政策工房 Public Policy Review

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

カテゴリ: 今週の永田町

 今週2日、在宅医療推進のための医療法改正や介護保険サービスの負担増につながる介護保険法改正など法案19本を一括りにして、地域医療と介護保険制度を一体で見直す「医療・介護総合推進法案」の趣旨説明と質疑が、参議院本会議でやり直された。5月21日の参議院本会議で審議入りする予定だったが、田村厚生労働大臣の趣旨説明にあたって厚労省が配布した事前資料にミスがあったとして野党が反発したため、質疑を行わないまま本会議が流会となっていた。このため、田村大臣は、趣旨説明に先立って「議事運営に重大な混乱を招き、改めて深くおわびする。今後全力を挙げて再発防止に努める」と陳謝した。質疑では、度重なるミスへの厳しい批判が野党から相次いだほか、足元の自民党からも猛省を求める意見が出た。

 与党は、通常国会会期末までの成立をめざしているが、一部の法案審議に遅れも出ているだけに、自民党の高村副総裁や石破幹事長らは、会期内成立に努力するが、それでなお成立が困難な情勢となれば会期延長も考えることに含みを持たせる発言も行っている。

 

*衆参両院の本会議や委員会での審議模様は以下のページからご覧になれます。

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 30日、自民党と公明党は、昨年の臨時国会で成立した特定秘密保護法に基づく政府の秘密指定・解除の運用状況や指定妥当性について監視する「情報監視審査会」(仮称)を衆参各院に設置して政府の特定秘密の適否を審査・審議することや政府に運用改善を求める勧告権の付与、漏えいした国会議員への懲罰などが盛り込れている「国会法改正案」を衆議院に提出した。

 当初、与党は、日本維新の会やみんなの党とも共同提出する方向で調整していた。しかし、各会派の議席数に応じて割りあてる審査会の委員数を8人とする与党案に対し、日本維新の会は議決が可否同数で対応が決まらない場合も考慮して9人への増員を、みんなの党は両院合同で計10人とするよう求めた。与党がこれらの要求を拒否したため、日本維新の会とみんなの党は共同提出への参加を見送った。

 与党は、国会採決では改正案に賛成する方針を固めている日本維新の会やみんなの党に配慮して、(1)政府は監視機関が特定秘密の提出を要求した場合、誠実かつ速やかに対応すること、(2)各省庁が特定秘密に指定した記録を毎年監視機関に提出・報告すること、(3)政府職員による内部通報制度の新設を検討することなどについて盛り込んだ付帯決議を行う予定だという。

 

 

 国会議員の定数削減を含む衆議院選挙制度改革については、逢沢・衆議院運営委員長が、29日の衆議院議院運営委員会理事会で、有識者で構成する第三者機関の人選について伊吹議長が提示する案を議決する方針について各党に伝達した。これに対し、民主党など野党から「副議長や議運委員長も含めて決めるべき」などと反対論が出た。しかし、逢沢委員長は野党側の主張を受け入れなかった。伊吹議長は、衆院選挙制度改革の結論を1年以内に出すべきとの認識を示しており、諮問するテーマとして小選挙区の1票の格差是正、定数削減、抜本改革の三つを挙げている。第三者機関の人選については、各党からの推薦を受け付けず、伊吹議長主導で人選を進めていく意向を示している。近く伊吹議長が人選を提示し、各党の理解をえて議院運営委員会で議決するようだ。

 

 議員1人あたりの人口格差(1票の格差)是正策に向けた参議院選挙区制度改革については、30日参議院各会派でつくる「選挙制度協議会」の会合が開催された。現行制度を維持しながら議員1人あたりの有権者が少ない隣接選挙区同士をあわせて1選挙区とする脇座長(自民党参議院幹事長)の合区案に対する各党の見解などが示された。公明党やみんなの党、共産党、社民党、新党改革が独自の対案を提示した。一方、自民党や民主党、日本維新の会・結いの党は、対案の検討に時間を要するなどと主張した。座長案を全面的に支持した党はなかった。脇座長は、座長修正案を7月26日に予定される次回会合で各党に再提示する方針だ。合区対象選挙区を当初の22選挙区から20選挙区に減らす案と、10選挙区に絞る案の2パターンになる見通しだ。

 

 

