政策工房 Public Policy Review

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

カテゴリ: 今週の永田町

 先週19日、政府は持ち回り閣議で、今月29日に臨時国会を召集することを決定した。そして、同日、衆参両院の議院運営委員会理事会に菅官房長官が出席して、29日の国会召集を正式に伝えた。臨時国会の会期を11月30日までの63日間とし、召集日29日に安倍総理が所信表明演説を、翌30日~10月2日に衆参両院本会議で各党代表質問を行う案を示したという。
 当初、政府・与党は、12月6日までの69日間で調整していたが、来年度度予算編成のほか、2015年10月に消費税率10%へ引き上げるかどうかの判断を12月上旬に行うことなどを考慮して、日程上の余裕を持たせる判断をしたようだ。

 

 

 政府は18日、地方創生の観点から、8月末までに各府省が提出した来年度の予算概算要求を全般的に見直す方針を決めた。概算要求は、第2次安倍改造内閣発足後の人口減少対策や地域活性化策に関する方針が明確に反映されていないことや、複数の省が類似事業への予算要求、バラマキへの懸念なども指摘されている。このことから、政府は、省庁横断的に地域振興策を策定する「まち・ひと・しごと創生本部」(本部長:安倍総理、副本部長:菅官房長官、石破地方創生担当大臣)で12日に決定した基本方針に基づき、地方創生などに重点配分する「新しい日本のための優先課題推進枠」(約3.8兆円)を中心に概算要求を見直すこととした。予算のムダ排除や効果性の高い政策への重点配分などの予算精査を要求官庁に要請し、必要に応じて再提出も求めるという。

 

 19日には、地方創生策について関係閣僚が有識者と意見交換するため、創生本部の下に発足した「まち・ひと・しごと創生会議」(議長:安倍総理)の初会合が開催された。会合では、有識者から人口減少の抑制や東京一極集中の是正のため、企業経営に精通した人材を地方に呼び込むしくみや、地方の雇用対策、地方大学の魅力向上策などの意見が出された。石破地方創生担当大臣は、これまでの地域活性化策や少子化対策について検証するチームを創生本部事務局に設ける意向を示した。創生会議メンバーの有識者らを招いて、省庁間の縦割りなどの問題点などを洗い出すほか、自治体関係者からもヒアリングを行っていくという。

 10月に有識者会議で論点整理を行い、創生本部がそれをもとに50年後に人口1億人程度を維持するための「長期ビジョン」と、今後5年間に実施する「総合戦略」を年内に取りまとめて決定する予定だ。予算査定基準となる総合戦略づくりが開始されたが、今後、予算獲得を狙う各省との綱引きが展開されていくこととなりそうだ。

 

 

消費税率10%への引き上げ判断について、菅官房長官は、20日、消費税率8%への引き上げで後退した景気の回復状況について示す「7~9月期国内総生産(GDP)2次速報値」<12月8日発表予定>を見極めたうえで、安倍総理が12月上旬にも最終判断するとの見通しを示した。11月17日発表の7~9月期GDP速報値を待たずに、マクロ経済分析の専門家など有識者による集中点検会合を開始して、消費税率引き上げ時の必要な処方箋も含め、再増税の是非について徹底的な議論を重ねていくという。

 

安倍総理は、「引き続きデフレ脱却を目指し、経済最優先で取り組んでいく」と重ねて表明し、「増税により景気が悪化し、税収もままならなくなるようでは元も子もない。7~9月期に経済がどの程度回復軌道に乗るか、注意深く見ていく必要がある」と慎重に見極めて判断する姿勢をとっている。

ただ、政府・与党内からは、予定通りの消費税率を10%に引き上げるべきとの声が上がり始めている。谷垣自民党幹事長が、来年10月の消費税率引き上げは既定路線であり、必要な経済対策を講じたうえで実施すべきとの認識を示したほか、麻生副総理兼財務大臣らも再増税に積極的な立場をとっている。財政制度等審議会財政制度分科会で、消費税引き上げは不可避との前提にたって、2015年度に国・地方の基礎的財政収支赤字を対GDP比で2010年度から半減させるなどの財政再建目標を順守すべきとの声が委員から相次いだ。消費税率引き上げ時には大型補正予算を編成し、来年の通常国会で成立をめざすことが、政府・与党内で検討されているようだ。

