政策工房 Public Policy Review

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

カテゴリ: 今週の永田町

先週1日、政府は、臨時閣議を開き、従来の憲法解釈の変更による集団的自衛権行使の限定容認などの新たな安全保障法制整備の基本方針「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」を決定した。

閣議決定に先立って開かれた「安全保障法制の整備に関する与党協議会」での正式合意を踏まえ、自民党・公明党は、それぞれの了承手続きを行った。その後、安倍総理・自民党総裁と山口公明党代表による与党党首会談、国家安全保障会議(日本版NSC)の9大臣会合などが相次いで開催された。自民党総務会では、憲法改正を求めて政府の閣議決定案に反対する所属議員もいたが、野田総務会長が圧倒的多数の賛成を根拠に了承を取り付けた。

 

基本方針では、1972年に政府が参議院決算委員会へ提出した集団的自衛権と憲法との関係に関する資料中の「国民の権利を守るための必要最小限度の武力行使は許容される」を基本論理とし、今後とも維持されなければならないと位置付けている。

そのうえで、集団的自衛権を含む自衛のための措置として憲法上許容される「武力行使の新3要件」として、(1)我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に、(2)これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない時に、(3)必要最小限度の実力を行使すること、としている。そして、「国際法上は集団的自衛権が根拠になる場合がある」と盛り込んだ。政府が3要件に該当すると判断した場合、自衛隊の出動命令を含めた「対処基本方針」などを策定して閣議決定、その後に国会に諮って承認が得られれば、総理大臣が自衛隊出動を命じる。

 このほか、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態や国連決議に基づく多国籍軍支援、国連平和維持活動(PKO)などで自衛隊活動を拡大するための法整備を進めていく方針が示された。PKOに参加する自衛隊が離れた場所の他国部隊や国連職員などを助ける「駆け付け警護」を可能とするための武器使用基準を緩和する方向だ。国連安保理決議に基づく多国籍軍への後方支援では、従来の「非戦闘地域」に限る制約は撤廃することとなった。

 

安倍総理は、閣議決定後の記者会見で「武力行使が許されるのは、自衛のための必要最低限度。現行の憲法解釈の基本的な考え方は今回の閣議決定でも何ら変わるところはない。海外派兵は一般に許されないという従来の原則も全く変わらない」「憲法が許すのはわが国の存立を全うし国民を守るための自衛の措置だけだ。外国の防衛自体を目的とする武力行使は今後も行わない」と断言し、日本が戦後一貫して歩んできた平和国家の歩みは変わることはないことや、日本が再び戦争をする国になるというようなことは断じてあり得ないことを強調した。

また、中国の軍拡や北朝鮮の核・ミサイル開発などで緊迫する東アジア情勢を踏まえ、「万全の備えをすること自体が、日本に戦争を仕掛けようとするたくらみをくじく」抑止力となりうるとも述べた。安倍総理は、年末に日米で策定する「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」再改定による日米同盟の強化により、「日本が戦争に巻き込まれる恐れは一層なくなっていく」との認識だ。

 

1日の閣議決定後、政府は、検討チームを国家安全保障会議(日本版NSC)事務局「国家安全保障局」に設置するなどして、関連法制の整備をスタートさせた。関連法案の全体像を策定する検討チームは、官房副長官補をトップに約30名規模で組織された。内閣府や防衛省など関係府省は、全体像を踏まえ法案化を進めていく。自民党・公明党は、与党協議会を継続して、政府が策定する改正案や集団安全保障措置など残された課題について協議していくとしている。

自衛隊法や武力攻撃事態法、国連平和維持活動協力法など改正案十数本を一括で来年の通常国会に提出、来年4月の統一地方選後に審議入りする方向で検討されているという。また、安倍総理は、9月上旬に予定している内閣改造で安全保障法制を担当する大臣を新設し、同担当大臣を中心に関連法案の国会審議にあたらせる考えを示した。

 

閣議決定に関する集中審議(閉会中審査)が、安倍総理・関係閣僚出席のもと、14日に衆議院予算委員会で、15日に参議院予算委員会で開催される予定だ。集中審議では、自衛権行使における歯止めの実効性、政府が想定する具体的な自衛隊活動など主な焦点になるとみられている。

集中審議をめぐっては、民主党など野党8党は、議論が不十分であることなどを理由に、衆参両院で最短でも2日間ずつの開催を求めている。公明党の山口代表は「国会論議の機会を最大限生かし、政府が野党の皆さんにも丁寧に説明していく必要がある」と述べ、野党側が求める徹底審議に一定の理解も示しているが、自民党は、野党側の要求に応じない構えだ。

 

 

政府内では、来年度予算の編成や成長戦略改訂版などの具体化に向けた作業が進められている。3日、政府は、2015年度予算の概算要求基準の大枠を固めた。7月下旬にも概算要求基準を閣議了解する方針だ。

日本再興戦略・改定版に盛り込まれた地方活性化や中小企業振興、農業分野など重要施策の「特別枠」を4兆円規模とする一方、各省庁が政策判断に応じて柔軟に増減できる「裁量的経費」を今年度予算比で1割程度抑制するよう各府省に求める。歳出抑制を促しつつ、成長戦略の重要施策に重点配分して、メリハリのある予算編成、財政再建と経済成長の両立をめざすという。なお、2015年10月から消費税率10%への引き上げをするか否かについて、年末までに安倍総理が判断することから、今回の概算要求基準では、歳出上限総額を定めないという。