 集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更をめぐっては、自民党と公明党が「安全保障法制の整備に関する与党協議会」での議論を進めている。27日に開催された会合では、政府が(1)グレーゾーン事態が3事例、(2)国連平和維持活動での武器使用や国際協力などが4事例、(3)現在の憲法解釈・法制では支障が生じる集団的自衛権関連が8事例の、具体的な計15の事例集を検討材料として提示し、このうち有事に至らない(1)および(2)の7事例の説明を行った。

 協議では、グレーゾーン事態にあたる(1)漁民を装った武装集団の離島上陸などへの対処や、(2)公海上で海賊などに襲われている日本船舶に訓練中の海上自衛隊の艦船が遭遇した局面での対処、についての議論が行われた。自民党は、自衛隊が海上保安庁に代わって警察権を行使する「海上警備行動」や「治安出動」では発令手続きを行っている間に被害が拡大しかねないとして、発令手続きの簡素化を含む新たな法整備を求めた。また、他の5項目についても法改正の必要性に言及した。これに対し、警察権や個別的自衛権の行使で対応できるところも相当あると主張している公明党は、既存の海上警備行動などでは対応できない具体的ケースや、離島の対象範囲などを明確に示すよう政府側に求めた。さらに、政府側が法整備の具体的な方向性が曖昧であったことから、次回会合で政府の考え方を示すよう要請した。

 

 安倍総理や関係閣僚などが出席して、集団的自衛権行使容認など安全保障政策に関する集中審議が、5月28日に衆議院予算委員会で、29日に参議院外交防衛委員会で行われた。また、6月2日には衆議院安全保障・外務両委員会が安保政策をテーマにした連合審査会を開催した。

 安倍総理は「切れ目のない防衛体制をつくることで抑止力を高め、国民の生命と財産を守りたい」「憲法が集団的自衛権の全てを認めていないのか、それで国民の命を守り抜くことができるのか、検討すべきだ」などと述べ、与党協議の具体的な議論を見守りつつも、集団的自衛権の行使容認への意欲を重ねて表明した。そのうえで、「実際に武力行使を行うか否かは高度な政治的決断であり、時の内閣が総合的に判断し慎重に決断する」「行使は義務ではない。日本が戦争に巻き込まれるという議論があるが、そういうことはない」と述べた。
 日米防衛協力の指針(ガイドライン)関連では「新しい観点に立った安全保障政策の構築が可能になれば、それを基に日米共同で何ができるかを詰めていく」と述べた。今回のガイドラインは、軍事的緊張を高める中国を想定した日米防衛協力のあり方についてを柱としており、集団的自衛権の行使容認を反映することで日米防衛協力の実効性を高めたい考えだ。

 安倍総理の答弁では、米艦防護において日本人が乗っていなくても自衛隊が防護する場合があり得ることや、米国以外の第三国の艦船や民間船なども防護対象となりうるとの認識を表明するなど、政府が与党に提示している15事例に収まらないケースも飛び出した。安倍総理は「あらゆる事態に対する選択肢を用意しておくことは当然」と述べたが、与野党からは必要最小限とする範囲が曖昧で拡大解釈を懸念する声も出ている。与党協議への影響も少なからずありそうだ。

 

 3日の次回会合では、政府が、集団的自衛権関連の8事例を説明するとともに、グレーゾーン事態や国際協力の事例について議論を行う予定だという。公明党は、現行法内で自衛隊が対処する手続きの簡略化・迅速化など、法改正や新法制定を伴わない運用見直しにとどめる意向を政府が内々に示したことを受け、グレーゾーン事態の2事例を大筋で容認する方向で調整に入ったようだ。

 政府・自民党は、5月30日に安倍総理とヘーゲル米国防長官が確認した年内のガイドライン改定を念頭に、集団的自衛権行使を限定容認するための解釈見直しも含めた基本的方向性について、3分野一体で早期に閣議決定したい考えだ。ただ、集団的自衛権の行使容認に慎重な姿勢を崩していない公明党は、期限ありきで進めようとする自民党を牽制し、テーマごとの徹底かつ詳細な検討作業・協議を進めていく構えをとっている。

 与党協議は、自民党が想定した通りには進展せず、公明党ペースの思惑どおりに進んでいるだけに、通常国会中にも閣議決定に持ち込みたい自民党側は、焦りを募らせている。自民党と公明党で合意している週1回約1時間の会合ペースでは、会期末までに残り3回しかないからだ。このため、自民党は、協議を加速させるためにも、1回あたりの協議時間を長くすることや、開催頻度を増やすことなどを検討している。3日の会合で公明党側に正式に提案するという。

