用にさらに批判が強まりそうだ。

 
 2013年度の収支報告書によると、全議員89人のうち69人(辞職した議員も含む)が人件費として約138千~3375千円を支出。神戸新聞社が議員本人などに確認したところ、少なくとも10人が妻や父親、きょうだいらを政務活動補助職員や事務所連絡職員として雇っていた。

 
 県議会は親族の雇用を禁止していないが、雇用する際には書類整備や適正な雇用実態の確保を内規で求めている。しかし、職員との雇用契約書は現行制度では公開の対象外で、給与などの支払いを証明する領収書も個人情報を理由に氏名欄などがマスキング(塗りつぶし)されている。

 
 こうした親族雇用について、「有権者の誤解を招く」などの理由で三重県議会や鳥取県議会などは認めていない。福岡県議会は特別な経験や実績を持つ親族に限り採用を認め、その場合でも親族雇用届を事前に会派に提出することなどを義務づけている。

 
 親族を雇用していた兵庫県議は神戸新聞社の取材に、「妻に会計処理の経験がある」「身内の方が事務所を訪れる人も相談しやすい」などと説明した。

 
 兵庫県議会では、6月末に表面化した野々村竜太郎元県議の不自然な政活費支出問題を受け、領収書の厳格な取り扱いなどの見直しを決めたが、人件費の扱いは見直し項目に含まれていない。

 

※神戸新聞NEXTより

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 親族の雇用が問題なのは、勤務実態に見合った給与が支払われているかどうか、不透明だからである。過去には国会議員が妻やきょうだいらを公設秘書として登録し、国から給与の支払いを受けておきながら、実際には一切勤務していないという不正受給疑惑が相次ぎ発覚した。

 
 一概に親族と言ってもいろいろある。専門分野を持つきょうだいやいとこらに議会質問や条例立案のサポートを頼むこともあるだろうし、その際に適切な額の報酬を支払うのは不正とは言えまい。

 
 立場が不安定な秘書のなり手がいないため、やむを得ず親族にお願いすることもあるだろう。そうした場合は雇用理由と勤務実態、支払明細などの詳細を報告させ、有権者に隠さず公開すべきである。

 
 だが、家計を同じくする配偶者や、それに類する親や子どもへの公金支出は慎むべきだ。議員活動の中で配偶者や親子どもが手伝う場面もあるだろうが、そんなことは民間だってある。ポケットマネーを支払うならともかく、税金が基である政活費や公設秘書給与の支払いはふさわしくない。

 
 国会では不正受給疑惑が相次いだことを受け、2004年に国会議員の秘書給与法を改正。議員の配偶者を公設秘書として雇うことができないようにした。神戸新聞によると三重県議会や鳥取県議会では親族の雇用自体を認めていないという。禁止する範囲の線引きはともかく、国会や他の議会でこうした改革が進む中、知らん顔をして見直しを見送ってきた兵庫県議会の責任は重い。

 
 「人のふり見て我がふり直せ」ということでは、国会も当てはまる。これだけ地方議会の政活費のあり方が注目されているのに、自分たちの「文書通信交通滞在費」(文書通信費)については一切、見直そうとしていないからである。

 
 文書通信費とはすべての国会議員に対し、月100万円(年間1200万円)支給される経費のこと。兵庫県議会のように地方議会では使途報告の中身がマスコミの厳しいチェックにさらされているが、文書通信費は報告の義務が一切ない。不正支出をチェックしようにもできないのである。

 
 資金力の乏しい若手議員はこの文書通信費を事務所経費や人件費に充てているが、大物議員ともなれば議員の個人口座に振り込まれることが珍しくいない。いわば第二の給料となっているのだ。しかも経費としての支出が想定されているので、文書通信費は一切課税されない。丸ごと1200万円を自分の好きなことに使えてしまうのである。

 
 適切に使っているというのであれば、1円以上のすべての支出について議会への報告を義務付け、その内容を公開すべきだ。もちろん地方議会よりさらに厳しく、使途について制限をかけることは言うまでもない。余った分はもちろん、国庫に返却させるべきである。文書交通費の支給総額は年間86億円超。仮に3分の1でも戻ってくれば一定の財源になりうる。

 
 政府・与党は今年末にも消費税率を10%まで引き上げると決定する。国民に負担を求める一方で、自分たちの経費のあり方については議論すらしないというのはあまりにも不誠実だ。そんな姿勢では消費増税に関する国民の理解など得られるはずがない。