 

(参考)Yahoo!みんなの政治「国の予算ってどうやってつくられるの?(前編)」 

 
 

来週14~15日、政府が閣議決定した新たな安全保障法制整備の基本方針に関する集中審議が予定されている。閣議決定は拙速だったのではないかなどとの批判もあるなか、政府・与党は、今後の国会審議などを通じて国民に丁寧に説明し理解を求めていきたいと述べている。集中審議で、野党各党はどのような質問を行い、安倍総理らはそれにどう答えていくのだろうか。まずは、集中審議での論戦をみておきたい。

 先週6月24日、政府は、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」「日本再興戦略改訂版」「規制改革実施計画」を閣議決定した。

 

 基本方針では、日本経済について「力強さを取り戻しつつある。もはやデフレ状況ではなく、デフレ脱却に向けて着実に前進している」と認識を示したうえで、1)消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減への対応、2)経済の好循環のさらなる拡大と企業の主体的行動、3)日本の未来像に向けた制度・システム改革の実施、4)経済再生と両立する財政健全化、の4点を今後の課題として挙げた。

 好循環に向けた施策として、国と地方を合わせた法人実効税率を来年度から引き下げを開始して数年で20%台とすることのほか、株式持合いの解消や独立社外取締役などのコーポレートガバナンス強化、女性の活躍推進と働き方の改革、国家戦略特区での実施を含めた規制改革の集中実施、イノベーションの促進などが明記された。また、2020年をメドに人口急減・超高齢化に向かう流れを変えるとともに、50年後に1億人程度の安定的な人口構造を維持するためには、東京への一極集中傾向に歯止めをかけるとともに、出産や育児の支援を充実させるなどの総合的な政策が重要と指摘する。

経済再生にあたっては、財政健全化も不可欠として、健全化目標の着実な達成をめざすとしている。消費税率10%への引き上げについては、税制抜本改革法附則18条に則って経済状況などを総合的に勘案し、2014年中に判断する。

 

 成長戦略改定版では、日本経済全体としての生産性を向上させ、「稼ぐ力(収益力)」を取り戻すことを目標に掲げている。基本方針で示した施策の具体策が列挙されたほか、農業・雇用・医療の3分野を中心とした規制改革、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など公的・準公的資金の運用見直し、輸出戦略の推進などが盛り込まれた。

 また、規制改革実施計画では、新成長戦略を実行するため、「健康・医療」「雇用」「創業・IT」「農業」「貿易・投資」の5分野249項目の規制緩和策の内容や実施時期について明記された。保険適用と適用外の治療を併用する混合診療については、「患者申し出療養」(仮称)を創設して拡大する。農業分野では、全国農業協同組合連合会の株式会社化を可能にすることや、農業生産法人への企業の出資比率を現行の25%以下から50%未満に緩和することのほか、全国農業協同組合中央会を頂点とする中央会制度を自律的な新制度に移行する具体像を今年度中に結論を得ることなどが明記された。

 

安倍総理は、24日の記者会見で「日本経済が持つ可能性を開花させるため、いかなる壁も打ち破っていく」「安倍内閣の成長戦略にタブーも聖域もない。あるのはただ一つ。どこまでもやり抜く強い意志だ」と決意を述べた。経済の好循環を力強く回転させるとともに、「成長の主役は地方」と全国津々浦々まで届けることが安倍内閣の使命と強調し、地方の経済構造改革を推進するため「地方創生本部」を新設する意向も明かした。

今後、政府は、成長戦略や規制改革を着実に実行するため、来年度の予算編成や税制改正大綱に反映していくとともに、関連法案を今秋の臨時国会または来年の通常国会に提出することをめざすこととなる。

 

 

 議員1人あたりの人口格差(1票の格差)是正策に向けた参議院選挙区制度改革をめぐっては、参議院各会派でつくる「選挙制度協議会」が26日に開催された。

脇座長(自民党参議院幹事長)は、現行制度を維持しながら議員1人あたりの有権者が少ない隣接選挙区同士をあわせて1選挙区とする合区修正案として、20選挙区を10区に統合する案を再提示した。これにより、人口格差が当初案(2010年の国勢調査ベース)の1.83倍から1.93倍になる。また、人口格差を約2.4倍に緩和して、合区対象をさらに減らす案についても説明した。

これに対し、日本維新の会・結いの党は、現行の比例代表に加え、選挙区を全国11ブロックの大選挙区制に再編して、議員定数を24減らす対案を提示した。

各党は座長修正案を持ち帰って検討することになったが、参議院自民党などには合区そのものに反発しているだけに、今後、協議が進むか微妙な情勢だ。1票の格差を2倍以内に収めるべきか否かが焦点となりそうだ。

 

 

