政策工房 Public Policy Review

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

カテゴリ: 寄稿

【山本洋一・株式会社政策工房 客員研究員】

 兵庫県議会議員の不正疑惑を機に国民の関心が高まっている「政務活動費」を巡り、東京都議会が2013年度の収支報告書と領収書を公開した。地元の各種団体に顔を売るための新年会に多額の会費を計上。次の選挙で当選するために、税金が使われている実態が浮き彫りになった。

 都議会議員の経費を賄う政務活動費は月額60万円。全国最大の自治体だけに、その額も全国で最も多い。条例で「議員が行う調査研究、情報収集、政策立案、広報・広聴活動等に要する経費に対して交付する」としており、具体的に人件費や視察・研修費など13項目を表に掲げている。

 新聞各紙の報道によると、2013年度の使途の中で最も多かったのが広報紙発行費の31364万円。続いて人件費の27769万円、事務所費6870万円だった。このほか会費に2023万円、会議費に534万円を充てていた。

 広報紙とは、新聞折り込みやポスティングなどで各家庭の郵便受けに投函される、政党や議員のPRビラのこと。議員の名前や顔写真を大々的に掲げ、小難しい政策を羅列したビラを見たことのある人は多いだろう。駅前などで街頭演説しながら、行き交う人々に配布することもある。

 こうした広報紙は政党や議員の活動を地元住民に知ってもらうツールとして重要だが、次の選挙で当選するための「政治活動」との線引きは難しい。普段はビラなど作らず、選挙が近づいた時だけ実績をPRする議員も少なくない。地元議員がどのように活動しているか、有権者は普段からチェックしておくべきだろう。

 問題は会費である。会費として計上されたのは計2023万円で、大半が業界団体や地元商店会などの新年会への参加費。中には76回の新年会に参加し、415500円を計上していた議員や、同じ日に地元の消防団の新年会に10件参加していた議員もいたという。

 東京都議会の「政務活動費の手引き」によると、「議員が政務活動に係る意見交換や情報収集等を目的として参加する会合等」には一回あたり1万円の限度で会費を払うことができるが、「意見交換を伴わない場合や懇親・親睦、飲食を主目的とする場合には支出できない」としている。

http://www.ombudsman.jp/13seimu/13tokyo.pdf#search='%E9%83%BD%E8%AD%B0%E4%BC%9A+%E6%84%8F%E8%A6%8B%E4%BA%A4%E6%8F%9B+%E6%83%85%E5%A0%B1%E5%8F%8E%E9%9B%86+%E6%94%BF%E5%8B%99%E6%B4%BB%E5%8B%95%E8%B2%BB'

 何のために新年会を開くか、一般的には懇親や親睦が目的だろう。会合の中でその業界について意見が交わされることももちろんあるだろうが、それが主目的とは到底言えまい。ましてや同じ時間帯に行われている新年会に10件も立て続けに出席し、意見交換するなど不可能である。

 実際には次の選挙を見据えた各種団体への「顔見世」が主目的だったと推測される。そのため民主党は新年会などへの出席は原則自腹とし、政務活動費からの支出を認めている自民、公明両党も前年度は都議選が近かったため「選挙活動との線引きが難しい」として制限した経緯がある。

 政務活動費の本来の目的は地域の課題を見つけ、解決するための政策を練り上げることだ。次の選挙で受かるための新年会への参加費やチラシの作成、選挙対策ばかりしている秘書の人件費などは自腹で払うか、支援者から寄付を集めて賄うべきだろう。

 多くの自治体では来年4月に統一地方選が行われる。有権者は地元の選出議員が政務活動費をどう使っているか、しっかりチェックしたうえで投票所に向かってほしい。

【山本洋一・株式会社政策工房 客員研究員】
 

 民主党の海江田万里代表が当面の間、続投すると表明した。731日の両院議員懇談会で「代表選前倒し」という名の退陣要求が相次いだが、海江田氏は拒否。反執行部もあっさりと矛を収めた。民主党は党内抗争ばかり続けているが、なぜ分裂しないのだろうか。

 「代表選で信を問うべきだ」。海江田体制の総括の場として設けた懇談会で、反執行部からは代表選の前倒しを求める声が相次いだ。代表の任期は来年秋まで。代表選を早めろということは、海江田氏を代表の座から引きずり下ろすということを意味する。

