原英史・株式会社政策工房 代表取締役社長】 

 国家戦略特区に関して、今週は、「関西圏」「福岡市」の区域会議が相次いで開催された(9月24日、25日)。

 
 区域会議には、新たに特区担当大臣となった石破大臣ほか政府関係者、関係自治体の知事・市長らのほか、筆者も国家戦略特区WG委員として参加した。会議を通じ、大きな課題として浮かび上がったのが、「区域会議」という枠組みの強化の必要性だ。

 
 区域会議は、国(担当大臣)、自治体(首長)、民間の3者で構成し、いわば特区のミニ独立政府として制度化したものだ。今春の6区域の指定を受け、順次立ち上げが進み、6月以降本格稼働に入っている。だが、この区域会議が、まだ必ずしも十分に機能しきれていない。

 
 特に関西圏の区域会議では、国・自治体・民間の3者の間での問題意識の共有、課題整理が十分になされておらず、議論がかみあわない場面が散見された。

 
 会議の場でも議論になったが、ミニ独立政府として機能させるためには、月に1回、関係者が集まって会議するだけでは到底無理で、しっかりした事務局体制が必要だ(これは役所組織を新たに膨張させようという話ではなく、国・関係自治体などから人員を集めつつ、共通の事務局として機能させることが重要だ)。

 

 
 これと関連して、大阪市議会で特区事業(旅館業法の特例により、賃貸住宅等を宿泊用に活用する事業)関連の条例が否決され、事業がストップしたことも話題となった。

 
 この事業に関しては、特例対象となる宿泊日数の下限(7-10日)を条例で定めることになっていたが、条例審議の過程で、周辺住民対策などへの対処が問題とされ、条例否決。その結果、特区事業そのものがストップされたものだ。

 
 大阪市議会では、これ以外でも市長提案がなかなか通らない状態・・という政治の事情はさておき、この問題は実は特区制度の本質にも関わる。

 
 国家戦略特区は、規制改革を地域限定で実験的に行うものであり、実験的に講ずる特例措置は国家戦略特区法の中で規制改革メニューとして定め、これを各区域では区域会議(国・地方・民間)のもと国・地方・民間が一緒になって実行する、という仕組みだ。

 
 今回の事態は、国会ですでに議論された規制改革メニューについて、地方議会でいわば否定されたわけだが、プロセス論として、こうした形で、国・地方の議会で二重・三重に改革メニューの是非を審議していたのでは、国家戦略特区の本質、すなわち「規制改革の実験」をスピーディに進めるということからはかい離しかねない。

 
 区域会議を機能強化しつつ、国会、地方議会、区域会議が特区でそれぞれどのような役割を果たすのかについても、特区制度の目的・本旨にそって、さらに整理を進めることが課題だ。

 
 

 秋の臨時国会では、追加の規制改革メニューを定めるべく(6月の改訂成長戦略で定められた、外国人就労資格、公設民営学校など)、国家戦略特区法改正が提出される見通しだ。あわせて、区域会議の機能強化を十分に実現していけるかどうか。国家戦略特区の正念場だ。