 集団的自衛権行使を限定的に容認に向けた憲法解釈変更などをめぐっては、与党内調整が大詰めを迎えた。

24日に開催された安全保障法制の整備に関する与党協議会で、政府・自民党は、自衛権発動に歯止めを強化するよう求めた公明党に配慮して、自衛権発動の第1要件「わが国に対する武力攻撃が発生したこと、または他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあること」の「おそれ」を「明白な危険」に変更した。「明白な危険」として(1)放置すれば戦禍が日本にも及ぶ蓋然性が高い場合、(2)日本国民に深刻で重大な犠牲を及ぼす場合と定義することとなった。

また、「他国に対する武力攻撃」も「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」と対象を絞ることや、武力行使は「自衛の措置」の場合に限ることの明確化などが図られた。第2要件の武力行使の目的については、「我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと」と修正することとなった。

 

27日の協議会会合で政府が提示した閣議決定最終案を大筋で了承したことを受け、それぞれの党内調整を経て正式合意する最終調整に入った。公明党内では、集団的自衛権の行使容認そのものへの慎重・反対論も相次いだが、30日の関係部会合同会議で集団的自衛権行使を限定容認する方向でとりまとめ、党執行部に対応を一任することが了承された。

 そして7月1日、自民党と公明党は、閣議決定案について協議会会合で正式合意した。党内(自民党は総務会、公明党は中央幹事会)でそれぞれ最終了承のうえ、与党党首会談も開催する。これを受け、政府は、同日中に臨時閣議を開催して、集団的自衛権の行使容認などを含む憲法解釈の変更について決定する。閣議決定後、安倍総理は記者会見を行い、憲法解釈変更の意義や今後の取り組みなどについて説明し、国民に理解を求めるという。今後、政府は、与党合意や閣議決定を踏まえ、今秋の臨時国会以降に具体的な安全保障の法整備に取り組んでいく方針だ。

 

26日、野党8党の幹事長・国会対策委員長が会談し、憲法解釈の変更に関する閣議決定について、衆参両院の予算委員会で閉会中審査を行うよう与党に求める方針で一致した。その後、松原・民主党国対委員長が佐藤・自民党国対委員長に、衆参両院の予算委員会を開催するよう要求した。佐藤国対委員長は、7月14~15日に、安倍総理・関係閣僚出席の下、衆参両院で1日ずつ閉会中審査に応じる意向を示した。これに対し、松原国対委員長は、衆参両院で2日ずつ開催するよう求めたため、今後、与野党間で日程を調整していくこととなった。

 

 

 基本方針や成長戦略改訂版などが策定され、集団的自衛権の行使容認などを含む憲法解釈の変更について7月1日に閣議決定される。これにより、安倍内閣として大きな節目を迎えたといっていいだろう。安倍総理は、9月上旬にも内閣改造と9月末に任期満了を迎える自民党役員人事を断行する考えだ。内閣改造でどのような布陣になるかも含め、安倍総理が進める経済・財政政策や安全保障政策をどのように具体化、実行していくのかについて注視していくことが重要だろう。
 

 先週20日、1月24日に召集された第186通常国会が、会期末の22日を前に事実上、閉会した。

 

 石原環境大臣が、東京電力福島第一原発事故の除染で出た汚染土などを保管する中間貯蔵施設建設をめぐる被災地との交渉に絡み、「最後は金目でしょ」と発言した。その後、石原大臣は、19日の参院環境委員会で「用地補償、生活再建、地域振興策の規模を示すことが重要な課題になってくるということを申し上げた。お金ですべて解決するというような意図ではない」と釈明したうえで、「品位を欠き、誤解を招く表現だった」と陳謝して発言を撤回する。野党側が求めた自発的辞任については拒否した。このため、野党側は「きわめて不適切な発言」「大臣としての資質に欠ける」などと批判して、19日に石原大臣の問責決議案を、20日に不信任決議案をそれぞれ共同提出するに至った。

 また、野党が石原大臣の両決議案を提出したことに反発して、与党は、20日に予定されていた衆議院環境委員会での石原大臣に対する質疑を中止した。伊藤・衆議院環境委員長(自民党)の議事運営に抗議して、野党は、環境委員長の解任決議案を衆議院に提出した。

 石原大臣の不信任決議案および問責決議案、環境委員長の解任決議案は、それぞれ20日の衆参両院本会議で与党の反対多数により否決された。

 

*衆参両院の本会議や委員会での審議模様は以下のページからご覧になれます。

 衆議院インターネット審議中継:http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php

 参議院インターネット審議中継:http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

 

 昨年の臨時国会で成立した特定秘密保護法にもとづいて、政府の秘密指定・解除の運用状況や指定妥当性を監視する「情報監視審査会」(仮称)を衆参各院に設置して政府の特定秘密の適否を審査・審議することや、政府に運用改善を求める勧告権の付与、漏えいした国会議員への懲罰などについて盛り込んだ「改正国会法」は、20日の参議院本会議で与党やみんなの党などの賛成多数により可決・成立した。衆議院で賛成した日本維新の会と結い両党は、審議が尽くされていないなどとして採決を棄権した。

 それに先立って行われた参議院議員運営委員会の採決をめぐっては、民主党などが「審査会の活動にあいまいな点が多く、議論がまだ不十分」と、審議続行を要求して採決を急ぐ与党側を牽制した。しかし、与党が採決を強行したため、野党は、岩城・参議院議院運営委員長(自民党)の解任決議案を提出する。解任決議案は、20日の衆参両院本会議で与党の反対多数により否決された。