 消費税率10%への引き上げ是非は、臨時国会で主要争点の一つになる見通しで、政府・与党関係者の動向のほか、与野党論戦も注視していくことが大切だ。

 

 

 来週には臨時国会が召集される。29日には安倍総理の所信表明演説が行われる。安倍総理は、デフレ脱却と経済再生への道筋を示すことを最優先で取り組む決意を改めて示しており、臨時国会を「地方創生国会」と位置付ける。人口減少・地方対策を進める地方創生関連法案の処理を最優先で取り組んでいく方針だ。こうした点も踏まえ、安倍総理が所信表明演説でどのようなことを語るのかについて見定めることが重要だろう。
 

今週16日、安倍総理は政府与党協議会で、国際連合総会出席(9月21~27日)後の29日に臨時国会を召集する方針を示した。政府・与党で調整のうえ、19日に衆参両院の議院運営委員会を開催し、召集日を決定する見通しだ。臨時国会の会期は、12月6日までの69日間で調整しているという。

 

 消費税率10%への引き上げを2015年10月に予定通り実施するか否かについての年末の判断を前に経済再生への道筋を示すべく、第2次安倍改造内閣が最重要課題として掲げる「地方創生」と「女性活躍」の推進法案を臨時国会に提出予定だ。

官邸と与党は、地方創生関連法案の早期成立を図るべく、関連法案を審議する特別委員会を衆参両院に設置する方針を固めた。また、自民党は、「地方創生」や「女性活躍」に係る政策を検討する総裁直属の実行本部を党内に設置する予定だ。19日の総務会で正式決定する。本部長は、地方創生に河村建夫前党選対委員長、女性活躍に上川陽子元少子化担当大臣を充てるという。

 

 地方創生では、9日、安倍総理が石破地方創生担当大臣と会談し、省庁横断的に地域振興策を策定する「まち・ひと・しごと創生本部」(本部長:安倍総理、副本部長:菅官房長官、石破地方創生担当大臣)の基本方針を指示した。また、12日には、全閣僚が出席してまち・ひと・しごと創生本部の初会合を開催し、50年後に人口1億人程度を維持するための「長期ビジョン」と、今後5年間に実施する「総合戦略」を年内にも取りまとめることなどを盛り込んだ基本方針を決定した。

 基本方針では、「地方が成長する活力を取り戻し、人口減少を克服する」との目標を設定するとともに、「若い世代が就労・結婚・子育てを希望通りにできる環境づくり」「東京一極集中の歯止め」「過疎や高齢化など地域の特性に即した課題解決」などを基本的視点に据え、「従来とは次元の異なる大胆な政策を実行する」と明記した。歳出・税制・地方交付税・社会保障制度の改革などを検討していく予定だ。また、地域の個性を生かした取り組みを政府一丸となって後押しする姿勢を明確にするため、各省庁の類似事業を統合して窓口を一元化するワンストップ型の政策展開を進めるなど「各府省の縦割りを断固排除」や、国・地方の協議や自治体間の連携体制の構築などが盛り込まれている。さらに、国の財政支援策などがバラマキ型に陥らないよう、地方創生担当大臣による総合調整と一元的な政策実施を担保し、短期・中長期の政策目標を具体的に設定して政策効果を厳しく検証するとしている。 

 

 創生本部は、基本方針や、近く創生本部の下に発足する有識者会議「まち・ひと・しごと創生会議」の議論などを踏まえ、東京一極集中の是正や地域再生に向けた今後5年間の総合戦略の策定作業を本格化させる。まち・ひと・しごと創生会議のメンバーには、伊東香織岡山県倉敷市長、坂根正弘コマツ相談役、冨山和彦経営共創基盤代表取締役CEO、増田寛也元総務大臣、樋口美雄慶応義塾大学教授ら12人が内定した。

