政策工房 Public Policy Review

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

June 2014

原英史・株式会社政策工房 代表取締役社長】
 
 安倍総理は6月に入って、「来年度から法人税引下げ」を明言している。
 自民党政権では、税制に関しては伝統的に、政府よりも党税調が強い力を持つ。昨年末の予算編成プロセスでも、安倍総理が法人税引下げに意欲を見せていたものの、結果的には、すでに決定済みの引き下げ(復興法人特別税分の前倒し引き下げ。つまり、実効税率ベースでは38%から35%へ)にとどまった。
 今回は、6月下旬の骨太方針・成長戦略改訂を見据えて、このタイミングで総理が対外的に発言していることを考えると、おそらく、すでに党との間でも、何らかの引き下げを行なうことはすりあわせた上でのメッセージと考えるのが自然であり、月内に一定の決定がなされることになろう。

 ただ、問題は、どの程度の引き下げがなされるかだ。
 日本の35%に対し、OECD諸国(日本を除く)の平均は25%。近隣国をみても、香港16.5%、シンガポール17%、韓国24%と、近隣国との間には大きな差がある。
 これだけの違いあれば、グローバルに活動する企業が事業拠点を海外に移すのは自然であり、結果として最も困るのは、国内で雇用機会を奪われる人たちだ。
 安倍総理は1月のダボス会議で、法人税を「国際的に競争可能な水準」に引き下げることを表明しているが、これを文字通り実行できるかどうかが問われる。

 ただ、これまでの政府会議などから垣間見えるところでは、そうした大胆な引下げがなされるのかは定かでない。
 例えば、5月15日の経済財政諮問会議で民間議員が提出した資料では、「世界で最も企業が活動しやすい国」を目指すため、「法人税の実効税率について、将来的には25%を目指しつつ、当面、数年以内に20%台への引き下げを目指すべき」と提案されている。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2014/0515/shiryo_01_2.pdf


「20%台」というのは「29.・・%」という意味だから、この提案の意味は、
・数年かけて5~6%程度の引き下げ、
・その先の将来に25%へ、
ということだ。「世界で最も企業が活動しやすい国」になるのは、かなり先のことになる。
 この種の会議では、民間議員が思い切った改革提案を行ない、調整を経て、もう少し穏やかな案に落ち着くことが一般的。民間議員提案の段階でこれでは、どうなってしまうのか・・と思われなくもない。「数年で5~6%の引き下げ」では、民主党政権下で表面税率5%引下げ(実効税率35%へ)よりかなり小幅ともいえよう。

 一方、地方自治体からは、より大胆な提案もなされている。
 例えば、国家戦略特区に選ばれた大阪府や福岡市は、特区内に限るなどの一定の限定を課しつつ、よりスピーディに大胆に法人税を引き下げることを提案している。特に大阪府・市の場合は、すでに総合特区内で一定企業に対し、地方税(地方法人税、固定資産税など)をゼロにしてきた実績を踏まえての提案だ。

 海外に流れつつある事業拠点を国内に呼び戻し、さらに世界の企業・人材を呼び寄せようと本気で考えるのであれば、少なくとも特区限定といった措置でも、スピーディで思い切った引き下げを検討すべきかもしれない。
 

 

 先週5日、ブリュッセルの欧州連合本部で開かれた先進7カ国首脳会議で、安倍総理は「成長志向型の構造に改革するため、さらなる法人税改革を進めていく」と、国際競争力に打ち勝つ観点や、2020年の財政健全化目標の実現に向けて着実に取り組みつつ、法人税の実効税率引き上げを含む成長志向で税制改革に取り組む決意を表明した。また、電力・医療・農業分野などの規制改革、新たな労働時間制度、外国人労働者の活用などの成長戦略や、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人改革などを進めていく意向も示した。

 

