先週9日、施行4年後に改憲に必要な国民投票年齢を20歳以上から18歳以上へ引き下げることなどを定めた国民投票法改正案が、衆議院本会議で、同法案を共同提出した与野党7党などの賛成多数により可決され、参議院に送付された。8日におこなわれた衆議院憲法審査会の採決に先立ち、選挙権年齢の18歳引き下げを「民法で定める成年年齢に先行して、2年以内を目途に、必要な法制上の措置を講ずる」ことや、学校教育における憲法教育の充実、公務員や教職員の地位利用への罰則については今後の検討課題とすることなど、7項目の付帯決議を採択した。
 12日に開催された参議院憲法審査会幹事懇談会は、14日に国民投票法改正案の提案理由説明を行い、審議入りする方針を決めた。ただ、改正案に反対している共産党が、参議院憲法審査会への付託に応じなかったため、参議院議院運営委員会が14日までに付託を議決することを条件としている。また、与党側は、野党側に、21日に改正案への質疑、26日に参考人質疑を実施する日程を提案したが、共産党などが反対したため、14日に再協議することとなった。なお、衆議院に議席のない新党改革も参議院で賛成する方針を決めており、通常国会中の成立は確実とみられている。

衆参両院の本会議や委員会での審議模様は以下のページからご覧になれます。
 衆議院TVビデオライブラリ:http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php
 参議院インターネット審議中継:http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

 議員1人あたりの人口格差(1票の格差)是正策に向けた参議院選挙区制度改革をめぐっては、8日、参議院各会派でつくる「選挙制度協議会」の脇座長(自民党参議院幹事長)が、山崎・参議院議長や輿石・参議院副議長と会談し、8月末までに結論を出すことをめざす意向を伝えた。今秋の臨時国会にも改正案を提出し成立させることを念頭においた発言だ。脇座長は、議員1人あたりの有権者が少ない隣接選挙区同士をあわせて1選挙区とする「合区」することなどを柱とする座長案を各党に提示しており、今月末までに座長案への見解や対案を示すようすでに要請している。
 ただ、座長案について、野党のみならず、自民党内からも慎重・反対論が相次いでいる。参議院自民党は、16日から7~8回程度、座長案に対する所属議員からの意見聴取を当選回数別に実施していくという。自民党内のとりまとめは、今月末以降になるとみられている。


 民主党など野党6党が提出していた介護職員らの賃金引き上げをめざす処遇改善法案について、9日、衆議院厚生労働委員会理事会で、法案を修正することで合意に至った。同法案は、今年末に2015年度の介護報酬改定率が決まるのをにらみ、賃金の低さが指摘されている介護職員の給与アップを後押しするための助成金を設け、介護職員らの月額賃金を平均1万円上げることをめざすという内容だ。
 当初、与党側は、1400億円程度の財源が必要となるだけに慎重な姿勢をみせ、賃上げ額の明示にも消極的だった。しかし、修正協議で、賃上げ対象に障害福祉に携わる職員を加えることなどで野党側に譲歩を求めた。野党側は、法案成立を優先して与党の要求を飲んだ。修正案では、2015年4月までに「財源の確保も含め検討を加え、必要があると認める時は必要な措置を講ずる」との内容になるという。期限を示しながらも、与党側が難色を示していた賃上げ額の明示については回避した格好だ。
 これにより、与野党の賛成多数により、通常国会中に成立する見通しとなった。政府は、賃上げ分の財源を介護報酬の引き上げで工面することを検討しているという。


 集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更をめぐっては、安倍総理の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が、安倍総理の意向に沿って、集団的自衛権の行使を禁じた憲法解釈を変更する報告書を15日に提出する。