 だが、海江田氏はこうした声をあっさりとかわし、「熟慮に熟慮を重ねた結果、引き続き歯を食いしばって頑張りたい」と続投宣言した。反執行部側もそれ以上は食い下がらず、代表選前倒しを求めてきた岡田克也元代表も「これ以上は蒸し返さない」と語った。

 民主党内において海江田代表への不満は強い。党をまとめる指導力に欠けるうえ、発信力も弱いからだ。実際に参院選や都議選など重要選挙に負け続けている。滋賀県知事選では元所属議員が当選したが、民主党の応援を断っており、海江田代表の手柄ではない。

 だが、公然と「海江田おろし」を主張する議員たちも、誰一人として離党を口にしようとしない。その理由は膨大な額の「貯金」にある。

 公開されている最新の政治資金収支報告書によると、民主党が2012年末時点で使い残した金は218億円。自民党の13億円、公明党の55億円と比較しても突出して多い。2013年には参院選があったが、今も100億~200億円程度は残っているとみられる。

 今後の政界再編にとって、この金は需要な意味を持つ。今年は大型選挙がないが、来年以降は重要な選挙が相次ぐ。来年4月は全国の首長選や地方議員選を同時に実施する統一地方選。再来年の夏は参院選だ。次期衆院選も参院選と同時に行われる可能性が高い。

 候補者を擁立するには金がかかる。衆院選に立候補するには一人あたり600万円(小選挙区と比例代表の重複立候補の場合)の供託金が必要で、通常は政党が負担する。選挙費用を賄うための「公認料」も出さなければならない。

 民主党は実際に2012年の衆院選で、解散直後に一人あたり1500万円を4回に分けて振り込んだ。全国300選挙区に候補を擁立しようと思えば、これだけでも45億円かかる。ビラやポスターの作成、テレビCMなど、選挙には金のかかることがたくさんある。

 東西に分裂した日本維新の会は「分党」という手続きをとり、議員の数に応じて党の金を分け合ったが、これは極めて稀なケース。通常は政党が分裂すると「出ていく議員」と「残る議員」に分かれ、政党が溜め込んでいた金は「残る議員」が独占することになる。

 みんなの党がその典型例だ。渡辺喜美前代表と江田憲司前幹事長の対立が決定的となり、党運営の主導権を握る渡辺氏が江田氏を追い出した。江田氏は結いの党を立ち上げたが、みんなの党からは一銭も受け取れず、党運営に苦労している。

 民主党の場合も同じで、分裂すれば居残り組が200億円もの大金を独占することになる。だからこそ誰も離党せず、党運営の主導権争いをしているのである。

次の焦点は海江田代表の任期が切れる来年秋。民主党のお家芸とも言われる、大掛かりな党内抗争が見られそうだ。 

【山本洋一・株式会社政策工房 客員研究員】

 地方議員の不祥事にうんざりしている国民は多い。不適切野次に始まり、号泣記者会見、危険ドラッグの常用と、連日にわたって信じがたい問題行為が報道されている。「地方議会などそんなものだ」と達観していた私だが、さすがにこのニュースには驚いた。

 

 「不適切発言、指摘の議員に矛先」――。中日新聞が24日付朝刊に掲載したこの記事は、愛知県新城(しんしろ)市議が、議会で「穴の開いたコンドームを配っては」と発言した問題の続報。市議会が23日に全員協議会を開き、対応を巡って協議したというものだ。

 批判を受けて当該議員が謝罪、不適切発言を慎むよう申し合わせて終わらせるというのが普通の流れだろう。しかし、新城市議会は違った。問題発言をブログで取り上げた別の市議を問題視。議員の情報発信を制限するルールを作ると決めた、というのだ。

 

 問題発言は、無所属の永田共永市議が6月の一般質問で、少子化対策として「婚姻届けを出す夫婦に、穴の開いたコンドームを配ってはどうか」と述べたもの。

 当時は注目されなかったが、今月14日に共産党の浅尾洋平市議がブログで取り上げたことがきっかけで「地方議員の不祥事シリーズ」の一環として報道された。議会での公式発言とはいえ、浅尾氏が取り上げなければ市民に気づかれなかった可能性が高い。