 それに先立つ3日、自民党は、税制調査会(野田毅会長)の正副会長会合を開き、法人税改革の提言をとりまとめた。提言では、法人税の実効税率引き下げを容認する一方、その前提として外形標準課税(地方税)などの拡充を念頭に一部の黒字企業に偏っている税負担を赤字企業にも広く求めるような課税ベースの拡大、減税に見合う恒久の代替財源の確保などが不可欠と強調している。当初、自民党税制調査会や財務省は、財政健全化の観点から法人税の実効税率引き下げに慎重だったが、安倍総理の強い意向を受け、条件付き容認で歩み寄る格好となった。

 

 これにより、政府・与党は、来年度からの法人税の実効税率引き下げを実施する方針を固めた。政府・与党で調整のうえ、今月末に策定・決定する経済財政運営の基本方針「骨太の方針」に明記する。具体策については、年末の税制改正論議で最終的に決定することとなるという。

 甘利・経済財政担当大臣は、法人税の実効税率引き下げを「5年程度で20%台」という数値目標を主張しているものの、引き下げ幅と期間についてどのようにするかはいまだ曖昧のままだ。また、代替財源をめぐっても、政府・与党内で異なる見解が示されており、調整がついていない。骨太の方針にどこまで盛り込むかをめぐり、政府・与党内の綱引きが激しくなっていくだろう。

 

*衆参両院の本会議や委員会での審議模様は以下のページからご覧になれます。

 衆議院TVビデオライブラリ:http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php

 参議院インターネット審議中継:http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

 

 施行4年後、改憲に必要な国民投票年齢を現行の20歳以上から18歳以上へ引き下げることなどを定めた国民投票法改正案については、11日の参議院憲法審査会で採決することとなった。与野党7党と新党改革などの賛成多数により可決・成立する見通しだ。同法案の成立に見通しがたったことを受け、改正案を共同提出した与野党7党は、公職選挙法の選挙権年齢を18歳以上に引き下げについて検討するプロジェクトチームの初会合を、通常国会の会期末までに開催するという。

 

 

 昨年の臨時国会で成立した特定秘密保護法にもとづく政府の秘密指定・解除の運用状況や指定妥当性を監視する国会の監視機関について、4日、与党と民主党が実務者協議を行った。与党は、衆参各院に「情報監視審査会」(仮称)を設置して政府の特定秘密の適否を審査・審議することや、政府に運用改善を求める勧告権の付与、漏えいした国会議員への懲罰などを盛り込んだ「国会法改正案」への協力を求めた。これに対し、民主党は、国会が記録提出を要求しても「国家の重大な利益に悪影響を及ぼす」と政府が判断すれば特定秘密の提供を拒否できるとの規定が与党案に盛り込まれているとして、「政府が提供を拒否する理由が限りなく広がる」などと批判した。

 民主党は、与党が提出した国会法改正案の対案をとりまとめており、国会提出する方針だ。民主党案は、衆議院もしくは参議院の議長が提出を求めた場合、「第三者に提供しない前提で入手した情報や情報源に関する情報」を除いて、政府が情報提供に応じるよう義務付ける内容になるという。

 

 

 議員1人あたりの人口格差(1票の格差)是正策に向けた参議院選挙区制度改革をめぐっては、現行制度を維持しながら議員1人あたりの有権者が少ない隣接選挙区同士をあわせて1選挙区とする合区案(22選挙区を11選挙区に統合)に、足元の参議院自民党も含め、多くの政党が反対・慎重論を唱えている。このことから、参議院各会派でつくる「選挙制度協議会」の脇座長(自民党参議院幹事長)は、合区対象選挙区を20選挙区を10区に合区する案と、10選挙区を5区に合区する案を加えた3案を、7月26日に予定される次回会合で再提示して、各党に検討を求める方針だ。当初案では、人口格差が約1.83倍だったの対し、再提示予定の修正案では2.5倍前後にひろがるという。

