【与党、安全保障関連法案の主要条文案を了承】

先週24日、政府は、安全保障法制整備に関する与党協議会(座長:高村・自民党副総裁、座長代理:北側・公明党副代表)で、集団的自衛権行使の限定容認を含む安全保障関連法案の主要条文案を提示した。

関連法案は、速やかな国会審議・成立を図るねらいから改正する法律10本<武力攻撃事態対処法、自衛隊法、重要影響事態法案(周辺事態法改正案)、国連平和維持活動(PKO)協力法、船舶検査活動法、米軍行動関連措置法、特定公共施設利用法、海上輸送規制法、捕虜取扱法、国家安全保障会議設置法>を束ねた一括法案と、国際社会の平和と安全のために活動を行う他国軍隊に対する後方支援として自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法「国際平和支援法」を加えた2法案になるという。政府は、緊急性の高い法案について、早ければ成立から半年をメドに施行していく考えも伝えた。

自民党と公明党は、焦点となっていた国際平和支援法にもとづく自衛隊の海外派遣は例外なく国会の事前承認とすることなどで正式合意した。そして、政府が提示した主要条文案について、3月20日にまとめた「具体的方向性」に概ね沿って法案化されていることが確認できたと強調した。

 

27日の与党協議会では、政府が「基本的な考え方」として(1)存立危機事態で集団的自衛権行使、(2)周辺の地理的概念削除、(3)他国軍の後方支援を目的に恒久法制定、(4)恒久法での自衛隊派遣は国会の事前承認義務付け、(5)PKOなどで駆け付け警護可能に、(6)グレーゾーンで米艦艇など防護可能に、(7)領域国の同意条件に在外邦人救出可能に、の解釈基準を盛り込んだ政府の統一見解を提示した。関連法案で条文化されない論点について、より具体的するよう求めた公明党の要請を受け入れ、政府が異例の統一見解を示すこととなった。

 

日本が集団的自衛権を行使する存立危機事態については、「攻撃国の意思、能力、事態の発生場所、規模などの要素を総合的に考慮し、国民が被ることとなる犠牲の深刻性などから客観的に判断する」とした。日本への武力攻撃が予測される「武力攻撃事態等」に該当することが多いとしたうえで、存立危機事態のみが認定される状況もあり得るとの認識を示した。

また、日本の平和と安全に重要な影響を与える重要影響事態で想定する地域について、「わが国周辺の地域における」や「周辺事態」といった文言を用いず、これまで自衛隊の活動範囲を地理的に制約する根拠としてきた「中東やインド洋は想定されない」との国会答弁も継続しない方針を明確にしたうえで、改正後の自衛隊による他国軍への後方支援の範囲には「これらの地域もあらかじめ排除できない」とした。

こうした政府の統一見解に異論は出ず、関連法案の主要条文案とともに了承された。5月11日の与党協議会に政府が安全保障関連法案の全条文提示を踏まえ、自民党と公明党は正式合意する予定だ。与党の正式合意、自民党と公明党それぞれの党内手続きを経て、政府は、5月14日または15日にも閣議決定のうえ国会に提出するという。

 

 

【野党は党見解の決定、対案づくりを急ぐ】

民主党は、PKOの駆け付け警護やグレーゾーン事態への対処など一部について容認しているが、政府提出の安全保障関連法案すべてに反対する方針だ。27日、安全保障法制に関する党見解を安全保障総合調査会(会長:北沢俊美議員)でとりまとめ、安全保障総合調査会などの合同会議で了承のうえ、岡田代表に提出した。28日の民主党「次の内閣」会合で党見解を正式に決定する。

 

 最大の焦点となっていた集団的自衛権の行使の是非については、「専守防衛に徹する観点から、安倍政権が進める集団的自衛権の行使は容認しない」とすることで決着した。

取りまとめの過程で、集団的自衛権をめぐって賛成派と反対派の認識の差が改めて浮き彫りになっていた。素案段階では、政府案への反対姿勢を明確にするため、「政府の新3要件にもとづく集団的自衛権の行使は容認しない」としていたが、党内から集団的自衛権の行使そのものを否定しかねない表現への反発も出たため、当面は容認しない点を強調しつつも、将来的な行使容認には含みを残す玉虫色の表現となった。

また、政府の武力行使の新3要件による憲法解釈の変更についても「便宜的、意図的で立憲主義に反する」と指摘し、「基準が曖昧で、歯止めがきかない」「専守防衛の根幹から明らかに逸脱している」などと批判する。民主党は、日本が武力行使を行えるのは「相手から攻撃を受けたとき」だけであり、昨年7月の閣議決定以前の政府解釈に戻すべきだとしている。