 

 

 集団的自衛権の行使容認をめぐる与党協議がスタートし、与野党の本格論戦も始まった。通常国会会期末まで20日を切り、水面下での綱引きも行われている。与党協議の行方や与党首脳の発言などについてきめ細かくみておいたほうがいいだろう。

 

 先週21日、在宅医療推進のための医療法改正や介護保険サービスの負担増につながる介護保険法改正など法案19本を一括りにして、地域医療と介護保険制度を一体で見直す「医療・介護総合推進法案」が、参議院本会議で審議入りする予定だった。しかし、田村厚生労働大臣の趣旨説明にあたって、厚生労働省が配布した事前資料にミスがあったとして審議が中断となった。厚生労働省は単純ミスを認めたが、労働者派遣法改正案で盛り込んだ罰則規定で「1年以下の懲役」とすべきところを「1年以上の懲役」と誤記するミスが今月上旬に発覚したこともあり、野党は「政府・与党の緩み、たるみ、おごり」「国会軽視か」などと批判・問題視し、趣旨説明に対する質疑を拒否した。田村厚労大臣が参議院議院運営委員会理事会で陳謝するも、野党はこれに納得せず、参議院本会議が流会となった。これにより、21日の参議院本会議で予定されていた電気事業法改正案の趣旨説明や、地方自治法改正案などの採決が見送りとなった。

 

 田村厚労大臣は、佐藤・厚労副大臣をトップに再発防止に向けた業務適正化推進チームを立ち上げて引き締めを図る方針だ。ただ、国会会期末が残り1カ月を切り、重要法案の審議が窮屈なものとなりつつあるなか、医療・介護総合推進法案の審議日程が決まらない。ミス発覚で国会審議のメドが立たずに成立そのものが危ぶまれていた、派遣労働者を企業が受け入れる期間の制約(最長3年)を事実上撤廃する労働者派遣法改正案を通常国会中の成立を断念する方針を固めたばかりだ。それだけに、与党内からは残る法案審議への影響を懸念する声も出始めている。

 

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 昨年の臨時国会で成立した特定秘密保護法に基づく政府の秘密指定・解除の運用状況や指定妥当性について監視する国会設置の新機関のあり方をめぐっては、22日、自民党と公明党は、衆参各院に「情報監視審査会」(仮称)を設置して、政府の特定秘密の適否について審査・審議し、政府に運用改善を求める勧告権を付与することなどについて盛り込んだ国会法改正案をそれぞれ了承した。野党と調整しのうえ改正案を提出、通常国会中の成立をめざしたい考えだ。

 

 また、与党は野党に同法案の概要を個別に説明した。国会が政府から情報提供を受ける権限を強める法改正を優先させたい民主党は難色を示した。このため、23日、与党は日本維新の会、みんなの党、結いの党の5党による実務者協議を開催して協力を要請した。結いの党はこれに慎重姿勢を示したが、新機関設置で合意している日本維新の会とみんなの党は、与党案におおむね賛同する意向を示した。このため、30日に改正案を共同提出することを念頭に調整していくことを、結いの党を除く4党で大筋合意することとなった。

 日本維新の会は、「安全保障に著しい支障を及ぼす恐れがある」と判断される場合に特定秘密の審査会や各委員会への提供を拒否できるケースについて、「政府が情報提供者に第三者に渡さないと約束して得た情報などに限定すべき」と主張している。こうした点に、与党側はいまのところ難色を示している。みんなの党は、内部通報制度の充実を付帯決議に盛り込むよう求めた。30日の国会提出までに4党がどこまで詰めて合意できるかがポイントとなりそうだ。

 

 一方、共産党を除く野党7党は23日、森・特定秘密保護法担当大臣に対し、国会の監視機関とは別に、秘密の指定・解除の適否などをチェックする第三者的監視機関を政府内に設置することについて、法律にもとづく設置なのか、それとも政令による設置なのかなどについて、回答するよう申し入れた。いまのところ、政府は政府内の第三者的監視機関の詳細について明らかにしていない。民主党や日本維新の会などは、独立性の高い別の第三者機関の設置を検討するよう求めている。

 

 