 地方関連事業の総点検や、各府省にまたがる地方創生関連事業の総合調整などは、副本部長の石破地方創生担当大臣が担う。政府は、まち・ひと・しごと創生本部が司令塔として機能させるため、現在70人規模態勢の事務局を、総務省や国土交通省、農林水産省などのほか、民間からの起用も視野に人員を拡充するほか、地域ブロック別チームを設置する方向で調整が進められている。また、石破大臣は、今年4月に成立した国家公務員制度改革関連法で新設が可能になった大臣補佐官に、伊藤達也元金融担当大臣を9日付で任命した。

 臨時国会には、まち・ひと・しごと創生本部を司令塔として法制化し、国が地方を支援する基本理念を示した基本法案のほか、まちおこしに取り組む自治体の意向を反映しやすくする地域再生法改正案などの関連法案も提出する予定だという。

 

女性活躍の推進については、有村女性活躍担当大臣を中心に、女性活用のための政策パッケージを10月に取りまとめる方針だ。企業などに女性の採用・昇進などの情報開示義務づけや、企業役員に占める女性比率を有価証券報告書に記載するよう求めるほか、女性を積極登用する企業に対し政府調達や公共事業の発注などで優遇することが検討されているようだ。

臨時国会に提出する女性活躍推進法案(仮称)では、行政機関や企業に対し、女性幹部の登用を促すための行動計画策定や目標設定を求めることなどが柱となるという。長時間労働の解消や在宅勤務の推進なども盛り込む方向で検討されているという。

 

 

 議員1人あたりの人口格差(1票の格差)是正策に向けた参議院選挙区制度改革をめぐっては、11日、参議院各会派でつくる「選挙制度協議会」の会合が開催された。

会合では、脇座長(自民党参議院幹事長)が隣接する10選挙区を5選挙区に統合する新たな「合区案」を提示した。新たな座長案は、22選挙区を11選挙区に統合する案について、自民党内などから強い反発が相次いだことを踏まえ、(1)鳥取・島根、(2)徳島・高知、(3)佐賀・福岡、(4)福井・滋賀、(5)山梨・長野をそれぞれ合区して、5選挙区に統合するというものだ。

 これに対し、合区案に一定の理解を示している民主党が「座長案が自民党案ということで議論してほしい」と求めたほか、「座長案は次善の策として十分検討し得る。議論が後退しないようにしてもらいたい」(みんなの党)などと前向きに進めるよう求めた。これに対し、都道府県単位の現行の選挙区制度を維持すべきと反対意見が相次いでいる自民党は、「合区案には依然、反対論とやむなし論がある。10月末までに自民党案を出せるよう努力したい」と理解を求めた。

 

自民党内では、参議院選挙制度改革をめぐって、合区案を提案し選挙制度改革の議論を主導してきた脇座長と、合区案に消極的で脇座長の議論の進め方は拙速と批判する溝手参議院議員会長の対立が激化していった。第2次安倍改造内閣の発足を前に、溝手議員会長が脇氏を参議院枠で入閣させるよう安倍総理・総裁に求めて、参議院自民党執行部から外そうと画策した。これに脇氏は入閣を固辞し、参議院推薦の閣僚枠が事実上ゼロとなった。

一方、脇氏は、9日の参議院執行部会で「来春の統一地方選後まで選挙制度の見直しをやらないという会長の考えには大変な誤りがある。自民党の信用を失墜させる行為だ。責任を取るべきだ」と、参議院自民党の改革案がまとまらない現状を批判し、溝手議員会長に辞任を求めた。溝手議員会長は、脇氏の要求を「個人の意見」として取り合わず、任期満了に伴う人事で、脇氏を事実上、更迭することを決めた。

 

12日、溝手議員会長は、所属する全参議院議員が出席する特別議員総会を開催し、参議院幹事長を交代させ、後任に伊達国対委員長を昇格させる人事案を提示した。人事案は、特別議員総会で賛成多数により了承された。参議院議員副会長に岩城参議院議院運営委員長、国対委員長に吉田幹事長代行、政審会長に鶴保参議院議員をそれぞれ充てることが16日に決まった。

幹事長交代に伴い、脇氏は協議会座長からも退く見通しで、参議院選挙制度改革をめぐる与野党の意見集約が遅れるのは避けられそうもないようだ。

 