 ただ、参議院自民党などには合区そのものに反発する声も根強いだけに、いずれの案も受け入れらないまま、協議が進展しない可能性もありそうだ。自民党は、プロジェクトチームを近く設置して、1~2カ月かけて独自の改革案をとりまとめるという。

 

 

 集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更などについて協議する自民党と公明党の「安全保障法制の整備に関する与党協議会」が、3日と6日に開催された。協議を加速させたい自民党は、議論の時間を確保するとともに、会合の開催頻度を増やすよう、3日の協議会会合で打診した。自民党の提案に公明党も応じ、協議会会合の開催ペースは、原則、週2回程度となった。

 

 政府が示す法整備などの対応が必要な15事例のうち、有事に至らないグレーゾーン事態については、公明党が、グレーゾーン事態のうち「漁民を装った武装集団の離島上陸などへの対処」「公海上で海賊などに襲われている日本船舶に訓練中の海上自衛隊の艦船が遭遇した局面での対処」の2事例について、現行法の運用改善にとどめて大筋容認する方向で調整してきた。政府は、自衛隊が治安出動や海上警備行動の発令手続きを迅速化すべく、3日の協議会会合で、(1)あらかじめ閣議決定し、自衛隊が迅速に対処できるよう海上警備行動を発令しておくこと、(2)閣議決定を閣僚が電話で済ませられるよう手続きを簡素化する案を提示した。ただ、政府・自民党が自衛隊法改正による武器使用基準の見直しなどについて否定しなかったため、公明党は回答を見送った。

 6日の協議会会合では、自民党が公明党に歩み寄り、当面は警察・海上保安庁・海上自衛隊の連携強化や発令手続き迅速化など現行法内での運用改善で合意に至った。新たな法整備については、今後の研究課題とした。

 グレーゾーン事態の「平時の弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護」については、政府が自衛隊の装備を防護する自衛隊法の条項を見直し、自衛隊と共同で活動する米艦を防護対象に加える案を示したが、公明党は回答を留保した。

 

 国際協力分野の「侵略行為を制裁する多国籍軍の武力行使への支援」については、3日の協議会会合で、政府が、国際連合・安全保障理事会決議にもとづく国際協力活動が柔軟に対応できるよう、戦闘地域であっても条件をクリアすれば、多国籍軍に対する自衛隊の後方支援(物資輸送、補給など)を認める新基準案を提示した。

 これまで自衛隊の後方支援は、可能領域を個別法で「非戦闘地域」に限定されてきた。新基準では、(1)支援先が現に戦闘を行っている他国部隊、(2)戦闘行為に直接用いられる物品・役務の提供、(3)支援する他国部隊が現に戦闘を行う現場での提供、(4)支援が他国部隊の個々の戦闘行為と密接に関係すること、のすべてに該当すれば、日本国憲法第9条が禁じている「他国の武力行使との一体化」となり、後方支援は認められないとしている。地理的制限を設けず、憲法に抵触する基準を定めることで、戦闘地域での輸送支援や人道色の強い医療支援などを解禁したい考えだ。

 しかし、公明党は、非戦闘地域の撤廃は現行解釈を踏まえたものとして理解を示しつつも、「戦闘地域での戦闘行為以外は何でもできるようになる」と反発した。このため、6日の協議会会合では、4条件を撤回したうえで、(1)現に戦闘がおこなわれている地域では支援しない、(2)支援地域が戦闘状態になった場合は直ちに撤退する、(3)人道的な捜索・救助活動は例外とする、との修正新基準を再提示した。非戦闘地域の概念を取らず、後方支援可能な対象を厳格化したものだ。公明党は、戦闘中の後方支援はしないことが明確になったとして、新基準に一定の理解を示した。

 