 国会議員の定数削減を含む衆議院選挙制度改革について、与野党10党は20日、国対委員長会談を開催した。与野党8党は、有識者で構成する第三者機関を国会に設置することを確認した。一方、共産党や社民党は、「衆議院選挙制度改革を議論する前に、現行制度の検証を行うべき」「国会と政党の責任を放棄するもの」などと改めて反対意見を表明した。

 与野党8党で確認したを受け、自民党の佐藤・国対委員長は逢沢・衆議院議院運営委員長に、第三者機関の設置を申し入れた。今後、議院運営委員会理事会などで有識者の人選や諮問内容、提言に拘束力を持たせるかどうかなど、第三者機関のあり方について協議していく予定だ。そのうえで、議院運営委員会での設置議決を通常国会中にも行う方針だという。議院運営委員会での採決は、野党8党の賛成多数により可決される見通しだ。ただ、議員定数や選挙制度のあり方などをめぐって野党8党の主張に隔たりもあるだけに、第三者機関のあり方に関する与野党協議がどこまで詰めることができるかがポイントだろう。

 

 

 集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更をめぐっては、20日、自民党と公明党が「安全保障法制の整備に関する与党協議会」での議論をスタートさせた。石破・自民党幹事長は、(1)武力攻撃に至ると直ちに判断できず個別的自衛権を発動するまでに至っていない「グレーゾーン事態」、(2)国連平和維持活動(PKO)などで自衛隊が民間人らを助ける「駆けつけ警護」などの国際協力、(3)集団的自衛権の行使容認を含む武力行使にあたる行動の順に、具体的な事例にもとづいて議論していくことを提案し、公明党もこれを了承した。

 今後の与党協議は、個別の事例ごとに、解釈変更の必要性やどのような法改正が必要かを話し合うという。今週27日の会合では、政府が検討材料として15の事例集を提示する予定だ。事例集は、(1)グレーゾーン事態が3例、(2)国連平和維持活動での武器使用や国際協力などが4例、(3)現在の憲法解釈・法制では支障が生じる集団的自衛権関連が8例となるようだ。このうち、27日の会合では(1)および(2)の計7例についての説明が行われるという。

 

 政府・自民党は、年末に予定する日米防衛協力の指針(ガイドライン)再改定を見据え、集団的自衛権行使を限定的に容認する解釈見直しも含めた3分野一体で、夏までに閣議決定したい考えだ。一方、集団的自衛権の行使容認に慎重な姿勢を崩していない公明党は、テーマごとの徹底かつ詳細な検討作業・協議を要求したり、合意できた箇所から法制化作業に入ってもらう先行処理を主張するなどして、期限ありきで進めようとする自民党を牽制している。憲法解釈変更を伴わない「グレーゾーン事態」への対応や駆けつけ警護などの議論などで時間を稼ぎ、憲法解釈変更を伴う議論を来春の統一地方選以降に先送りしたい思惑がある。いまのことろ、自民党と公明党は出口政策でも意見が食い違っており、落とし処が見えていない状態にある。早くも与党内で主導権争いが始まっており、今後、思惑含みの駆け引きへと発展する可能性もありそうだ。

 

 

 今週、集団的自衛権行使容認など安全保障政策に関する集中審議が、安倍総理や関係閣僚などが出席して、28日に衆議院予算委員会で、29日に参議院外交防衛委員会で行われる予定だ。集団的自衛権問題が終盤国会の主要争点に浮上しているだけに、6月11日に行われる党首討論の前哨戦ともいえる。集団的自衛権論議の展開によっては、与党協議の行方に影響する可能性もある。特に、行使容認に前向きな安倍総理・自民党と、慎重な公明党との議論についてしっかり押さえておくべきだろう。
 

 先週15日、安倍総理の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は、日本国憲法第9条が禁じる武力の行使は自衛のための措置を禁じていないとし、「自衛のための措置は必要最小限度」の範囲に集団的自衛権の行使も含めるよう、政府の憲法解釈を変更するよう求めた報告書を安倍総理に提出した。

 これを受けて、政府は、国家安全保障会議(日本版NSC)4大臣会合を開催して、懇談報告書と政府の立場との共通点および相違点について整理のうえ、政府の「基本的方向性」をとりまとめた。当初、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈見直し原案としての「政府方針」を発表する考えだったが、公明党が「与党協議を始める前に政府方針として提示されると、すでに集団的自衛権の行使容認が決定事項であるかのような印象を与える」として反発したため、具体的な結論を示さない「政府の基本的方向性」として提示することで決着が図られた。