 ところが23日の協議会では、ある市議が「議会で問題提起する前に、自らの主観を表に出すのはいかがなものか」とか「個人名を挙げるなら相手に通告するなど配慮すべきだ」と批判。他の市議も同調し、ブログやツイッターなどで発信する際のルールを設けることを賛成多数で決めた。

 

 首長はともかく、議員が自らの主観を表明することの何が悪いというのか。議会の前に自らの考えを説明し、質問に市民の声を反映させるのは議員の重要な職務である。公人である議員を批判するのに、事前通告しろというのもおかしな話だ。もしそれが事実ならば、首相官邸や民主党本部はパニック状態に陥るに違いない。

 そもそも問題となった発言は批判されて当然である。穴開きコンドームの配布が本気で少子化対策になると考えたのならば、明らかに議員としての資質に欠ける。厳正な本会議で受け狙いの冗談を言ったのならば議会人としての品位、人間としての品格が疑われる。

 議員辞職という類いの話ではないにせよ、市民の批判にどう応えるか、議会は真剣に向き合うべきだ。問題の焦点をすり替え、発言を明らかにした議員を糾弾している場合ではない。ましてや議会の透明化を逆行させるべきではない。

 

 総務省によると、地方議員の数は全国で34476人(定数ベース)。「そんなにたくさん要らない」という声は今後、さらに高まるだろう。抜本的な定数削減に取り組むか、さもなければ「議員がいてよかった」と市民に思わせるような仕事をして、存在意義を証明しなければならない。 

【山本洋一・株式会社政策工房 客員研究員】


 「内閣改造、来月下旬に」――。日本経済新聞は16日の朝刊一面でこんな見出しを掲げた。安倍晋三首相が8月下旬に内閣改造を実施する検討に入ったというニュースである。政権を支える菅義偉官房長官や石破茂幹事長は「続投との見方が出ている」とした。

 へー、そうなのかと思っていたら、翌日の産経新聞は少しニュアンスが違った。「9月上旬に内閣改造と自民党役員人事を行う方向で最終調整に入った」――。

時期がずれているうえ、石破幹事長に関する記述がない。8月下旬から9月上旬は、北朝鮮が日本人拉致被害者に関する調査結果を日本側に伝えるとされる時期。日経は「その前に改造すべきだと判断」、産経は「調査結果を待ったうえで」と真逆の根拠を挙げた。

看板商品である「一面記事」の内容が食い違うのは、主語である安倍首相から確約をとっていないからだ。日経は「首相周辺や与党幹部に8月下旬に改造する意向を伝えた」と書き、首相周辺や与党幹部から取材したことを示唆。産経は「複数の政府関係者が明らかにした」としている。

首相周辺とは首相秘書官のこと。政治家としての日程を管理する政務秘書官と、外務、財務、経産、防衛、警察、総務各省出身の事務秘書官の計7人を指す。政府関係者はもっと広く、「政府筋」とも呼ばれる官房副長官や首相補佐官、閣僚や次官などを含む。

いずれにしても「又聞き」であり、正確である保証はない。あと一か月半もすれば答えが明らかになるが、少なくとも改造の時期については日経と産経のどちらかが間違えている。その時、間違えたメディアは訂正を出さず「○○の考えだったが、○○を受けて方針転換した」といった言い訳記事でごまかすことになる。

 メディアが内閣改造を巡る報道の速報性を競うのは、組閣や内閣改造、党役員人事などの人事取材が、政治記者の「花形」とされているからだ。人事には多数の利害関係者がいるため、人事権者はなかなか明かさない。そのネタをいち早くとってくるのは優秀な記者、いち早く報道するのは優秀なメディアと評価される。

 しかし、それは極めて内向きな論理。読者にとって重要なのは正確性であり、その人事によって政策がどう変わるか、日本の針路がどこに向かうのかという解説だろう。複数の新聞を読み比べている人などほとんどいない。どの新聞が早かったかなど知る由もない。

 日本メディアの「内向き度」は記者の行動習性からもわかる。新聞記者が毎朝、起きて最初にやることは「朝刊チェック」。大手各紙の朝刊を広げ、自分の担当分野で「抜かれ」ていないかどうか、つまりスクープされていないかどうかを確認する。