 グレーゾーン事態の3事例と国際協力分野の4事例の論点がほぼ出そろい、残る武力行使活動の8事例の本格的な議論が今週から開始する。年末の日米防衛協力の指針(ガイドライン)の改訂に間に合わせたい安倍総理はじめ官邸は、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の見直しを含め、通常国会中にも閣議決定する方向で準備を進めている。それに呼応して、高村・協議会座長(自民党副総裁)が、6日の協議会で「政府が考える閣議決定、政府方針をいつでも出せるよう準備してほしい」と、政府側に閣議決定の原案を策定するよう要請した。

 政府は、与党側と集団的自衛権の行使を認める文言調整を急いでいる。また、行使容認に慎重な公明党の理解を得るため、「自衛隊を他国の領域に原則として派遣しない」「国会の関与」といった集団的自衛権の行使に一定の制限を設け、その手続きなどについて示した「指針」策定も進めているという。20日にも閣議決定を行う案が政府内で浮上しており、自民党と公明党の駆け引きは、大きなヤマ場を迎えそうだ。

 

 

 今週11日には、党首討論が行われる。党首討論では、集団的自衛権の行使容認をはじめとする安全保障政策のほか、成長戦略、労働・雇用問題などが争点になるとみられている。

 民主党・日本維新の会・みんなの党の党首たちが安倍総理にどのような論戦をしかけ、安倍総理からどのような言質をとるのだろうか。安倍総理の発言次第では、集団的自衛権の行使容認をめぐる与党協議や終盤国会の行方に影響を与える可能性もある。一方、党首討論が不発に終われば、海江田・民主党代表おろしなど野党再編の動きが加速するかもしれない。

 こうした点も踏まえ、会期末まで残り2週間をきったなかで実施される党首討論をウォッチしておきたい。

高橋洋一・株式会社政策工房 代表取締役会長】 
 
 ネーミングは重要である。「残業代ゼロ」
というタイトルで報道される「ホワイトカラー・エグゼンプション」をみると、つくづくそう思う。
 ホワイトカラー・エグゼンプションとは、正確にいえば、いわゆるホワイトカラー労働者に対して、週40時間が上限といった労働時間の規制を適用しないなどの労働規制の適用除外制度だ。その場合、残業という概念がなくなるので、残業代ゼロというのは正しい表現ではない。
 日本では、制度としては未導入であるが、欧米ではこうした労働規制の適用除外がある。欧米における適用除外対象者の労働者に対する割合は、アメリカで2割、フランスで1割、ドイツで2%程度といわれている。

 なお、日本にも、ホワイトカラー・エグゼンプションに類するものはなくはない。裁量労働制だ。この制度は、労働時間概念は残っていて、実労働時間に関わらずみなし労働時間分の給与を与える制度だ。いくら働いても残業時間が増えるわけでないので、残業代ゼロに似ている。この対象になっている労働者は1割弱である。

 ただし、制度の運用は、厚労官僚のさじ加減ひとつであり、はっきりしない部分が多く、使い勝手が悪い。こうした意味で、ホワイトカラー・エグゼンプションと裁量労働は似て非なるモノだ。皮肉を込めていえば、裁量労働制とは、労働者の労働時間の「裁量」ではなく、厚労官僚の「裁量」を尊ぶ制度だ。ホワイトカラー・エグゼンプションには、厚労官僚の裁量の余地はまったくない。

 労働時間の規制緩和について、政府の産業競争力会議を舞台にして、いろいろな議論が出ている。
 はじめは、産業競争力会議の有識者議員が問題提起した。年収1000万円以上の労働者や国が指定する範囲の労働者について、本人希望と労使の合意を前提として、労働時間ではなく成果によって報酬が決まる新たな「労働時間制度」(ホワイトカラー・エグゼンプション)の導入が提案された。これに対して、残業代ゼロになるとし、労働界などから反対が起こった。