 

 その後に開かれた記者会見で、安倍総理は、現行の憲法解釈では困難とされている事例として、(1)周辺有事において在留邦人らを日本に輸送する米軍艦船の自衛隊艦船による防護、(2)海外活動中に武装集団に攻撃された国連平和維持活動(PKO)要員や非政府組織(NGO)への自衛隊部隊による駆け付け警護を取り上げ、集団的自衛権の限定的な行使を容認するための憲法解釈見直しに理解を求めた。また、相次ぐ日本の領海侵入や北朝鮮による核・ミサイル開発、サイバー攻撃の脅威など、日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している現状を踏まえ、必要な法令整備を急ぐべきと訴えた。安倍総理は「これまでの憲法解釈で十分か検討が必要」「内閣法制局の意見も踏まえつつ、政府の検討を進めるとともに、与党協議に入りたい。協議結果に基づき、憲法解釈の変更が必要と判断されれば、その点を含めて、改正すべき法制の基本的方向を、国民の命と暮らしを守るため、閣議決定していく」との決意を述べた。

 安倍総理は、公明党などに進め方や表現などで配慮しつつも、年内に再改定する日米防衛協力のための指針(ガイドライン)に反映させることも視野に、今年秋の臨時国会前に集団的自衛権の行使容認のための政府方針を閣議決定、臨時国会に関連法案を提出する路線を貫くようだ。

 

 自民党と公明党の協議は、20日からスタートした。座長の高村・自民党副総裁、副座長の北側・公明党副代表のほか、石破自民党幹事長、井上公明党幹事長ら幹部らで構成する。与党協議は、週1回のペースで行う予定だという。

 自民党は、集団的自衛権の行使容認に慎重な公明党の理解を得たうえで、通常国会中にも政府が閣議決定できる環境を整えたい考えだ。ただ、公明党は、警察権や個別的自衛権の行使で対応できるところも相当あると強調して、慎重姿勢を維持している。このため、与党協議では、武力攻撃に至ると直ちに判断できず、個別的自衛権を発動するまでに至っていない「グレーゾーン」事態や、国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊の武器使用権限の拡大などの国際協力に対処できるようにする法整備といった憲法解釈の変更を必要としないテーマから協議を始める。具体事例で与党合意できれば、政府は、必要な法整備の準備に速やかに入るという。

 

 一方、野党側は、16日に野党8党の幹事長・国対委員長会談を開催し、衆参両院で全会派が参加して十分な審議機械を設けるよう、与党側に求めることで一致した。松原・民主党国対委員長が、佐藤・自民党国対委員長と会談し、野党8党の要求を伝えた。また、集中審議の複数開催、衆議院外務委員会・安全保障院会の合同開催も申し入れた。ひとまず、集団的自衛権に関する集中審議は、安倍総理や関係閣僚出席のもと、28日に衆議院予算委員会で、29日に参議院外交防衛委員会で行う方向で調整が進められている。

 

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 昨年の臨時国会で成立した特定秘密保護法に基づく政府の秘密指定・解除の運用状況や指定妥当性について監視する国会設置の新機関のあり方をめぐっては、自民党と公明党が、19日の「国会および政府の情報機能の強化に関するプロジェクトチームの会合で、与党案について合意した。

 与党案は、(1)衆参各院に常設の「情報監視審査会」(仮称)を設置して、各会派の議席に応じて委員数(8人)を割り当てて構成すること、(2)政府が国会に提出する特定秘密保護法運用に係る年次報告をもとに、政府による特定秘密の指定・解除をおこなった行政機関の長から説明聴取などにより、特定秘密の適否について審査・審議すること、(3)それにより不適切と判断すれば政府に運用改善を求める勧告権を付与すること、(4)審査会は非公開の秘密会とし漏洩対策を万全に講じることなどを柱としている。秘密を漏洩した国会議員は、秘密保護法の罰則(5年以下の懲役、500万円以下の罰金)に該当するが、憲法51条に基づく国会議員の免責特権が優先する場合には、衆参各院が懲罰の対象とするとしている。