 

 昨年12月に成立した社会保障制度改革の実施スケジュールを定めたプログラム法の内容を具体化する第一弾として、在宅医療推進のための改正医療法や介護保険サービスの負担増につながる改正介護保険法など法律19本を一括りに、地域医療と介護保険制度を一体で見直す「医療・介護総合推進法」が、18日の参議院本会議で与党の賛成多数により可決・成立した。

 民主党など野党は、負担増や介護サービス低下につながると反発したほか、医療・介護分野の法改正を一括して国会審議を求めたことに「多数の法案を一括審議する国会運営は乱暴。丁寧な議論の場もなく審議不十分」「十分な審議もなくすべて成立させることをねらった国会対策」などと強く批判した。衆議院で与党が強行採決を行ったことに加え、参議院本会議で審議入りした際に厚生労働省が議員に配布した趣旨説明の資料にミスが発覚したことなどに反発した。全野党が反対に回る事態のなか、参議院での審議入りが遅れるというアクシデントもあったが、成立に至った。

 

 このほか、20日の参議院本会議で可決・成立した政府提出法案は、改正会社法のほか、国立大学改革を学長主導で進める改正学校教育法・国立大学法人法などの5本だ。社外取締役の設置を促す改正会社法では、社外取締役を設置しない場合に株主総会で理由を説明しなければならないと明記されたほか、付則で法施行から2年後の状況をみて設置の義務化を検討するとなっている。

 

 政府が通常国会で新規提出した法案81本のうち79本が成立した(成立率97.5%)。衆参のねじれが解消したことに加え、高支持率を推移する安倍内閣に対して野党各党の足並みがそろわなかったため、終始、政府・与党ペースで法案処理が進んでいった。

 審議未了で廃案となった政府提出法案は、派遣労働者を企業が受け入れる期間の上限(最長3年)を事実上撤廃することを柱とした労働者派遣法改正案など2本だ。派遣会社の事業主に対する同法案の罰則規定が「1年以下の懲役」とすべきところを「1年以上の懲役」と誤記するミスが判明した。これに野党が「法案自体を出し直すべき」と反発したため、審議入りのメドが立たないままとなっていた。政府・与党は、秋の臨時国会に改めて提出する構えだ。

 

 

 国会議員の定数削減を含む衆議院選挙制度改革をめぐっては、19日に開かれた衆議院議院運営委員会で、地方自治体の首長や学識経験者ら15人程度で構成する第三者機関「衆院選挙制度に関する調査会」の設置を共産党を除く与野党の賛成多数により決定した。第三者機関を伊吹衆議院議長の諮問機関とし、諮問事項は議員定数の削減や1票の格差是正策、選挙制度の問題点などについてとなった。伊吹議長は、改革内容に溝がある与野党の主張にも配慮しつつ、赤松副議長とともに調査会メンバーの人選を進め、7月中に終える方向で進めていくという。

 

 

 17日と20日に開かれた集団的自衛権行使を限定的に容認に向けた憲法解釈変更などについて協議する与党の「安全保障法制の整備に関する与党協議会」で、政府は、自民党・公明党に閣議決定原案を正式に提示した。

 原案は、(1)有事に至らないグレーゾーン事態「武力攻撃に至らない侵害への対処」、(2)多国籍軍への後方支援拡大や武器使用など、国連平和維持活動を含む「国際社会の平和と安定への一層の貢献」、(3)集団的自衛権の行使を含む「憲法第9条の下で許容される自衛の措置」、(4)「今後の国内法整備の進め方」で構成されており、これらを踏まえて国内法整備に取り組む方針を示した。自民党と公明党が協議中の(3)については、前回13日の協議会会合で高村座長が示した「自衛権発動の新3要件」案をとりいれたうえで、新3要件に基づく武力行使は「国際法上は集団的自衛権にあたる」と明記されていたという。ただ、公明党が新3要件に関する意見集約に入っていないことから、17日の協議会会合では具体的な議論は見送られた。

 このほか、政府が集団的自衛権の行使を容認するよう求めている、中東ペルシャ湾などを念頭に置いた「戦争中の海上交通路(シーレーン)での機雷除去」について議論された。集団的自衛権の行使が必要と主張する政府・自民党に対し、公明党は「集団的自衛権ではなく警察権でできる」と主張しため、平行線をたどった。

 

 公明党は、発動の第1要件「わが国に対する武力攻撃が発生したこと、または他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあること」としていることについて、拡大解釈の余地が大きいとして、「切迫した危険」などより限定的な文言にするよう求める方針だ。また、「他国に対する武力攻撃」も「密接な関係にある他国」と限定すべきとしている。こうした公明党の修正要求に、政府・自民党は前向きに応じる方針だ。

 ただ、政府が提示したシーレーンの機雷除去を含む8事例すべての行使容認が必要というスタンスは崩さない方針を示している。さらに、政府・自民党は、20日の協議会会合で「集団的自衛権で自衛隊が機雷除去をしている時に国連決議が出て、集団安全保障になったからやめるというのはおかしい」と提起して、国際連合の集団安保による武力行使も可能と閣議決定案に明記したい旨を公明党に提案し、ハードルをさらに上げた格好だ。