 残業代ゼロのネーミングが混乱に拍車をかけるとしても、政府の産業競争力会議における有識者議員と労働界の主張はかみ合ってない。産業競争力会議の有識者議員は、労働者の労働時間が長いことを理由として、労働時間に裁量がない人を除いた労働者に対して、新たな労働時間制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)を導入すると説明する。この場合、労働時間と給料がリンクされていないので、残業という概念がない。しかし、労働界では、産業競争力会議は使用者の意見を代弁をしているだけとし、対象は限定されず、広く一般労働者にまで残業代ゼロを広げようとしていると反発する。

 この背景としては、使用者側は、労働者が賃金に見合って働かず、余計な残業をして残業手当をかすめ取っていると思っている。一方、労働者側は、やりたくもない残業をさせられているに、きちんと残業代が払われていないといういわゆるサービス残業の問題を解消せずに、それを合法化するのは納得できないという。こうした両者の根本的な感情的ともいえる意見対立がある。

 5月28日の産業競争力会議において、民間議員から新たな提案があった。対象となる職種は年収を限定せず、一定の責任ある業務・職責を有する者として、例えば、経営企画・海外プロジェクト・新商品企画開発等の担当リーダー、ファンドマネジャー、IT、金融等ビジネス関連コンサルタント、経済分析アナリストがあげられた。主に現業的業務、定型的・補助的業務、経験の浅い若手職員層は対象外とされている。

 一方、厚労省からも提案があった。これまで、民間議員の新たな労働時間制度(労働時間規制の適用除外)に反対であったが、民間議員提案の対象をより絞って一部で容認に転じた。具体例として、成果で評価できる世界レベルの高度専門職をあげた。それ以外については、現行制度の裁量労働制で対応したいようだ。

 民間議員と厚労省の違いは、専門性の高い一定の職種において、新たな労働時間制度(ホワイトカラー・エグゼンプション、労働時間規制の適用除外)と従来の裁量労働制のどちらにするかだ。どうやら、落ち着く先は、厚労省が優勢で、従来の裁量労働制を少し拡充する方向のようだ。

 いずれにしても、どのような制度改正をするにしても、まず公務員で始めたらどうか。政府は公務員の雇用主なので、民間に政策を押しつけるより容易に、自ら政策を実施できるはずだ。政府が先行して実施し、民間が追随すれば、いろいろな懸念はなくなるだろう。

 もっとも、このアイディアをまともに実行しようとすると、国家公務員が労働基準法の適用除外になっていることにぶつかってしまう。民間に対しては適用除外を認めないのだが、国家公務員に対して適用除外になっているのは何とも皮肉なモノだ。

「隗より始めよ」ではなく、「官より始めよ」というのもなかなか簡単でないところに、雇用改革がなかなか進展しない理由を垣間見ることができる。

 今週2日、在宅医療推進のための医療法改正や介護保険サービスの負担増につながる介護保険法改正など法案19本を一括りにして、地域医療と介護保険制度を一体で見直す「医療・介護総合推進法案」の趣旨説明と質疑が、参議院本会議でやり直された。5月21日の参議院本会議で審議入りする予定だったが、田村厚生労働大臣の趣旨説明にあたって厚労省が配布した事前資料にミスがあったとして野党が反発したため、質疑を行わないまま本会議が流会となっていた。このため、田村大臣は、趣旨説明に先立って「議事運営に重大な混乱を招き、改めて深くおわびする。今後全力を挙げて再発防止に努める」と陳謝した。質疑では、度重なるミスへの厳しい批判が野党から相次いだほか、足元の自民党からも猛省を求める意見が出た。

 与党は、通常国会会期末までの成立をめざしているが、一部の法案審議に遅れも出ているだけに、自民党の高村副総裁や石破幹事長らは、会期内成立に努力するが、それでなお成立が困難な情勢となれば会期延長も考えることに含みを持たせる発言も行っている。

 

*衆参両院の本会議や委員会での審議模様は以下のページからご覧になれます。

  衆議院TVビデオライブラリ:http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php

  参議院インターネット審議中継:http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

 