先週3日、第2次安倍改造内閣が発足した。18閣僚のうち麻生副総理兼財務・金融担当大臣や菅官房長官、岸田外務大臣、太田国土交通大臣、甘利経済再生担当大臣、下村文部科学大臣の6ポストが留任となり、12閣僚が交代となった。また、官房副長官(政務担当2人、事務担当1人)と5人の総理補佐官、内閣法制局長官も留任となった。

女性が輝く社会の実現に向け「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする」数値目標を掲げている安倍内閣は、過去最多と並ぶ女性5人(小渕経済産業大臣、高市総務大臣、松島法務大臣、山谷国家公安委員長・拉致問題担当大臣、有村女性活躍・行政改革担当大臣)を閣僚に起用するなど、率先して実践する姿勢をアピールした。

安倍総理が一本釣りで人事を決めた側面が色濃い第2次内閣と比べると、今回の改造内閣は、主要閣僚を留任させて内閣の継続性と安定性を維持しつつも、派閥領袖や入閣待機組を可能な限り起用・配慮なども伺える。9

 

安倍総理は記者会見で、今回の内閣改造を「日本の将来を見据え、有言実行、政策実現に邁進する実行実現内閣」と位置付け、そのねらいと意義について「諸政策を心機一転、さらに大胆かつ力強く実行するために本日、内閣改造を行った」と述べた。

そのうえで、「景気回復基調をより確かなものとし、その実感を必ず全国津々浦々にまで届ける。それこそが次なる安倍内閣の使命」「引き続き経済最優先でデフレからの脱却を目指し、成長戦略の実行に全力を尽くす」と、デフレ脱却と経済再生を最優先課題に位置付けた。地方創生や女性活用など成長戦略の具体化と着実な実行に力を注ぐ。

また、東日本大震災からの復興、集団的自衛権行使の限定容認を含む安全保障法制の整備や日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の再改定、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の辺野古移設、北朝鮮による拉致問題の解決なども重点的に取り組んでいく方針だ。安倍総理は、安全保障政策に精通する江渡氏を防衛大臣兼安全保障法制担当大臣に抜擢して、(1)国家安全保障政策の戦略・体系化、(2)自衛隊の態勢強化、(3)日米防衛協力のための指針の見直し、(4)米国など諸外国との防衛交流の推進、(5)沖縄県の負担軽減実現、(6)安全保障法制の整備、(7)わかりやすい説明の7点について指示したという。

 

翌4日、政府は臨時閣議で副大臣25人と政務官27人を決定した。広島市へ土砂災害で現地対策本部長を務める西村内閣府副大臣、東日本大震災の復興を担当する浜田復興担当副大臣と小泉復興政務官を除いて、すべて交代となった。菅官房長官や新閣僚らは、派閥推薦は考慮せず、所属議員の希望調査結果から人選・調整を進めたという。

通常、副大臣は当選4~5回の衆議院議員が中心だったが、今回の内閣改造では若手人材の育成を図るねらいから、当選3回が中心となった。また、女性の積極活用の方針を踏襲し、女性の副大臣3人、政務官4人をそれぞれ起用された。

 公明党からは、外務省出身の石川参議院議員が同党初の防衛政務官に起用された。安全保障法制の整備をめぐる公明党との協議を円滑に進めるため、石川政務官には、安全保障法制の整備について担当することとなった。

 

改造内閣発足に先立っておこなわれた自民党役員人事では、高村副総裁が留任し、幹事長に谷垣前法務大臣、総務会長に二階衆議院予算委員長、政調会長に稲田前行政改革担当大臣、選対委員長に茂木経済産業大臣が就任した。当初、選対委員長を選対局長に戻して、従来の三役体制とすることが検討されたが、四役体制を維持することとなった。

官邸が主導権を握る「政高党低」が今後も続くとみられているなか、大臣の経験がない「入閣待機組」の中堅・ベテラン議員らを中心に不満なども渦巻いている。こうしたなかで挙党態勢を維持していくため、谷垣幹事長や二階総務会長の手腕を期待したのだろう。また、公明党との合意形成や意思疎通を円滑に進めるためにも、調整型のベテランとして定評のある二階氏を総務会長として再登板させたとみられる。さらに、来年秋の自民党総裁選に向けて幅ひろく勢力を取り込み、政権基盤をより固めたいとの思惑もあったようだ。

このほかの自民党人事では、細田幹事長代行や佐藤国対委員長が留任、新たに政調会長代行を創設して塩谷元総務会長を充てるほか、政調会長代理に小野寺前防衛大臣、岩屋元外務副大臣、田村前厚生労働大臣、遠藤元文部科学副大臣らが起用されることとなった。 