さらに、政府が示す事例についても「説得力ある説明がまったくなされていない」「行使の必要性を導く立法事実は認められない」と強調している。民主党は「ホルムズ海峡の海上封鎖が日本の存立を脅かす事態に相当するとは考えられない」「中東のシーレーン(海上交通路)の安全確保などを理由とした集団的自衛権の発動は認められない」「邦人輸送中の米艦防護やホルムズ海峡での機雷掃海は蓋然性や切迫性が低い」との立場だ。

 

政府の重要影響事態については、現行の周辺事態法の周辺概念を堅持すべきとしており、国会の関与を強める「議会関与法(仮称)」を検討するという。また、自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法の制定には反対で、特別措置法で対応すべきとしている。武力攻撃に至らないグレーゾーン事態では海上警備行動の迅速化などを柱とする「領域警備法案」を、駆け付け警護などを可能にする「PKO協力法改正案」を通常国会に提出する方針だ。

このほか、近隣有事を想定した周辺事態法や海上輸送規制法の改正など必要な措置、現在は認められない他国軍の発進準備中の航空機への給油なども検討するとしている。

 

維新の党は、28日の執行役員会で安全保障法制に関する協議を行う予定で、党見解をまとめや対案づくりを急いでいる。

個別的自衛権の範疇に入る集団的自衛権については認める立場だが、存立危機事態を「密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、わが国の存立が脅かされる明白な危険がある事態」と定義する政府・与党案は「歯止めが不十分」と主張している。具体的には、「これを排除しなければ(そのまま放置すれば)、わが国に対する武力攻撃が発生し、もしくは発生する明白な危険が切迫し、または事態が緊迫してわが国に対する武力攻撃が予測されると認められるもの」との一文を付け加えて厳格化にする修正素案をとりまとめているという。また、経済危機などでの集団的自衛権の行使を認めず、「わが国に武力攻撃が予測される」場合などに限定するとしている。

 

 また、安全保障関連法案の早期審議入り・一括審議を求めている与党に対し、野党各党は安全保障法制の慎重な審議、十分な審議時間の確保を要求している。関連法案は、与党間調整で法体系などが複雑化しており、条文案でも曖昧なところが残っているだけに、「重い法案を一括して提出するのは非常に乱暴。国民に対して丁寧な説明にはなり得ない」(民主党の安住国対委員長代理)と批判するなど、改正法案を1本ずつ提出・審議するよう求めたいとしている。

 

 

【小型無人機の規制検討へ】

 首相官邸の屋上ヘリポートで小型無人機「ドローン」がみつかった事件を受け、24日、政府は、小型無人機の飛行制限や運用ルールなどについて協議する関係省庁連絡会議(議長:杉田官房副長官)の初会合を開催した。

 

 小型無人機は、災害対応や無人輸送、農薬散布など、さまざまな用途での有効活用を期待する声がある一方、爆発物・放射性物質・細菌・化学物質などを搭載したテロ行為や、盗撮・盗聴行為などに悪用される可能性も指摘されている。

現行の航空法で無線操縦の模型と同じ扱いとなっており、空港の半径約9キロメートル以内でなければ、原則として高さ250メートル未満の空間であれば自由に飛ばすことができる。このことから、昨年12月、運用規制に向けたルールづくりの検討会を国土交通省内に設置し、今月6日から議論をスタートさせたばかりだった。

また、政府の日本経済再生本部は成長戦略の観点から、今年2月にドローンの運用実態の把握や関係法令の検討を進めることについて決定していた。規制改革で地域を活性化する「地方創生特区」で、ドローンの実証実験をすることが決まっている。

 

 今回の事件を受け、与党内から「法的に無防備だったというそしりをうけることは、国家の安全を守るという面からも大変ゆゆしき問題だ。ただちに対処すべき」(自民党の二階総務会長)、「急速な普及を考えると、安全確保や利用内容を検討する早急な対応があるべきだ」「政府重要機関には危機管理でしっかりした対応が望まれる。監視カメラの整備など早急な対応が必要だ」(公明党の山口代表)、「当面の対応策をしっかり取り、重要施設の上空での無人飛行機の飛行について法規制を早急に検討し、今国会中に結論を出すべき」(公明党の井上幹事長)など、迅速な対応を求める意見が相次いだ。

 自民党の二階総務会長は、航空法や電波法改正などの法規制整備を通常国会中に行うよう求める緊急提言を自民党国土強靱化総合調査会(二階会長)でとりまとめ、24日、菅官房長官との会談で手渡した。二階総務会長と菅官房長官は、政府・与党が連携して立法措置を急ぐことを確認したようだ。