 30日、自民党と公明党は、昨年の臨時国会で成立した特定秘密保護法に基づく政府の秘密指定・解除の運用状況や指定妥当性について監視する「情報監視審査会」(仮称)を衆参各院に設置して政府の特定秘密の適否を審査・審議することや政府に運用改善を求める勧告権の付与、漏えいした国会議員への懲罰などが盛り込れている「国会法改正案」を衆議院に提出した。

 当初、与党は、日本維新の会やみんなの党とも共同提出する方向で調整していた。しかし、各会派の議席数に応じて割りあてる審査会の委員数を8人とする与党案に対し、日本維新の会は議決が可否同数で対応が決まらない場合も考慮して9人への増員を、みんなの党は両院合同で計10人とするよう求めた。与党がこれらの要求を拒否したため、日本維新の会とみんなの党は共同提出への参加を見送った。

 与党は、国会採決では改正案に賛成する方針を固めている日本維新の会やみんなの党に配慮して、(1)政府は監視機関が特定秘密の提出を要求した場合、誠実かつ速やかに対応すること、(2)各省庁が特定秘密に指定した記録を毎年監視機関に提出・報告すること、(3)政府職員による内部通報制度の新設を検討することなどについて盛り込んだ付帯決議を行う予定だという。

 

 

 国会議員の定数削減を含む衆議院選挙制度改革については、逢沢・衆議院運営委員長が、29日の衆議院議院運営委員会理事会で、有識者で構成する第三者機関の人選について伊吹議長が提示する案を議決する方針について各党に伝達した。これに対し、民主党など野党から「副議長や議運委員長も含めて決めるべき」などと反対論が出た。しかし、逢沢委員長は野党側の主張を受け入れなかった。伊吹議長は、衆院選挙制度改革の結論を1年以内に出すべきとの認識を示しており、諮問するテーマとして小選挙区の1票の格差是正、定数削減、抜本改革の三つを挙げている。第三者機関の人選については、各党からの推薦を受け付けず、伊吹議長主導で人選を進めていく意向を示している。近く伊吹議長が人選を提示し、各党の理解をえて議院運営委員会で議決するようだ。

 

 議員1人あたりの人口格差(1票の格差)是正策に向けた参議院選挙区制度改革については、30日参議院各会派でつくる「選挙制度協議会」の会合が開催された。現行制度を維持しながら議員1人あたりの有権者が少ない隣接選挙区同士をあわせて1選挙区とする脇座長(自民党参議院幹事長)の合区案に対する各党の見解などが示された。公明党やみんなの党、共産党、社民党、新党改革が独自の対案を提示した。一方、自民党や民主党、日本維新の会・結いの党は、対案の検討に時間を要するなどと主張した。座長案を全面的に支持した党はなかった。脇座長は、座長修正案を7月26日に予定される次回会合で各党に再提示する方針だ。合区対象選挙区を当初の22選挙区から20選挙区に減らす案と、10選挙区に絞る案の2パターンになる見通しだ。

 

 

 集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更をめぐっては、自民党と公明党が「安全保障法制の整備に関する与党協議会」での議論を進めている。27日に開催された会合では、政府が(1)グレーゾーン事態が3事例、(2)国連平和維持活動での武器使用や国際協力などが4事例、(3)現在の憲法解釈・法制では支障が生じる集団的自衛権関連が8事例の、具体的な計15の事例集を検討材料として提示し、このうち有事に至らない(1)および(2)の7事例の説明を行った。

 協議では、グレーゾーン事態にあたる(1)漁民を装った武装集団の離島上陸などへの対処や、(2)公海上で海賊などに襲われている日本船舶に訓練中の海上自衛隊の艦船が遭遇した局面での対処、についての議論が行われた。自民党は、自衛隊が海上保安庁に代わって警察権を行使する「海上警備行動」や「治安出動」では発令手続きを行っている間に被害が拡大しかねないとして、発令手続きの簡素化を含む新たな法整備を求めた。また、他の5項目についても法改正の必要性に言及した。これに対し、警察権や個別的自衛権の行使で対応できるところも相当あると主張している公明党は、既存の海上警備行動などでは対応できない具体的ケースや、離島の対象範囲などを明確に示すよう政府側に求めた。さらに、政府側が法整備の具体的な方向性が曖昧であったことから、次回会合で政府の考え方を示すよう要請した。