 懇談会報告書は、憲法9条は「個別的」「集団的」の区別なく、自衛のための武力行使を禁止していないと指摘したうえで、安全保障環境の変化を理由に「従来の憲法解釈では十分に対応することができない」として憲法の解釈変更を要請し、国際連合の安全保障理事会の決議を根拠に各国が協力して制裁を加える集団安全保障には自衛隊が参加すべきと提言する内容となる見通しだ。
 具体的には、日本国憲法9条1項(国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する)の国際紛争の定義を「日本が当事者かどうかにかかわらず、国家または国家に準ずる組織の間での争いにおいて、武力を用いた紛争解決は憲法上認められない」という原稿解釈から「日本が直接の当事者となっている国際的武力紛争」へと変更することや、解釈上禁じている海外での「武力の行使」には国連安全保障理事会の決議に基づく集団安全保障措置は含まれないと解釈することなどを提起するようだ。
 ただ、この解釈変更は、戦力不保持などを定めた憲法9条2項や、自衛のための必要最小限度の実力行使に限って容認している現行解釈などとの整合性が問われかねないため、政府は慎重姿勢をとっている。政府は、従来の憲法解釈を尊重しつつも、周辺国が核兵器や弾道ミサイルを保有したり、国際テロが増加するなどの安全保障環境の変化により、必要最小限度の範囲に集団的自衛権も含まれるようになったとの認識を打ち出す方針だという。
 集団的自衛権の行使にあたっては、(1)密接な関係国が攻撃を受けた場合、(2)放置すれば日本の安全に大きな影響が出る場合、(3)攻撃された当該国から明確な支援要請がある場合、(4)第三国の領域通過にあたっての許可を得えた場合、(5)総理大臣が総合的に判断し国会承認を受けた場合、(6)日本が支援を行う必要性や均衡性があり、国家安全保障会議での慎重な検討を踏まえて総理大臣が判断した場合、の6要件すべてを満たされたケースに限定するよう求める内容になるようだ。

 懇談会報告書の提出を受け、政府は、内閣法制局を中心に政府内で検討を進めるとともに、与党と協議しながら、今週もしくは来週にも、憲法の解釈変更や関連法の整備に向けた検討の基本的方向性を「政府方針」としてとりまとめる予定だ。与党協議のたたき台となる「政府方針」のほか、日本近隣で米国などの部隊が攻撃を受けた場合など、集団的自衛権行使に該当しうる15パターン前後の想定有事についての「事例集」を、今週後半にも与党側に示す。自民党と公明党の協議は来週から本格化する予定で、自民党は、個別的自衛権や警察権で対応できることも多いと主張し集団的自衛権の行使容認に慎重な公明党に配慮しながら、とりまとめる意向を示している。
 憲法解釈変更のための閣議決定の時期については、与党協議の行方を見守るとして、急がない意向を強調しており、通常国会中に間に合わない場合、閣議決定を7月に遅らせる可能性も示唆している。ただ、今年秋の臨時国会に集団的自衛権の行使容認に関連する5法案(自衛隊法、周辺事態法、国連平和維持活動協力法、船舶検査活動法、武力攻撃事態対処法)を提出する予定であることや、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の年内再改定もあるだけに、政府は、今夏までに閣議決定する点は譲らない方針だという。

 こうした政府の動きに、公明党は神経をとがらせている。武力攻撃に至ると直ちに判断できず、個別的自衛権を発動するまでに至っていない「グレーゾーン」事態に対処できるようにするための法整備を先行して進めるなど、与党間で合意できるものから着手していくことも検討されているが、与野党協議の行方はいまだ不透明のままだ。当面、安倍総理・自民党と公明党による水面下での駆け引きが繰りひろげていきそうだ。


 今週15日、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会報告書が政府に提出される。安倍総理は、報告書を受け取った後、速やかに記者会見を開き、政府の基本的考え方について国民に説明するようだ。集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更について、安倍総理がどのように説明するのだろうか。
 来週にもはじまる自民党・公明党の協議の行方、6月11日に予定されている党首討論はじめ国会論戦への影響を見極めるためにも、安倍総理の発言に注目しておきたい。