原英史・株式会社政策工房 代表取締役社長】 

 4月から5月半ばにかけては、統一地方選、大阪都構想の住民投票と、地方政治での動きが続きました。

 これらがひと段落し、次は、安全保障法制はじめ、国政での重要課題が本格的に動き始めています。

 

 今後の課題に移る前に、この1か月半の地方政治の総括も必要でしょう。

 

 ここしばらくのマスコミ報道では、大阪都構想が成立に至らなかった要因や、この結果が国政にどう影響するのか(橋下氏の政界引退、維新の影響力低下?など)といった分析が盛んになされています。

 

 もちろんこうした分析も重要ですが、より本質的な問題があります。

 今回明らかになった最大の問題は、地方での変革がいかに困難か、もっといえば、地方での変革の方がしばしば国での変革より難しい、ということではないかと思います。

 

 一般に、地方自治体では首長が直接公選されるため、より強いリーダーシップをふるうことが可能と考えられがちです。

 しかし、現実に起きていることをみれば、むしろ逆です。

 

是非の評価は別として、

・カリスマ的な人気を誇った橋下市長でさえ、大阪都構想を実現できなかったこと、

・他方、国政では、決して国民的関心や支持の高くない秘密保護法制、安全保障法制などが着々と前進していること、

を見比べれば、対比は明らかでしょう。

 

 これは、選挙の仕組みに立ち返ると、実はそう不思議なことではありません。

簡単にいえば、

・国政では、小選挙区制の導入により、ランドスライド(地滑り的圧勝)が生じやすくなっており、圧勝した与党のトップは、リーダーシップを発揮しやすい構造です。

もちろん、過去数年続いたような衆参ねじれ状態では「決められない政治」になりますが、選挙結果次第では「変革しやすい政治」状況も生まれるのです。

 

・一方で、地方政治では、圧勝して首長になっても、議会はまた別です。そして、地方議会は、大選挙区制、中選挙区制のもと、一般に、“個人商店型”の議員が多くを占め、変革は生じづらい構造になっています。

また、首長が変革を試みても、部下である役所組織と、国の中央官庁が一緒になって足を引っ張るといったことも起きがちです。

足を引っ張るプレイヤーが、国以上に多く、また強力なわけです。

 

 大阪都構想に関しては、とりわけ議会が難題でした。

 大阪市議会では、橋下市長という強力なトップがいながら、大阪維新の会が過半数をとることはできていませんでした。これは、定数2~6名の中選挙区制のもと、過半数を確保することはほぼ不可能だからです。

 この結果、橋下氏はダブル選挙で勝利したものの、その後、議会との関係で苦戦を強いられました。

 そこでの苦戦で政治的資本を消耗した結果が、今回の住民投票だったとも考えられるわけです。

 

 統一地方選で問題になった低投票率や、無投票の多さなども、変革が生じづらい地方議会に直結しています。

 

 こうして、選挙システムによって、

・国では、(選挙結果次第で)変革が起きやすく、

・地方では、構造的に変革が難しい、

という状態が生まれています。

 

 問題は、これが妥当かどうかです。

ふつうに考えれば逆で、国と地方の比較論で、

・相対的に国でより慎重さが求められ、

・地方では、自治体ごとにそれぞれ、もっと思い切った変革にチャレンジしてもよい、

と考える人が多いのではないでしょうか。

 

 そして、地方でもっと変革ができるようになれば、知恵とチャレンジ精神のある地方が成長できるようになり、地方間の競争で日本全体がもっと活性化していくのでないでしょうか。

                                               

 この問題は、実は、「地方分権」「地域主権」といった課題が、長年にわたって掛け声倒れに終わってきた要因でもあります。

 ここに手をつけなければ、安倍内閣の掲げる「地方創生」も、絵に描いた餅に終わりかねないでしょう。