 

 今月末召集予定の臨時国会では、安倍総理が重要課題と位置付ける「地方創生」や「女性活躍」の推進法案のほか、通常国会で継続審議となった「特定複合観光施設整備推進法案」(議員立法)、政府が再提出する予定の「労働者派遣法改正案」、「土砂災害防止法改正案」などが審議される予定だ。また、集団的自衛権行使を限定容認に向けた憲法解釈変更のための閣議決定に関することや、消費税率10%への引き上げの是非、原発再稼働などをめぐって与野党論戦になるとみられている。臨時国会に向けた各府省の政策・立法動向とその中身について、引き続き確認しておくことが大切だろう。

先週3日、第2次安倍改造内閣が発足した。18閣僚のうち麻生副総理兼財務・金融担当大臣や菅官房長官、岸田外務大臣、太田国土交通大臣、甘利経済再生担当大臣、下村文部科学大臣の6ポストが留任となり、12閣僚が交代となった。また、官房副長官(政務担当2人、事務担当1人)と5人の総理補佐官、内閣法制局長官も留任となった。

女性が輝く社会の実現に向け「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする」数値目標を掲げている安倍内閣は、過去最多と並ぶ女性5人(小渕経済産業大臣、高市総務大臣、松島法務大臣、山谷国家公安委員長・拉致問題担当大臣、有村女性活躍・行政改革担当大臣)を閣僚に起用するなど、率先して実践する姿勢をアピールした。

安倍総理が一本釣りで人事を決めた側面が色濃い第2次内閣と比べると、今回の改造内閣は、主要閣僚を留任させて内閣の継続性と安定性を維持しつつも、派閥領袖や入閣待機組を可能な限り起用・配慮なども伺える。9

 

安倍総理は記者会見で、今回の内閣改造を「日本の将来を見据え、有言実行、政策実現に邁進する実行実現内閣」と位置付け、そのねらいと意義について「諸政策を心機一転、さらに大胆かつ力強く実行するために本日、内閣改造を行った」と述べた。

そのうえで、「景気回復基調をより確かなものとし、その実感を必ず全国津々浦々にまで届ける。それこそが次なる安倍内閣の使命」「引き続き経済最優先でデフレからの脱却を目指し、成長戦略の実行に全力を尽くす」と、デフレ脱却と経済再生を最優先課題に位置付けた。地方創生や女性活用など成長戦略の具体化と着実な実行に力を注ぐ。

また、東日本大震災からの復興、集団的自衛権行使の限定容認を含む安全保障法制の整備や日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の再改定、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の辺野古移設、北朝鮮による拉致問題の解決なども重点的に取り組んでいく方針だ。安倍総理は、安全保障政策に精通する江渡氏を防衛大臣兼安全保障法制担当大臣に抜擢して、(1)国家安全保障政策の戦略・体系化、(2)自衛隊の態勢強化、(3)日米防衛協力のための指針の見直し、(4)米国など諸外国との防衛交流の推進、(5)沖縄県の負担軽減実現、(6)安全保障法制の整備、(7)わかりやすい説明の7点について指示したという。

 

翌4日、政府は臨時閣議で副大臣25人と政務官27人を決定した。広島市へ土砂災害で現地対策本部長を務める西村内閣府副大臣、東日本大震災の復興を担当する浜田復興担当副大臣と小泉復興政務官を除いて、すべて交代となった。菅官房長官や新閣僚らは、派閥推薦は考慮せず、所属議員の希望調査結果から人選・調整を進めたという。

通常、副大臣は当選4~5回の衆議院議員が中心だったが、今回の内閣改造では若手人材の育成を図るねらいから、当選3回が中心となった。また、女性の積極活用の方針を踏襲し、女性の副大臣3人、政務官4人をそれぞれ起用された。

 公明党からは、外務省出身の石川参議院議員が同党初の防衛政務官に起用された。安全保障法制の整備をめぐる公明党との協議を円滑に進めるため、石川政務官には、安全保障法制の整備について担当することとなった。

 