 当初、自民党は、「特定秘密の指定の適否について新機関では判断しない」との方針だったが、特定秘密の指定・解除の適否について常時監視すべきと主張する公明党に譲歩して、強制力を伴わない勧告権を付与することで折り合うこととなった。自民党と公明党は、近く与党案をもとに、新機関設置で合意している日本維新の会やみんなの党などとも協議を行って、通常国会中の国会法改正をめざす方針だ。

 

 

 国会議員の定数削減を含む衆議院選挙制度改革をめぐっては、共産党・社民党を除く与野党8党の幹事長が、伊吹・衆議院議長に有識者で構成する第三者機関を伊吹衆議院議長の下に設置するよう正式に求めた。議長直属機関として設置することに難色を示す伊吹議長は、15日、石破・自民党幹事長と大畠・民主党幹事長と会談し、「議院運営委員会の議決を経て国会に第三者機関を設置すれば、設置に反対した党も議論に参加しやすくなる」と述べ、議院運営委員会の議決にもとづく第三者機関の正式な設置をめざすよう求めた。与野党8党は、伊吹議長の要請を受け入れる見通しで、通常国会中の設置も視野に、国会対策委員長会談などで調整に入るという。ただ、議員定数や選挙制度のあり方などについて、各党の主張に隔たりも大きいだけに、今後の意見集約は難航も予想されている。

 

 議員1人あたりの人口格差(1票の格差)是正策に向けた参議院選挙区制度改革をめぐって、参議院自民党は、参議院各会派でつくる「選挙制度協議会」の脇座長(自民党参議院幹事長)が提示した、議員1人あたりの有権者が少ない隣接選挙区同士をあわせて1選挙区とする「合区」案に対するヒアリングを、16日から当選回数別に開始した。自民党内でのヒアリングでは、「合区では地域の声が届かなくなる」と懸念が示されたほか、座長案への異論が相次いだ。また、比例代表定数を削減して選挙区に配分することで格差縮小を図る案なども提起されている。

 参議院自民党は、今月30日までにヒアリングを計7回開催して、党内の意見集約を図り、作業チームで対案づくりを進める方針だ。ただ、溝手・参議院議員会長が「脇氏の原案はわが党としての案ではない。党内の意見集約の期限は8月末だ」と述べているほか、改革案に慎重姿勢をみせるグループなどが独自の対案づくりも視野に勉強会をスタートさせるなどしており、脇座長が要請した今月末までの意見集約・取りまとめは困難な情勢となっている。

 

 

 施行4年後に改憲に必要な国民投票年齢を現行の20歳以上から18歳以上へ引き下げることなどを定めた国民投票法改正案が、14日、参議院憲法審査会で提案理由説明を行い、審議入りした。21日に発議者への質疑、26日と6月4日に参考人への質疑を行う予定だ。また、参議院での審議では、改正案に反対している共産党や社民党に質問時間を多く割り当てるという。与党は、6月11日の審査会採決をめざしている。改正案は、共同提出した与野党7党のほか、新党改革などの賛成多数により、6月中旬にも成立する見通しとなっている。

 

 在宅医療推進のための医療法改正や介護保険サービスの負担増につながる介護保険法改正など法案19本を一括りにして、地域医療と介護保険制度を一体で見直す「医療・介護総合推進法案」について、全野党が審議不十分と反対するなか、与党は、14日の衆議院厚生労働委員会で強行採決に踏み切った。同法案は、(1)国が904億円を投入して各都道府県に基金を設置し、医療・介護サービスへ財政支援するほか、(2)要支援者向けの事業を3年後までに市町村に移管、(3)2015年8月から、年金収入280万円以上の高齢者の介護保険の自己負担割合を現行の1割から2割に引き上げることなどを柱としている。与党の賛成多数により、14日の衆議院厚生労働委員会、15日の衆議院本会議で可決し、参議院に送付された。通常国会中にも成立する見通しとなっている。

 

 このほか、教育行政に対する自治体首長の権限を強化する「地方教育行政法改正案」が、16日、衆議院文部科学委員会で、与党や生活の党などの賛成多数により可決した。一方、教育委員会を地方教育行政の最終責任者(執行機関)として存続させる政府案の対案として民主党・日本維新の会が共同提出した、教育委員会を廃止のうえ教育行政の権限を首長に一本化する「地方教育行政法改正案」は否決された。政府案は、20日の衆議院本会議で可決のうえ参議院に送付される予定で、通常国会中にも成立するとみられている。

 