 

 安倍総理や関係閣僚などが出席して、集団的自衛権行使容認など安全保障政策に関する集中審議が、5月28日に衆議院予算委員会で、29日に参議院外交防衛委員会で行われた。また、6月2日には衆議院安全保障・外務両委員会が安保政策をテーマにした連合審査会を開催した。

 安倍総理は「切れ目のない防衛体制をつくることで抑止力を高め、国民の生命と財産を守りたい」「憲法が集団的自衛権の全てを認めていないのか、それで国民の命を守り抜くことができるのか、検討すべきだ」などと述べ、与党協議の具体的な議論を見守りつつも、集団的自衛権の行使容認への意欲を重ねて表明した。そのうえで、「実際に武力行使を行うか否かは高度な政治的決断であり、時の内閣が総合的に判断し慎重に決断する」「行使は義務ではない。日本が戦争に巻き込まれるという議論があるが、そういうことはない」と述べた。
 日米防衛協力の指針(ガイドライン)関連では「新しい観点に立った安全保障政策の構築が可能になれば、それを基に日米共同で何ができるかを詰めていく」と述べた。今回のガイドラインは、軍事的緊張を高める中国を想定した日米防衛協力のあり方についてを柱としており、集団的自衛権の行使容認を反映することで日米防衛協力の実効性を高めたい考えだ。

 安倍総理の答弁では、米艦防護において日本人が乗っていなくても自衛隊が防護する場合があり得ることや、米国以外の第三国の艦船や民間船なども防護対象となりうるとの認識を表明するなど、政府が与党に提示している15事例に収まらないケースも飛び出した。安倍総理は「あらゆる事態に対する選択肢を用意しておくことは当然」と述べたが、与野党からは必要最小限とする範囲が曖昧で拡大解釈を懸念する声も出ている。与党協議への影響も少なからずありそうだ。

 

 3日の次回会合では、政府が、集団的自衛権関連の8事例を説明するとともに、グレーゾーン事態や国際協力の事例について議論を行う予定だという。公明党は、現行法内で自衛隊が対処する手続きの簡略化・迅速化など、法改正や新法制定を伴わない運用見直しにとどめる意向を政府が内々に示したことを受け、グレーゾーン事態の2事例を大筋で容認する方向で調整に入ったようだ。

 政府・自民党は、5月30日に安倍総理とヘーゲル米国防長官が確認した年内のガイドライン改定を念頭に、集団的自衛権行使を限定容認するための解釈見直しも含めた基本的方向性について、3分野一体で早期に閣議決定したい考えだ。ただ、集団的自衛権の行使容認に慎重な姿勢を崩していない公明党は、期限ありきで進めようとする自民党を牽制し、テーマごとの徹底かつ詳細な検討作業・協議を進めていく構えをとっている。

 与党協議は、自民党が想定した通りには進展せず、公明党ペースの思惑どおりに進んでいるだけに、通常国会中にも閣議決定に持ち込みたい自民党側は、焦りを募らせている。自民党と公明党で合意している週1回約1時間の会合ペースでは、会期末までに残り3回しかないからだ。このため、自民党は、協議を加速させるためにも、1回あたりの協議時間を長くすることや、開催頻度を増やすことなどを検討している。3日の会合で公明党側に正式に提案するという。

 

 

 集団的自衛権の行使容認をめぐる与党協議がスタートし、与野党の本格論戦も始まった。通常国会会期末まで20日を切り、水面下での綱引きも行われている。与党協議の行方や与党首脳の発言などについてきめ細かくみておいたほうがいいだろう。

 

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