 

国土交通省・経済産業省・総務省・警察庁の局長級で構成する政府の連絡会議では、(1)航空法など関係法令改正を含む小型無人機の法規制と運用ルールの見直し、(2)重要施設の警備態勢の強化について検討する2つの分科会を設置することになった。

小型無人機の法規制では、重要施設上空の飛行制限だけでなく、小型無人機の購入者に免許取得の義務づけや購入時の登録制導入の是非、定期的な整備・点検の義務付けの有無のほか、規制対象となる小型無人機の大きさや性能、人口や建物の密集度に応じた飛行可能エリアとその高度の設定方法なども検討課題として挙がっている。政府は、外国での規制状況なども参考に、大型連休明けまでに対応策の方向性をまとめる方針だ。

 

 一方、自民党は、「政府提出法案だけでは議員の職責を果たせない。国会側が態度を示すことで、内閣も機敏な行動が取れる」(二階総務会長)として、24日に治安・テロ対策調査会などの合同部会を開催して、対応策の議論をスタートさせた。二階総務会長は、24日の菅官房長官との会談で、皇居・総理官邸・中央官庁・国会議事堂・大使館・発電所など重要施設の上空を小型無人機の飛行禁止空域として指定し、違反者には罰則を科すことを柱とした法案を議員立法で準備する意向を伝えている。

府作業会長)として、与党側」(二階総務会長)として、与党側でも28日には、小型無人飛行機の規制を検討する小委員会(委員長・古屋圭司前国家公安委員長)を開催し、法案の骨子案を提示した。5月中にも議員立法で法案をとりまとめたいとしている。今後、政府と調整しながら、最終的に政府提出法案に一本化するようだ。

 

 

【野党、危機管理の甘さを追及する方針】

これに対し、野党各党は、政府の危機管理体制の甘さを追及していく構えをみせている。政府のドローン問題への対応について、安倍内閣が進める安全保障法制に絡め、「極めて深刻な事態だ。自衛隊の海外派遣などにうつつを抜かしている前に対応をしっかりやるべきだ」(民主党の枝野幹事長)、「集団的自衛権うんぬんの議論の前に、自らの国家の中枢を守れないようでは話にならない」(維新の党の江田代表)などと批判している。

 

 また、民主党は、24日の衆議院安全保障委員会で、首相官邸の屋上でドローンを発見した直後に放射性物質を検出したことを直ちに発表しなかったことを挙げて「爆発物の可能性や放射性の強さは直ちに判明していなかった。官邸周辺やオフィス、行き来する人たちに注意喚起する必要があったのではないか」(民主党の小川淳也衆議院議員)などと、政府の初動対応の甘さなどを追及した。

これに対し、加藤官房副長官は「官邸警備にかかわる」として政府対応の詳細説明を避けつつ、「警察がただちに調査し、状況を総合的に判断して周辺への注意喚起が必要な段階にはないと判断した」と答弁した。小川議員は「官邸の警備にかかわるは便利な言い回し」「責任の所在、実効性ははなはだ疑問が多い」などと批判した。

 

民主党・維新の党・共産党は、今回のドローン事件で明らかとなった警備体制などの問題をテーマに集中審議を5月の大型連休明けに開催するよう、23日に開催された衆議院内閣委員会理事懇談会で与党側に要求した。23日の懇談会では、警察庁が事件概要を報告し、総理官邸の上空・周辺の警備や、各重要施設の対策を強化する方針について説明した。与党側は持ち帰えることとしたため、連休明けに再協議することとなった。

 

 

【安全保障法制をめぐる与野党の政策・主張に注目を】

日米両政府は、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を開催し、安全保障法制と連動する日米防衛協力の指針(ガイドライン)の再改定について合意した。新ガイドラインは、平時から有事までの「切れ目のない日米協力」の確立、日本の集団的自衛権行使を前提に島嶼防衛での共同対処、武器等防護・ミサイル防衛・後方支援・海上作戦(機雷掃海や艦船防護など)の協力などの例示など、安全保障関連法案で規定する自衛隊の活動拡大を先取りした内容でまとめられた。

政府の安全保障関連法案の全文案提示を踏まえ、大型連休明けの5月11日にも自民党と公明党で正式合意する。また、民主党や維新の党での党見解・対案づくりも大詰めを迎える。安全保障法制をめぐる与野党動向を抑えつつ、各党の政策・主張を整理してみていったほうがいいだろう。