 通常国会の会期末(6月22日)まで残り1カ月あまりとなった。重要法案の会期内成立のメドがたちつつあることから、14日に開催された与党の幹事長・国対委員長会談で、会期を延長しない方針を確認した。会期を延長しない理由として、集団的自衛権の行使容認に向けた与党協議への配慮などもあるとみられている。

 

 

 集団的自衛権の行使容認をめぐる与党協議がいよいよ始まる。グレーゾーン事態など憲法解釈の変更を伴わないテーマから協議されていく予定だが、自民党・公明党の主張に隔たりがある集団的自衛権の行使容認をめぐっての駆け引きも水面下で進められる可能性もあるだろう。

 国会では、集団的自衛権に関する集中審議が来週にも行われる予定だ。集団的自衛権をめぐっては、野党それぞれ独自の主張を展開している。集中審議や6月11日の党首討論でどのような論戦となるかを見極めるためにも、安倍総理や各党の言動をきめ細かくみておくことが重要だろう。
 


 先週9日、施行4年後に改憲に必要な国民投票年齢を20歳以上から18歳以上へ引き下げることなどを定めた国民投票法改正案が、衆議院本会議で、同法案を共同提出した与野党7党などの賛成多数により可決され、参議院に送付された。8日におこなわれた衆議院憲法審査会の採決に先立ち、選挙権年齢の18歳引き下げを「民法で定める成年年齢に先行して、2年以内を目途に、必要な法制上の措置を講ずる」ことや、学校教育における憲法教育の充実、公務員や教職員の地位利用への罰則については今後の検討課題とすることなど、7項目の付帯決議を採択した。
 12日に開催された参議院憲法審査会幹事懇談会は、14日に国民投票法改正案の提案理由説明を行い、審議入りする方針を決めた。ただ、改正案に反対している共産党が、参議院憲法審査会への付託に応じなかったため、参議院議院運営委員会が14日までに付託を議決することを条件としている。また、与党側は、野党側に、21日に改正案への質疑、26日に参考人質疑を実施する日程を提案したが、共産党などが反対したため、14日に再協議することとなった。なお、衆議院に議席のない新党改革も参議院で賛成する方針を決めており、通常国会中の成立は確実とみられている。

衆参両院の本会議や委員会での審議模様は以下のページからご覧になれます。
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 議員1人あたりの人口格差(1票の格差)是正策に向けた参議院選挙区制度改革をめぐっては、8日、参議院各会派でつくる「選挙制度協議会」の脇座長(自民党参議院幹事長)が、山崎・参議院議長や輿石・参議院副議長と会談し、8月末までに結論を出すことをめざす意向を伝えた。今秋の臨時国会にも改正案を提出し成立させることを念頭においた発言だ。脇座長は、議員1人あたりの有権者が少ない隣接選挙区同士をあわせて1選挙区とする「合区」することなどを柱とする座長案を各党に提示しており、今月末までに座長案への見解や対案を示すようすでに要請している。
 ただ、座長案について、野党のみならず、自民党内からも慎重・反対論が相次いでいる。参議院自民党は、16日から7~8回程度、座長案に対する所属議員からの意見聴取を当選回数別に実施していくという。自民党内のとりまとめは、今月末以降になるとみられている。


 民主党など野党6党が提出していた介護職員らの賃金引き上げをめざす処遇改善法案について、9日、衆議院厚生労働委員会理事会で、法案を修正することで合意に至った。同法案は、今年末に2015年度の介護報酬改定率が決まるのをにらみ、賃金の低さが指摘されている介護職員の給与アップを後押しするための助成金を設け、介護職員らの月額賃金を平均1万円上げることをめざすという内容だ。
 当初、与党側は、1400億円程度の財源が必要となるだけに慎重な姿勢をみせ、賃上げ額の明示にも消極的だった。しかし、修正協議で、賃上げ対象に障害福祉に携わる職員を加えることなどで野党側に譲歩を求めた。野党側は、法案成立を優先して与党の要求を飲んだ。修正案では、2015年4月までに「財源の確保も含め検討を加え、必要があると認める時は必要な措置を講ずる」との内容になるという。期限を示しながらも、与党側が難色を示していた賃上げ額の明示については回避した格好だ。
 これにより、与野党の賛成多数により、通常国会中に成立する見通しとなった。政府は、賃上げ分の財源を介護報酬の引き上げで工面することを検討しているという。


