【山本洋一・株式会社政策工房 客員研究員】

 産・学・官・民でレジリエンス社会の構築へ――。22日付日本経済新聞に、こんな全面広告が掲載された。レジリエンスとは聞き慣れない言葉だが、実は自公政権の掲げる「国土強靭化」のこと。評判が悪かった名称を一新し、官民を挙げて公共事業予算の積み増しを目指しているようだ。
 
 広告は一般社団法人「レジリエンスジャパン推進協議会」が設立され、都内で設立披露式典を開催したことを紹介。太田昭宏国土交通相や古屋圭司国土強靭化担当相らの挨拶を載せ、災害に強い国づくりの必要性を強調している。
 
 レジリエンスは英語で「弾力」や「回復力」、「強靭さ」を表す言葉。自民党の提唱した「国土強靭化計画」が公共事業のバラマキ批判を招いたので、印象を変えるために横文字を持ち出した。政府の関連サイトもいつのまにか「国土強靭化」がことごとく「レジリエンス」に置き換えられている。
 
 国民の生命や財産を守るために災害対策が必要なのは言うまでもない。公共施設の老朽化が進み、更新投資がこれから膨らんでいくのも確かだ。しかし、国土強靭化計画は災害対策を名目にしつつ、実際には公共事業予算の増額を目的としているところに問題がある。
 
 自民党の調査会はかつて「10年間で総額200兆円規模のインフラ投資が必要」と提唱。「金額ありき」であることを露呈させた。国土強靭化の推進を叫ぶ議員の多くは公共事業の関連業界から支援を受ける族議員。国民の多くはそこに「利権の匂い」を嗅ぎ取った。
 
 財政再建との両立も不透明だ。日本は総額1000兆円、GDPの2倍という巨額の債務を抱える借金大国。社会保障費の膨張も続く中、財源の確保は困難な課題である。公共工事を増やすには他の予算を諦める必要があるが、国土強靭化をうたう議員の口から具体策は聞かれない。
 
 国土強靭化を理論武装するブレーンには「財政出動による景気回復」を主張する学者が名を連ね、国の借金は増えても問題ないと強調する。しかし、財政出動の効果は低下しており、新たな借金は次世代への負担の先送りにつながる。財政再建に取り組む安倍政権の方針とも矛盾する。
 
 災害対策の強化には単なる公共工事予算の積み増しではなく、インフラ投資の取捨選択と、ソフト面の対策の充実こそが重要だ。39人が犠牲となった広島市の土砂災害でも、警戒区域指定が未指定だったことや、自治体による避難勧告の遅れが被害の拡大を招いたと指摘されている。
 
 全国くまなく公共事業をばらまくのではなく、専門家の知恵を動員して本当に危険な地域をピックアップし、重点的に予算を配分して対策を促す。全国の事例を踏まえ、自治体が迅速に、正確に避難を指示できるよう指針を常に見直す。そうした取り組みこそ国に求められている役割だろう。
 
 来年度予算案の編成がこれから本格化する。国会議員は予算の分捕り合戦を競うのではなく、いかに少ない予算で政策効果を高められるか、知恵を絞るべきだ。レジリエンス協議会も国会議員の分捕り合戦を後押しする、ただの圧力団体で終わらないことを願う。