 集団安保での武力行使は、自衛以外の目的でも海外での武力行使を解禁することを意味するだけに、自衛隊による海外での武力行使が際限なく広がるとして、公明党は強く反発した。このため、公明党への配慮や、集団的自衛権の憲法解釈見直しに関する合意を優先すべく、シーレーンでの自衛隊による機雷除去活動を国連の集団安全保障措置として認めるか否かについての結論を先送りする方向で調整している。

 

 集団的自衛権の行使容認をめぐる政府・自民党と公明党の攻防は、大詰めを迎えている。24日に開催される協議会会合では、最終的な閣議決定文案が示される予定で、文言修正など詰めの作業を行うこととなっている。

 政府・自民党は、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更を含む安全保障法制整備に関する閣議決定案について、今週中にも公明党と合意したい考えだ。協議が調えば、安倍総理・自民党総裁と山口公明党代表による党首会談で正式合意のうえ、7月1日の閣議で決定することをめざしている。安倍総理は、7月6~12日に安全保障協力を深めるオーストラリアなど3カ国を訪問する予定で、遅くともその直前の定例閣議(7月4日)までには決定したいとしている。

 ただ、公明党内では、依然、集団的自衛権の行使容認そのものに慎重・反対論があり、意見集約が難航している。このことから、与党合意が来週以降に先送りされる可能性もありそうだ。

 

 

 集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更などの閣議決定案について、今週中の与党合意・7月1日の閣議決定を視野に、最終調整が加速している。閣議決定後には、野党側の求めに応じて閉会中審査を開催して、与野党の議論を行うこととなるだろう。大きなヤマ場を迎えているだけに、政府・自民党と公明党による水面下の駆け引きも含め、どのように合意形成を図るかきめ細かくみておいたほうがいいだろう。

 先週13日、改憲に必要な国民投票年齢を施行4年後に現行の20歳以上から18歳以上へ引き下げることなどを定めた「改正国民投票法」が、共産党と社民党をのぞく与野党8党の賛成多数により可決・成立した。改正案に賛成の民主党が、安倍総理が意欲をみせる集団的自衛権行使の憲法解釈見直しをけん制するねらいから、9日の参議院憲法審査会幹事懇談会で、採決の条件として「憲法の解釈変更は行わない」などとする付帯決議の採択を求めた。当初、与党側は民主党の要求を突っぱねたが、11日の参議院憲法審査会での採決に先立ち、政府が憲法解釈を「変更することが許されないことではない」としつつ、「政府が憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことがあれば、政府の解釈、憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねない」と、政府の自由な憲法解釈変更を牽制するとともに、国会審議の充実を求める付帯決議を採択することとなった。月内の公布と同時に施行される見通しだ。

 

 2007年5月に成立した現行法では、国民投票の年齢を「18歳以上」と規定しつつも、付則で公職選挙法の定める選挙権年齢や民法の成人年齢も「18歳以上」に引き下げるよう盛り込まれていた。しかし、与野党の対立で議論が進まず、国民投票を実施することができない状況となっていた。今回の改正では、選挙権年齢引き下げをめざすことで与野党8党が合意し、「2年以内を目途に必要な法制上の措置を講ずる」こととなった。通常国会中にも与野党8党によるプロジェクトチームを発足させる予定だ。プロジェクトチームでは、選挙権年齢の引き下げのほか、検討課題となっている組織的運動の規制や、国民投票法の対象拡大についても検討されるという。

 

 また、改正国民投票法の成立を受け、憲法改正に向けた動きも出始めている。改憲案の国会発議には衆参両院それぞれ3分の2以上の賛成が必要で、今回の改正法では、衆参両院で3分の2以上の賛成を得て成立した。このため、自民党など改憲をめざす勢力は、具体的な改憲論議を本格化させ、今後の憲法改正論議に弾みがつけたい考えだ。

 自民党は、1回目の憲法改正発議は、3分の2以上の8党で合意できそうな条文を選定し、憲法改正の実績を2年前後でつくることをめざしている。具体的には、「環境権」や「プライバシー権」のほか、大災害など有事において総理の権限を一時的に強める「緊急事態条項」の新設などが挙がっている。自民党は、今週中にも会合を開いて、どの条文から変えるべきかなどについて所属議員の意見をヒアリングする予定だという。ただ、与野党8党は、改憲へのスタンスや重視する点で違いもあるだけに、具体的な改正項目で一致できるかはいまのところ不透明だ。今後、憲法論議をめぐって与野党の駆け引きが続くかもしれない。

 

 このほか、大手電力会社の地域独占体制を撤廃するため、2016年をメドに電力の小売り事業を全面自由化する「改正電気事業法」が、11日の参議院本会議で与党などの賛成多数により可決・成立した。13日の参議院本会議では、教育行政に対する自治体首長の権限を強化する「改正地方教育行政法」などが与党などの賛成多数により可決・成立している。

 

*衆参両院の本会議や委員会での審議模様は以下のページからご覧になれます。

 衆議院TVビデオライブラリ:http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php

 参議院インターネット審議中継:http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

 