 集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更をめぐっては、安倍総理の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が、安倍総理の意向に沿って、集団的自衛権の行使を禁じた憲法解釈を変更する報告書を15日に提出する。

 懇談会報告書は、憲法9条は「個別的」「集団的」の区別なく、自衛のための武力行使を禁止していないと指摘したうえで、安全保障環境の変化を理由に「従来の憲法解釈では十分に対応することができない」として憲法の解釈変更を要請し、国際連合の安全保障理事会の決議を根拠に各国が協力して制裁を加える集団安全保障には自衛隊が参加すべきと提言する内容となる見通しだ。
 具体的には、日本国憲法9条1項(国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する)の国際紛争の定義を「日本が当事者かどうかにかかわらず、国家または国家に準ずる組織の間での争いにおいて、武力を用いた紛争解決は憲法上認められない」という原稿解釈から「日本が直接の当事者となっている国際的武力紛争」へと変更することや、解釈上禁じている海外での「武力の行使」には国連安全保障理事会の決議に基づく集団安全保障措置は含まれないと解釈することなどを提起するようだ。
 ただ、この解釈変更は、戦力不保持などを定めた憲法9条2項や、自衛のための必要最小限度の実力行使に限って容認している現行解釈などとの整合性が問われかねないため、政府は慎重姿勢をとっている。政府は、従来の憲法解釈を尊重しつつも、周辺国が核兵器や弾道ミサイルを保有したり、国際テロが増加するなどの安全保障環境の変化により、必要最小限度の範囲に集団的自衛権も含まれるようになったとの認識を打ち出す方針だという。
 集団的自衛権の行使にあたっては、(1)密接な関係国が攻撃を受けた場合、(2)放置すれば日本の安全に大きな影響が出る場合、(3)攻撃された当該国から明確な支援要請がある場合、(4)第三国の領域通過にあたっての許可を得えた場合、(5)総理大臣が総合的に判断し国会承認を受けた場合、(6)日本が支援を行う必要性や均衡性があり、国家安全保障会議での慎重な検討を踏まえて総理大臣が判断した場合、の6要件すべてを満たされたケースに限定するよう求める内容になるようだ。

 懇談会報告書の提出を受け、政府は、内閣法制局を中心に政府内で検討を進めるとともに、与党と協議しながら、今週もしくは来週にも、憲法の解釈変更や関連法の整備に向けた検討の基本的方向性を「政府方針」としてとりまとめる予定だ。与党協議のたたき台となる「政府方針」のほか、日本近隣で米国などの部隊が攻撃を受けた場合など、集団的自衛権行使に該当しうる15パターン前後の想定有事についての「事例集」を、今週後半にも与党側に示す。自民党と公明党の協議は来週から本格化する予定で、自民党は、個別的自衛権や警察権で対応できることも多いと主張し集団的自衛権の行使容認に慎重な公明党に配慮しながら、とりまとめる意向を示している。
 憲法解釈変更のための閣議決定の時期については、与党協議の行方を見守るとして、急がない意向を強調しており、通常国会中に間に合わない場合、閣議決定を7月に遅らせる可能性も示唆している。ただ、今年秋の臨時国会に集団的自衛権の行使容認に関連する5法案(自衛隊法、周辺事態法、国連平和維持活動協力法、船舶検査活動法、武力攻撃事態対処法)を提出する予定であることや、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の年内再改定もあるだけに、政府は、今夏までに閣議決定する点は譲らない方針だという。

 こうした政府の動きに、公明党は神経をとがらせている。武力攻撃に至ると直ちに判断できず、個別的自衛権を発動するまでに至っていない「グレーゾーン」事態に対処できるようにするための法整備を先行して進めるなど、与党間で合意できるものから着手していくことも検討されているが、与野党協議の行方はいまだ不透明のままだ。当面、安倍総理・自民党と公明党による水面下での駆け引きが繰りひろげていきそうだ。


 今週15日、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会報告書が政府に提出される。安倍総理は、報告書を受け取った後、速やかに記者会見を開き、政府の基本的考え方について国民に説明するようだ。集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更について、安倍総理がどのように説明するのだろうか。
 来週にもはじまる自民党・公明党の協議の行方、6月11日に予定されている党首討論はじめ国会論戦への影響を見極めるためにも、安倍総理の発言に注目しておきたい。
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