改造内閣発足に先立っておこなわれた自民党役員人事では、高村副総裁が留任し、幹事長に谷垣前法務大臣、総務会長に二階衆議院予算委員長、政調会長に稲田前行政改革担当大臣、選対委員長に茂木経済産業大臣が就任した。当初、選対委員長を選対局長に戻して、従来の三役体制とすることが検討されたが、四役体制を維持することとなった。

官邸が主導権を握る「政高党低」が今後も続くとみられているなか、大臣の経験がない「入閣待機組」の中堅・ベテラン議員らを中心に不満なども渦巻いている。こうしたなかで挙党態勢を維持していくため、谷垣幹事長や二階総務会長の手腕を期待したのだろう。また、公明党との合意形成や意思疎通を円滑に進めるためにも、調整型のベテランとして定評のある二階氏を総務会長として再登板させたとみられる。さらに、来年秋の自民党総裁選に向けて幅ひろく勢力を取り込み、政権基盤をより固めたいとの思惑もあったようだ。

このほかの自民党人事では、細田幹事長代行や佐藤国対委員長が留任、新たに政調会長代行を創設して塩谷元総務会長を充てるほか、政調会長代理に小野寺前防衛大臣、岩屋元外務副大臣、田村前厚生労働大臣、遠藤元文部科学副大臣らが起用されることとなった。 

 

 

 3日に行われた内閣改造・自民党役員人事について、野党はそれぞれ見解が分かれた。

消費税率引き上げを柱とする税・社会保障一体改革に係る自公民3党合意を結んだ谷垣氏の幹事長起用については、「身を切る改革を行う前に増税する道筋が付けられた」(松野日本維新の会国会議員団代表)、「増税内閣だ。大盤振る舞いで歳出を拡大してくるだろうが、無駄遣い回避、身を切る改革を求めていく」(小沢日本維新の会国会議員団幹事長)、「消費税率引き上げは見送るべき」(浅尾みんなの党代表)、「軒並み経済指標が悪化したこの経済状況で10%に増税して日本経済は持つのか」(江田結いの党代表)など、増税シフトを警戒する声が相次いだ。

内閣改造については、「改造したふり内閣」(海江田民主党代表)や「右向け右内閣」(吉田社民党党首)といった批判が出された。その一方で、「日本の難局を突破することを期待したい」(山田次世代の党幹事長)や「堅実な人選」(浅尾みんなの党代表)といった見解も示された。

 

 

3日の新閣僚による初閣議では、「東日本大震災の復興加速化」「地方の創生」「女性が輝く社会の実現」など7項目を重点課題と位置づける基本方針を決定した。また、地方創生の司令塔として、安倍総理が本部長を務め、全閣僚がメンバーとして構成する「まち・ひと・しごと創生本部」の設置を正式に決めた。安倍総理は、副本部長の地方創生担当大臣を「政府全体にわたって大胆な政策を立案・実行する地方創生の司令塔」と位置付けたうえで、石破前幹事長を起用した理由について「農政のプロとして地方の実態に通じ、何よりも経験豊富で実行力」がある点を挙げた。農林水産大臣や防衛大臣といった重要閣僚や党役員を歴任した石破大臣の手堅い手腕に期待感を示した格好だ。

政府は、創生本部の事務局規模を、各省庁から集めた約70人から拡大する方針を固めた。今後、石破大臣が経済産業省、厚生労働省、総務省、国土交通省、農林水産省から職員を選んでさらに増員する予定だ。また、地方の金融政策に通じた民間人の起用も検討している。

 

今週にも創生本部の初会合が行われる予定だ。政府は、2015年度から5年間にわたる総合戦略の策定を義務づけるとともに、税制優遇や自治体向けの新たな交付金創設、規制改革などの地方支援策などについて盛り込んだ「地方創生基本法案」を9月29日に召集予定の臨時国会に提出する方針でいる。このほか、関連法案の検討もあわせて進める。

また、地方創生に関する事業や予算が他省庁と重複しないよう、来年度予算編成に向けて新たな指針づくりに向けた調整をスタートさせた。8月末に締めきられた来年度予算の概算要求でも、「新しい日本のための優先課題推進枠」(上限3.9兆円)に、国土交通省や経済産業省、総務省などが要求し、似通った関連事業で予算を奪いあう構図が続いている。

