高橋洋一・株式会社政策工房 代表取締役会長】 

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月からの消費税増税後の経済を注視していた。最初にあれっと、思ったのは、627日に公表された総務省の家計調査を見たときだ。

 

 当日は、総務省から労働力調査、消費者物価指数調査が一緒に公表されていたので、マスコミはほとんどスルーした。そこで、「過去33年でワースト2!消費税増税がもたらした急激な消費落ち込みに政府は手を打てるか」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39708)というコラムを書いた、予想以上の反響があった。

 

 710日に内閣府が公表した機械受注統計も悪かったので、「経済指標は軒並み「景気悪化」の兆候!「消費税10%」の是非判断が安倍政権の正念場になる」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39839)、630日に国交省が公表した住宅着工統計も悪かったので、「消費、住宅、機械受注のトリプル悪化 政府の景気判断「上方修正」に疑義あり(http://diamond.jp/articles/-/56518)を書いた。

 

 こんなに悪い数字ばかりなのに、政府の見解は、「景気は持ち直している」として、景気が悪いとはいわない。717日に公表された月例経済報告や25日に公表された経済財政白書も、まったく同じトーンで書かれている。統計を見ればちょっと違うだろうと思ったので、「政府月例経済報告に異議あり!消費税増税の悪影響を認めたくない政府に騙される政治家とマスコミ」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39916)、「消費税増税の悪影響を認めたくないあまりに分析までおかしい「2014年度経済財政白書」」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39956)を書いた。

 

 以上で、筆者が「数字が悪い」というのは、過去2回の消費税増税の時に比べて、今回の場合が悪いという意味だ。

 

 統計数字は、健康診断でいろいろとチェックする数字のようなものだ。これらの変化を見ながら、健康状態をみていくのは、経済でも同じである。

 

 筆者が最近書いているのは、政府から公表された統計数字を見て、それがちょっと危ないところになりつつあるというウォーニングである。しかし、政府のいいぶりをみていると、数多い健康診断の中の数字で、少しでもいいところを見つけて、大丈夫ですよといっているようなものだ。筆者はメタボで、コレステロール値が基準値以上になっている。それを少し改善したからといって、それだけを強調し、大丈夫という医者なんていないが、政府の景気診断はそう言っているようなものだ。

 

 730日に公表された6月の鉱工業生産統計をみて、さすがに一部の官庁幹部や民間エコノミストたちも騒ぎ出してきた。生産指数が前月比3.3%低下したのだ。業種別でみると、15業種のうち14業種が低下、1業種が横ばいで、上昇した業種はなかった。

 

 特に在庫は問題のある数字で、意図せざる在庫が積み上がっているような数字になっている。

以下の図は、横軸に在庫、縦軸に出荷をとり、この景気回復局面をプロットそたものだ。

 

0731高橋さん

 景気循環の過程で、右回りの円を描くように動く。6月の段階で4分の3周したかのような位置になっており、これは、今後、景気が下降局面に移行しつつあることを示唆している。

 

 昨年秋に、消費税増税しても景気は心配無用といっていた民間エコノミストは8割くらいいただろう。この状況をどのように説明するのだろうか。