 昨年の臨時国会で成立した特定秘密保護法にもとづいて、政府の秘密指定・解除の運用状況や指定妥当性を監視する「情報監視審査会」(仮称)を衆参各院に設置して政府の特定秘密の適否を審査・審議することや、政府に運用改善を求める勧告権の付与、漏えいした国会議員への懲罰などについて盛り込んだ「国会法改正案」が、10日、衆議院議院運営委員会で趣旨説明が行われ、審議入りした。民主党・日本維新の会・結いの党は、与党改正案の対案を衆議院に共同提出した。衆議院または参議院の議長が提出を求めた場合、「第三者に提供しない前提で入手した情報や情報源に関する情報」を除き、政府が情報提供に応じるよう義務付ける内容となっている。同改正案も、与党案とともに10に審議入りした。

 

 与党案と野党3党の対案は、12日の衆議院議院運営委員会で採決された。与党案は与野党5党の賛成多数により可決したが、野党3党の対案は賛成少数で否決された。日本維新の会と結いの党は、情報提供の義務づけ以外はほぼ与党案に賛同できるとして両案に賛成した。与党案は、13日の衆議院本会議でも与野党5党の賛成多数により可決し、参議院に送付された。通常国会会期末(6月22日)までの審議日程が窮屈な状況となってきていることから、与党は、20日にも参議院で可決・成立させるべく成立に全力を挙げる方針だ。

 一方、共産党・社民党などが16日、特定秘密保護法を廃止するための法案を、参議院に共同提出した。民主党などに賛同を呼び掛ける方針でいる。

 

 

 国会議員の定数削減を含む衆議院選挙制度改革をめぐっては、12日に開かれた衆議院議院運営委員会理事会で、民主党が有識者で構成する第三者機関の有識者人選を伊吹衆議院議長に一任することを認めた。赤松副議長(民主党)が伊吹議長とともに人選にあたることとなったため、与党側の提案を受け入れた。これにより、定数削減に反対している共産党と社民党を除く与野党各党が伊吹議長に第三者機関の人選を一任することで足並みをそろえることとなった。

 13日に開かれた議員運営委員会理事会で、20日に開催される議院運営委員会で人数や諮問事項など第三者機関の要綱案を議決し、正式に発足させることが確認された。伊吹議長は、機関設置が議決された後、改革内容に溝がある与野党の主張にも配慮しつつ、人選を進めるようだ。

 

 

 集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更などについて協議する自民党と公明党の「安全保障法制の整備に関する与党協議会」が10日に開催され、集団的自衛権の行使をめぐる議論を行った。集団的自衛権でないと対応できないケースがあると主張する政府・自民党と、個別的自衛権や警察権などの拡大で対応可能と主張する公明党の間で、議論は平行線に終わった。

 高村座長(自民党副総裁)は、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更を含む閣議決定について「今国会中の閣議決定には、次回の会合に案文を出してもらわないと日程的に間に合わない」と述べ、13日の次回会合で閣議決定案文原案を提出するよう政府側に要請した。自民党は、20日に閣議決定を想定リミットと位置付けている。これに対し、北側座長代理(公明党副代表)は「党内的にまとめるのはかなり困難」と難色を示した。

 

 11日に行われた党首討論では、集団的自衛権の行使容認をめぐる論戦が中心となった。海江田・民主党代表は「会期内の閣議決定は拙速だ。正々堂々と憲法改正の発議をすべきだ」と政府・与党の手法を批判した。しかし、安倍総理から明確な答弁を引き出すことができず、議論の大半はすれ違ったままだった。一方、安倍総理は、行使容認に理解を示す日本維新の会、みんなの党について「こういう立場こそ政治家の責任だ」と持ち上げた。与党協議で慎重姿勢を崩してこなかった公明党にプレッシャーを与えるねらいがあったようだ。

 これまで行使容認に慎重姿勢を崩してこなかった公明党は、海外での武力行使を「国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される急迫、不正の事態」への対処に限定することで、集団的自衛権の行使を一部容認する方針へと転換した。一部容認の前提として、安倍総理が示した「わが国の存立を全うするための必要最小限度」が、政府・自民党が説明する条件では際限がなくなりかねないとして、より限定した歯止めを求めていくこととしたのである。

 

 公明党が歩み寄りの姿勢をみせたことを受け、政府・自民党は、憲法解釈変更の閣議決定時期を通常国会会期末から短期間先送りする方向で調整に入った。また、閣議決定文案は公明党に配慮して17日の会合で提示することとなった。

 13日の会合では、高村座長が自衛権発動の「新3要件」私案を提示した。現行の発動3要件の第1要件「わが国に対する急迫不正の侵害があること」を、他国に対する武力攻撃が発生したことで「わが国に対する武力攻撃が発生したこと、または他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがある」場合は武力行使が認められると修正する内容だ。これに対し、公明党は、集団的自衛権の行使容認の幅を限定する修正を要求していく方針だ。

 

 いまもなお、閣議決定原案をめぐって与党の激しい駆け引きは続いている。政府・自民党には、必要最小限度の基準をあいまいにして、シーレーン(海上交通路)の機雷除去や強制的な船舶検査なども対象に含めるとともに、将来的に武力行使の幅をひろげたい思惑がある。一方、公明党内には、容認に傾きつつあるものの、集団的自衛権の行使容認そのものへの慎重論もいまだ根強い。このことから、閣議決定まで与党内のギリギリの攻防が続いていきそうだ。