石破大臣が、こうした課題にどの程度切り込み、イニシアティブを発揮して各省庁にまたがる地方の総合政策を取りまとめていくことができるかがポイントとなりそうだ。

 

 

 内閣改造を受け、野党8党は、3日に国会対策委員長会談を開いて、臨時国会の早期召集を求めていくとともに、集団的自衛権や原発再稼働問題などを議論する衆参両院の予算委員会で集中審議を開催するよう与党側に要求する方針で一致した。

会談後、民主党の松原国対委員長は、自民党の佐藤国対委員長に申し入れを行った。佐藤国対委員長は「できれば今月中にでもスタートしたい」と回答した。その後、政府・与党は、臨時国会の召集日を9月29日とし、会期を12月5日までの68日間とする方向で調整に入ったようだ。

 

 秋の臨時国会で、政府・与党は経済再生・地方創生などの関連法案提出・成立をめざす考えだが、野党側は憲法解釈の変更で集団的自衛権行使を容認するための閣議決定や、原発再稼働問題、消費税率10%への引き上げの是非、普天間基地移設問題なども焦点となるとみられている。また、野党側は、安倍総理と石破大臣が安全保障政策をめぐって見解不一致を露呈しただけに、この点を追及しようとする動きもあるようだ。

臨時国会に向け、各府省がどういった政策・法案の準備をすすめており、新大臣らの意向で変更点などは生じるのかなど、今後の政策・立法動向もウォッチしておいたほうがいいだろう。

 

 先週8月29日、財務省は、来年度予算に係る各省庁からの概算要求を締め切った。一般会計における要求総額は約101.7兆円と過去最大になった。

国債の利払いなどに充てる国債費が25.8兆円(今年度当初比11%増)と増加傾向にあるほか、年金や医療費などの社会保障費が約31.7兆円(今年度当初比3%増、高齢化に伴う自然増は8155億円)に膨らんだ。公共事業関係費は、地方創生や成長戦略、防災・減災、インフラ老朽化対策などの名目で要求しており、6.1兆円(国土交通省、今年度当初比16%増)となった。防衛費は、中国の海洋進出など日本を取り巻く安全保障環境の悪化を反映して、5兆円(今年度当初比3.5%増、米軍再編などの地方負担分含む)となった。地方創生や成長戦略などに重点配分する「新しい日本のための優先課題推進枠」(上限3.9兆円)についても、要求額がほぼ上限に達した。

今後、財務省が概算要求の査定を本格化させる。歳出圧力が強まるなか、年末の政府予算案の閣議決定に向け、財務省と各省との間で攻防が繰りひろげられていくこととなるだろう。

 

 

 急激な人口減少と超高齢化、地方経済の低迷などの課題に対応するため、省庁横断的に地域振興策を策定する「まち・ひと・しごと創生本部」(本部長:安倍総理、副本部長:官房長官、地方創生担当大臣)の立ち上げを前に、地方自治体首長や経済界、学者などの有識者から地方対策や人口問題について直接意見を聴くための懇談会を26日と27日に開催した。会合には安倍総理のほか、麻生副総理兼財務大臣、菅官房長官ら9閣僚が出席した。

 安倍総理は「経済政策の成果を全国隅々まで届け、人口減少、超高齢化社会という構造的な問題に正面から取り組んでいく必要がある。地域の特性に配慮しながら、地域の課題を解決する」「人口減少や超高齢化は地方でより緊急かつ深刻な問題だ。若者たちが将来に夢や希望を持てる、誰もが安心して暮らせる地域づくりに本腰を入れて取り組んでいきたい」と述べ、全力で取り組む考えを示した。

有識者からは、地方の危機感が示されたほか、結婚・出産、育児へのサポート強化などの具体的対策、縦割り行政の撤廃などが提言された。政府は、ヒアリング結果を踏まえ、3日の内閣改造後に発足する創生本部で具体的な検討に入るという。

 

 