 

 

 3日に行われた内閣改造・自民党役員人事について、野党はそれぞれ見解が分かれた。

消費税率引き上げを柱とする税・社会保障一体改革に係る自公民3党合意を結んだ谷垣氏の幹事長起用については、「身を切る改革を行う前に増税する道筋が付けられた」(松野日本維新の会国会議員団代表)、「増税内閣だ。大盤振る舞いで歳出を拡大してくるだろうが、無駄遣い回避、身を切る改革を求めていく」(小沢日本維新の会国会議員団幹事長)、「消費税率引き上げは見送るべき」(浅尾みんなの党代表)、「軒並み経済指標が悪化したこの経済状況で10%に増税して日本経済は持つのか」(江田結いの党代表)など、増税シフトを警戒する声が相次いだ。

内閣改造については、「改造したふり内閣」(海江田民主党代表)や「右向け右内閣」(吉田社民党党首)といった批判が出された。その一方で、「日本の難局を突破することを期待したい」(山田次世代の党幹事長)や「堅実な人選」(浅尾みんなの党代表)といった見解も示された。

 

 

3日の新閣僚による初閣議では、「東日本大震災の復興加速化」「地方の創生」「女性が輝く社会の実現」など7項目を重点課題と位置づける基本方針を決定した。また、地方創生の司令塔として、安倍総理が本部長を務め、全閣僚がメンバーとして構成する「まち・ひと・しごと創生本部」の設置を正式に決めた。安倍総理は、副本部長の地方創生担当大臣を「政府全体にわたって大胆な政策を立案・実行する地方創生の司令塔」と位置付けたうえで、石破前幹事長を起用した理由について「農政のプロとして地方の実態に通じ、何よりも経験豊富で実行力」がある点を挙げた。農林水産大臣や防衛大臣といった重要閣僚や党役員を歴任した石破大臣の手堅い手腕に期待感を示した格好だ。

政府は、創生本部の事務局規模を、各省庁から集めた約70人から拡大する方針を固めた。今後、石破大臣が経済産業省、厚生労働省、総務省、国土交通省、農林水産省から職員を選んでさらに増員する予定だ。また、地方の金融政策に通じた民間人の起用も検討している。

 

今週にも創生本部の初会合が行われる予定だ。政府は、2015年度から5年間にわたる総合戦略の策定を義務づけるとともに、税制優遇や自治体向けの新たな交付金創設、規制改革などの地方支援策などについて盛り込んだ「地方創生基本法案」を9月29日に召集予定の臨時国会に提出する方針でいる。このほか、関連法案の検討もあわせて進める。

また、地方創生に関する事業や予算が他省庁と重複しないよう、来年度予算編成に向けて新たな指針づくりに向けた調整をスタートさせた。8月末に締めきられた来年度予算の概算要求でも、「新しい日本のための優先課題推進枠」(上限3.9兆円)に、国土交通省や経済産業省、総務省などが要求し、似通った関連事業で予算を奪いあう構図が続いている。

石破大臣が、こうした課題にどの程度切り込み、イニシアティブを発揮して各省庁にまたがる地方の総合政策を取りまとめていくことができるかがポイントとなりそうだ。

 

 

 内閣改造を受け、野党8党は、3日に国会対策委員長会談を開いて、臨時国会の早期召集を求めていくとともに、集団的自衛権や原発再稼働問題などを議論する衆参両院の予算委員会で集中審議を開催するよう与党側に要求する方針で一致した。

会談後、民主党の松原国対委員長は、自民党の佐藤国対委員長に申し入れを行った。佐藤国対委員長は「できれば今月中にでもスタートしたい」と回答した。その後、政府・与党は、臨時国会の召集日を9月29日とし、会期を12月5日までの68日間とする方向で調整に入ったようだ。

 

 秋の臨時国会で、政府・与党は経済再生・地方創生などの関連法案提出・成立をめざす考えだが、野党側は憲法解釈の変更で集団的自衛権行使を容認するための閣議決定や、原発再稼働問題、消費税率10%への引き上げの是非、普天間基地移設問題なども焦点となるとみられている。また、野党側は、安倍総理と石破大臣が安全保障政策をめぐって見解不一致を露呈しただけに、この点を追及しようとする動きもあるようだ。

臨時国会に向け、各府省がどういった政策・法案の準備をすすめており、新大臣らの意向で変更点などは生じるのかなど、今後の政策・立法動向もウォッチしておいたほうがいいだろう。

 

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