 

 

 政府・与党は、通常国会を延長しない方針を固めており、今週20日には事実上閉幕する。与党は、残った議案の審議・採決を粛々と進めていくようだ。

 その一方で、来週にかけ、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更など閣議決定文案の最終調整、今月発表予定の成長戦略の策定などが進められていく。このような重要局面にあるだけに、政府・与党の動向を中心に決め細かくみていくことが大切だ。
 

 

 先週5日、ブリュッセルの欧州連合本部で開かれた先進7カ国首脳会議で、安倍総理は「成長志向型の構造に改革するため、さらなる法人税改革を進めていく」と、国際競争力に打ち勝つ観点や、2020年の財政健全化目標の実現に向けて着実に取り組みつつ、法人税の実効税率引き上げを含む成長志向で税制改革に取り組む決意を表明した。また、電力・医療・農業分野などの規制改革、新たな労働時間制度、外国人労働者の活用などの成長戦略や、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人改革などを進めていく意向も示した。

 

 それに先立つ3日、自民党は、税制調査会(野田毅会長)の正副会長会合を開き、法人税改革の提言をとりまとめた。提言では、法人税の実効税率引き下げを容認する一方、その前提として外形標準課税(地方税)などの拡充を念頭に一部の黒字企業に偏っている税負担を赤字企業にも広く求めるような課税ベースの拡大、減税に見合う恒久の代替財源の確保などが不可欠と強調している。当初、自民党税制調査会や財務省は、財政健全化の観点から法人税の実効税率引き下げに慎重だったが、安倍総理の強い意向を受け、条件付き容認で歩み寄る格好となった。

 

 これにより、政府・与党は、来年度からの法人税の実効税率引き下げを実施する方針を固めた。政府・与党で調整のうえ、今月末に策定・決定する経済財政運営の基本方針「骨太の方針」に明記する。具体策については、年末の税制改正論議で最終的に決定することとなるという。

 甘利・経済財政担当大臣は、法人税の実効税率引き下げを「5年程度で20%台」という数値目標を主張しているものの、引き下げ幅と期間についてどのようにするかはいまだ曖昧のままだ。また、代替財源をめぐっても、政府・与党内で異なる見解が示されており、調整がついていない。骨太の方針にどこまで盛り込むかをめぐり、政府・与党内の綱引きが激しくなっていくだろう。

 

*衆参両院の本会議や委員会での審議模様は以下のページからご覧になれます。

 衆議院TVビデオライブラリ:http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php

 参議院インターネット審議中継:http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

 

 施行4年後、改憲に必要な国民投票年齢を現行の20歳以上から18歳以上へ引き下げることなどを定めた国民投票法改正案については、11日の参議院憲法審査会で採決することとなった。与野党7党と新党改革などの賛成多数により可決・成立する見通しだ。同法案の成立に見通しがたったことを受け、改正案を共同提出した与野党7党は、公職選挙法の選挙権年齢を18歳以上に引き下げについて検討するプロジェクトチームの初会合を、通常国会の会期末までに開催するという。

 

 

 昨年の臨時国会で成立した特定秘密保護法にもとづく政府の秘密指定・解除の運用状況や指定妥当性を監視する国会の監視機関について、4日、与党と民主党が実務者協議を行った。与党は、衆参各院に「情報監視審査会」(仮称)を設置して政府の特定秘密の適否を審査・審議することや、政府に運用改善を求める勧告権の付与、漏えいした国会議員への懲罰などを盛り込んだ「国会法改正案」への協力を求めた。これに対し、民主党は、国会が記録提出を要求しても「国家の重大な利益に悪影響を及ぼす」と政府が判断すれば特定秘密の提供を拒否できるとの規定が与党案に盛り込まれているとして、「政府が提供を拒否する理由が限りなく広がる」などと批判した。

 民主党は、与党が提出した国会法改正案の対案をとりまとめており、国会提出する方針だ。民主党案は、衆議院もしくは参議院の議長が提出を求めた場合、「第三者に提供しない前提で入手した情報や情報源に関する情報」を除いて、政府が情報提供に応じるよう義務付ける内容になるという。

 

 

 議員1人あたりの人口格差(1票の格差)是正策に向けた参議院選挙区制度改革をめぐっては、現行制度を維持しながら議員1人あたりの有権者が少ない隣接選挙区同士をあわせて1選挙区とする合区案(22選挙区を11選挙区に統合)に、足元の参議院自民党も含め、多くの政党が反対・慎重論を唱えている。このことから、参議院各会派でつくる「選挙制度協議会」の脇座長(自民党参議院幹事長)は、合区対象選挙区を20選挙区を10区に合区する案と、10選挙区を5区に合区する案を加えた3案を、7月26日に予定される次回会合で再提示して、各党に検討を求める方針だ。当初案では、人口格差が約1.83倍だったの対し、再提示予定の修正案では2.5倍前後にひろがるという。

 ただ、参議院自民党などには合区そのものに反発する声も根強いだけに、いずれの案も受け入れらないまま、協議が進展しない可能性もありそうだ。自民党は、プロジェクトチームを近く設置して、1~2カ月かけて独自の改革案をとりまとめるという。