 内閣改造・自民党役員人事をめぐっては、26日の自民党役員会で、安倍総理・総裁が9月3日に内閣改造と党役員人事を行う方針を表明した。当初、党役員人事を2日に行う意向だったが、外交日程があることや、人事調整が難航する可能性も想定して、2日に党執行部の辞表を取りまとめたうえで党総務会にて党人事の一任を取り付け、翌3日の党総務会で新役員の了承を取り付けて発表することとした。副大臣・政務官人事は、4日にも終える方向で検討している。

 

焦点となっていた石破幹事長の処遇をめぐっては、29日、安倍総理が石破茂幹事長と会談した。安倍総理が幹事長交代と新設する安全保障法制担当大臣への就任を求めていることに対し、石破幹事長は、担当大臣就任を固辞するとともに幹事長続投を希望する発言を行ってきた。これに安倍総理が石破氏を無役とすることも辞さない姿勢をみせ、両者の亀裂はより深まっていた。

ただ、会談を前に安倍総理が、挙党態勢を維持し安定した政経運営を行うためにも、石破氏を新設する地方創生担当大臣兼総務大臣など他の重要閣僚で処遇する方向に傾いた。また、石破サイドも、自民党内で「石破氏の発言は安倍総理の人事権侵害だ」との批判が噴出していることも踏まえ、安全保障法制担当大臣以外であれば入閣要請を受け入れる意向を示した。石破幹事長は、このまま入閣を拒んで党内亀裂が生じることとなれば、孤立を深めていくことになりかねないことも危惧したようだ。

会談後、石破幹事長は「組織人として首相の決定には従う」「首相との間で亀裂が走ったことなどは一切ない。政府を全力で支える」と述べ、3日の内閣改造時に入閣要請があれば受け入れる考えを表明した。これにより、幹事長交代と石破氏入閣が濃厚となった。

 

焦点は、後任の幹事長人事に移った。細田博之幹事長代行が浮上している。安倍総理は、現在の党四役体制(幹事長・総務会長・政調会長に、選対委員長を加えた体制)から「三役体制」に戻す方針で、これにより河村建夫選対委員長が退くことになる。このことから、河村氏も幹事長候補として挙がっている。

 党役員人事では、高村副総裁の留任が決まっており、新政調会長には稲田行政改革担当大臣、新総務会長に二階俊博衆議院予算委員長らが有力視されている。また、谷垣法務大臣を党要職で、小渕優子衆議院議員を閣僚または党要職で処遇する方向で検討されている。

 

 閣僚人事では、これまでに菅官房長官、麻生副総理兼財務大臣、岸田外務大臣、公明党の太田国土交通大臣の留任がほぼ確定した。甘利経済再生担当大臣や下村文部科学大臣も留任させる方針だという。

また、高市政調会長が経済産業大臣などで入閣が有力視されているほか、新設の安全保障法制担当大臣に安全保障に精通する江渡聡徳衆議院安全保障委員長が防衛大臣との兼務で、復興担当大臣に大島前副総裁・党東日本大震災復興加速化本部長が環境大臣との兼務で起用されるとみられている。江渡議員は、集団的自衛権行使の限定容認について政府・与党内でとりまとめた高村副総裁と調整にあたっていたこともあり、自民党内からも適任との声がでている。

 このほか、北朝鮮拉致問題に取り組んできた山谷えり子参議院政審会長を拉致問題担当大臣に、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)対策委員長として党内の集約に尽力し、農協改革でも党内や業界団体との調整に奔走した西川公也衆議院議員が農林水産大臣に起用する方向で調整が進められているようだ。

 

 

 今週、安倍総理は内閣改造・自民党役員人事を断行する。どのポストにどのような人材を配するのだろうか。そして、安倍総理は内閣改造人事のねらいをどのように説明するのだろうか。今後の政策的方向性について把握するためにも、安倍総理の説明と閣僚らの陣容を見極めることが大切だ。


 9月2日の自民党役員人事、3日の内閣改造に向け、政府・自民党内の動きがより活発となっている。自民党は、閣僚経験のない当選5回以下の所属議員(衆議院)を対象に、副大臣・政務官や国会の委員長、部会長など党役員などの役職希望についての聞き取り調査を今週中に実施する。参議院自民党は、候補者リストを幹事長室でまとめた。これらの結果にもとづいて、新閣僚が副大臣や政務官を4~5日に人選するようだ。