 もしも抜かれていれば、早朝から確認作業に追われる。議員や官僚の自宅に押しかけ、「○○新聞の記事は本当ですか」と質問。イエスと答えれば夕刊に「後追い記事」を掲載する。そして翌日の朝刊に「抜き返す」ためのスクープ記事を載せる。

 重視されるのはそのニュースを伝える「意義」や正確性ではない。横並びの記事をいかに早く載せるかという視点である。メディアが内向きの「徒競走」に励んでいる間にも、国民の新聞離れは進んでいく。 

【山本洋一・株式会社政策工房 客員研究員】

 「号泣会見」で注目された野々村竜太郎兵庫県議が711日、辞表を提出した。地方議員への信頼を失墜させた同氏の辞職は当然だが、これで幕引きにしてはならない。地方議会と国会における議員経費のあり方について、抜本的に見直す契機とすべきだ。

 騒動の発端は野々村氏が日帰り出張を名目に、多額の政務活動費を受け取っていたこと。兵庫県議会が2013年の収支報告書を公表したところ、195回の日帰り出張の経費として300万円を支出したと記載していたことが発覚。記者が疑惑を追及したところ、突然号泣して意味不明な言動を繰り返した、というのが話題となった記者会見の経緯である。

 政務活動費は税金から支給されるかつて政務調査費(政調費)と呼ばれたもので、地方議員に認められた経費のことだ。兵庫県の場合は月50万円、年間600万円の範囲で、事務所費や人件費、視察費などに充てることができる。

 野々村氏に支給されたのは当選初年度の2011年に484万円、12年と13年に600万円の計1684万円。余った分は返すのが決まりだが、野々村氏はきっちり全額使い切っていた。しかし、領収書によって使途が明らかなのは4分の1程度にとどまり、残りは何に使ったのかまったくわからないという。野々村氏本人も「記憶にない」を繰り返している。

 今回の問題で明らかになったのは、制度及びチェックの甘さだ。兵庫県議会では自動券売機で購入した場合や、急いでいて領収書を発行できなかった場合に領収書を添付しなくてもいいという規定を設けている。野々村氏はこれを悪用したとみられるが、今どき自動券売機にだって領収書の発行機能はある。添付しなくてもいい理由にはならないはずだ。

 野々村氏やその他の議員が大量の切手を購入していたことも明らかになったが、これにも問題がある。切手は金券としての価値があり、換金することが可能だからだ。郵便を使うのであれば料金別納などの制度を利用し、本当に使ったことを証明させるべきである。

 大半の支出先がわからないような収支報告書を受理していた議会事務局にも問題がある。民間企業でこんな報告書を出せば認められるはずがない。税金を使う立場である議会は本来、民間よりも厳しくチェックすべきであり、早急な改善が求められる。

 実は、地方議会はまだマシ。制度的な欠陥はあるにせよ、今回のように収支報告書が事後的にチェックされ、不適切な支出があれば問題視されるからである。国会議員に支給されている経費には使途についての報告義務すらなく、調査しようにもできない。

 衆参両院の議員に支給される文書通信交通滞在費は月100万円。一切の報告義務がなく、余った分は返すという規定もない。資金不足の若手は地元事務所や私設秘書などの経費に充てているが、資金が潤沢な大物議員は「第二の給与」としてポケットに入れているのが現実だ。

 さらに、このお金は本来、経費に使われることを想定しているので、税金がかからない。大物国会議員は年間2100万円の給料に加えて、1200万円の手取りが加算されているのだ。これを議員特権と呼ばず、なんと呼ぶのだろうか。

 問題だらけの制度だが、この金の問題点を指摘する国会議員の声はほとんど聞かない。東京都議会の野次問題ではここぞとばかりに騒ぎ立てた野党議員も、野々村氏の問題を巡ってはあまり大きな声をあげていない。自分たちに矛先が向かうのを恐れているからだ。

 だが、地方議会における政務活動費と同様、税金を充てているのだからすべての使途を国民に明らかにすべきである。すべての支出の内容を記載し、証明となる領収書とともに毎年報告させるべきだ。そして余った分は返還させなければならない。

 国会議員も地方議員も野々村氏の辞職により、事態が沈静化するのを期待している。そんなことではだめだ。国会と地方議会における議員経費を適正化するまで、この問題の真の解決はない。

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