 

 

 集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更などについて協議する自民党と公明党の「安全保障法制の整備に関する与党協議会」が、3日と6日に開催された。協議を加速させたい自民党は、議論の時間を確保するとともに、会合の開催頻度を増やすよう、3日の協議会会合で打診した。自民党の提案に公明党も応じ、協議会会合の開催ペースは、原則、週2回程度となった。

 

 政府が示す法整備などの対応が必要な15事例のうち、有事に至らないグレーゾーン事態については、公明党が、グレーゾーン事態のうち「漁民を装った武装集団の離島上陸などへの対処」「公海上で海賊などに襲われている日本船舶に訓練中の海上自衛隊の艦船が遭遇した局面での対処」の2事例について、現行法の運用改善にとどめて大筋容認する方向で調整してきた。政府は、自衛隊が治安出動や海上警備行動の発令手続きを迅速化すべく、3日の協議会会合で、(1)あらかじめ閣議決定し、自衛隊が迅速に対処できるよう海上警備行動を発令しておくこと、(2)閣議決定を閣僚が電話で済ませられるよう手続きを簡素化する案を提示した。ただ、政府・自民党が自衛隊法改正による武器使用基準の見直しなどについて否定しなかったため、公明党は回答を見送った。

 6日の協議会会合では、自民党が公明党に歩み寄り、当面は警察・海上保安庁・海上自衛隊の連携強化や発令手続き迅速化など現行法内での運用改善で合意に至った。新たな法整備については、今後の研究課題とした。

 グレーゾーン事態の「平時の弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護」については、政府が自衛隊の装備を防護する自衛隊法の条項を見直し、自衛隊と共同で活動する米艦を防護対象に加える案を示したが、公明党は回答を留保した。

 

 国際協力分野の「侵略行為を制裁する多国籍軍の武力行使への支援」については、3日の協議会会合で、政府が、国際連合・安全保障理事会決議にもとづく国際協力活動が柔軟に対応できるよう、戦闘地域であっても条件をクリアすれば、多国籍軍に対する自衛隊の後方支援(物資輸送、補給など)を認める新基準案を提示した。

 これまで自衛隊の後方支援は、可能領域を個別法で「非戦闘地域」に限定されてきた。新基準では、(1)支援先が現に戦闘を行っている他国部隊、(2)戦闘行為に直接用いられる物品・役務の提供、(3)支援する他国部隊が現に戦闘を行う現場での提供、(4)支援が他国部隊の個々の戦闘行為と密接に関係すること、のすべてに該当すれば、日本国憲法第9条が禁じている「他国の武力行使との一体化」となり、後方支援は認められないとしている。地理的制限を設けず、憲法に抵触する基準を定めることで、戦闘地域での輸送支援や人道色の強い医療支援などを解禁したい考えだ。

 しかし、公明党は、非戦闘地域の撤廃は現行解釈を踏まえたものとして理解を示しつつも、「戦闘地域での戦闘行為以外は何でもできるようになる」と反発した。このため、6日の協議会会合では、4条件を撤回したうえで、(1)現に戦闘がおこなわれている地域では支援しない、(2)支援地域が戦闘状態になった場合は直ちに撤退する、(3)人道的な捜索・救助活動は例外とする、との修正新基準を再提示した。非戦闘地域の概念を取らず、後方支援可能な対象を厳格化したものだ。公明党は、戦闘中の後方支援はしないことが明確になったとして、新基準に一定の理解を示した。

 

 グレーゾーン事態の3事例と国際協力分野の4事例の論点がほぼ出そろい、残る武力行使活動の8事例の本格的な議論が今週から開始する。年末の日米防衛協力の指針(ガイドライン)の改訂に間に合わせたい安倍総理はじめ官邸は、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の見直しを含め、通常国会中にも閣議決定する方向で準備を進めている。それに呼応して、高村・協議会座長(自民党副総裁)が、6日の協議会で「政府が考える閣議決定、政府方針をいつでも出せるよう準備してほしい」と、政府側に閣議決定の原案を策定するよう要請した。

 政府は、与党側と集団的自衛権の行使を認める文言調整を急いでいる。また、行使容認に慎重な公明党の理解を得るため、「自衛隊を他国の領域に原則として派遣しない」「国会の関与」といった集団的自衛権の行使に一定の制限を設け、その手続きなどについて示した「指針」策定も進めているという。20日にも閣議決定を行う案が政府内で浮上しており、自民党と公明党の駆け引きは、大きなヤマ場を迎えそうだ。

 

 

 今週11日には、党首討論が行われる。党首討論では、集団的自衛権の行使容認をはじめとする安全保障政策のほか、成長戦略、労働・雇用問題などが争点になるとみられている。

 民主党・日本維新の会・みんなの党の党首たちが安倍総理にどのような論戦をしかけ、安倍総理からどのような言質をとるのだろうか。安倍総理の発言次第では、集団的自衛権の行使容認をめぐる与党協議や終盤国会の行方に影響を与える可能性もある。一方、党首討論が不発に終われば、海江田・民主党代表おろしなど野党再編の動きが加速するかもしれない。

 こうした点も踏まえ、会期末まで残り2週間をきったなかで実施される党首討論をウォッチしておきたい。

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