 

焦点となっている石破幹事長の処遇をめぐっては、今週中にも安倍総理と石破幹事長が会談するという。

安倍総理は、幹事長交代と新設する安全保障法制担当大臣への就任を石破氏に正式要請する意向だ。集団的自衛権行使の限定容認を含む安全保障関連法案を来年の通常国会に提出する予定で、その国会審議を乗り切るためにも、安全保障政策に詳しく答弁が安定している石破氏の協力が不可欠としている。

また、来年9月の任期満了に伴う自民党総裁選での再選をにらんで、石破氏を党の人事や資金の配分などに大きな権限を持つ幹事長職から外して、影響力を削いでおきたいとの思惑もある。安倍総理は、石破幹事長が安全保障法制担当大臣への就任要請を断った場合、他の閣僚ポストや党役員への起用を見送る考えだ。

 

一方、石破幹事長は、安全保障政策で安倍総理の考え方と相違があることなどを理由に、担当大臣の就任要請を固辞する意向だ。石破氏とその周辺は、幹事長留任を望んでいる。

石破幹事長は、自民党が2012年の衆院選公約に掲げた「国家安全保障基本法案」を制定して集団的自衛権の行使を包括的に容認したうえで、自衛隊の行動を規定し行使判断について国会が最終責任を持つべきとの持論を持っている。基本法案制定に消極的で、現行の個別法改正で進めようとする安倍総理と見解の隔たりがあり、7月の閣議決定にも不満をにじませる発言を行っているという。

また、集団的自衛権の行使容認をめぐる法案審議で国会答弁の責任者となる担当大臣に就任することで、野党や世論の批判の矢面に立つことになれば、石破氏のイメージダウンにもつながりかねない。石破幹事長は総裁選に出馬する意向で、安倍総理と距離を置いて自由な立場で動いた方が得策だと判断しているようだ。

 

 安倍総理は、石破幹事長との会談で説得したい考えだ。石破幹事長も「首相からきちんと話を聞いてからだ」とも語っており、慎重に判断する姿勢をみせている。ただ、会談で両者が折り合うことができなければ、石破氏が無役となる可能性もあるようだ。一定の支持を集めている石破氏が安倍内閣と距離を置くことになれば、政権基盤や党の結束にも影響が及びかねない。会談を受けて人事構想に変更が生じるかも含め、安倍総理が石破氏をどうのように処遇するかが注目ポイントとなりそうだ。

 

 

 急激な人口減少と超高齢化、地方経済の低迷などの課題に対応するため、省庁横断的に地域振興策を策定する「まち・ひと・しごと創生本部」(本部長:安倍総理、副本部長:官房長官、地方創生担当大臣)の立ち上げに向け、有識者から直接意見を聴く懇談会を26日と27日に開催する予定だ。

地方重視の姿勢を打ち出したい安倍総理は、9月3日の内閣改造で地方創生担当大臣を総務大臣や官房長官が兼務ではなく、単独ポストとして新設し、担当大臣任命後には速やかに創生本部を発足・始動させたい考えだ。政府は、担当大臣任命・創生本部発足後、直ちに本格的な作業に着手できるよう準備を進めるねらいから、有識者ヒアリングを実施するという。

 

 

 今月末には来年度予算に係る概算要求が締め切られる。来年10月の消費税率10%への引き上げについての判断が今年末に控えており、法人実効税率引き下げの詳細も決まっていないため、税収見通しが立たず、来年度の歳出上限額は設けられていない。高齢化で社会保障費が膨らむほか、成長戦略や地方創生などで要求額を積み増していることから、各省庁の要求総額(一般会計)が100兆円を突破する見通しだ。

 内閣改造後、予算編成作業が本格化する。各府省別の概算要求内容、とりわけ地方活性化などの成長戦略に重点配分する「新しい日本のための優先課題推進枠」(上限3.9兆円)にどのような要求・要望を出すだろうか。来年度予算がメリハリのついたものとなるかを見極めるためにも、まずは各府省の要求・要望内容について確認しておくことが大切だろう。

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