【衆議院予算委員会、政治とカネ問題の追及続く】

 今週3月2日に行われた衆議院予算委員会で、来年度予算案採決の前提となる中央公聴会について、9日実施を全会一致で議決した。同日に開催された衆議院予算委員会理事会では、与党が、野党側に13日の衆議院予算委員会で締めくくり質疑と採決を行うことも提案した。民主党など野党は、回答を保留した。自民党は、当初、9日の締めくくり質疑・採決を提案していたが、野党側は、政治資金問題で昨年辞任した小渕前経済産業大臣、西川前農林水産大臣を参考人として招致して9日に質疑を行うよう要求したため、結論が出なかった。このことから、予算の年度内成立をめざす与党は、参議院での審議日程も考慮して、13日には衆議院を通過させたいとしている。

 

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衆議院予算委員会での質疑では、引き続き安倍内閣の「政治とカネ」をめぐる問題に集中した。辞任した西川前農林水産大臣の政治献金問題のほか、新たに浮上した下村文部科学大臣や望月環境大臣、上川法務大臣の政治資金問題も追及の対象となった。

 西川氏の献金問題をめぐっては、26日の衆議院予算委員会理事会で、野党の求めに応じて西川氏が顧問を務めた企業と顧問料等の報酬額などの関係資料が提示されたが、民主党など野党は、説明が不十分だとして、衆議院予算委員会で西川氏を参考人として招致するよう求めた。今後、政治とカネ問題をテーマにした集中審議や政治倫理審査会の開催も含め、西川氏にさらなる説明を求めていきたいとしている。

 

 下村大臣が代表を務める政党支部が、支援者で組織する全国10の任意団体「博友会」の集めた年会費を個人寄付として処理していたなどの問題をめぐっては、民主党などが政治資金収支報告書の提出が求められる政治団体にあたり、政治資金規正法に違反するのではないかなどと質した。下村大臣は、「民間教育者による懇親のための団体」「任意団体は私の政治活動とは無縁」と説明したうえで、「寄付を受けたり、政治資金パーティー券を購入してもらったりしたこともない」などと違法性を否定した。

 望月大臣が代表を務める政党支部が、国の補助金を受けた企業から献金を受けていた問題について、望月大臣は、補助金交付を報道で初めて知ったとした説明したうえで「国でなく一般社団法人が交付決定をしており、政治資金規正法違反には当たらない」「知らずに受け取った。受け取った行為は法に抵触するものではない」などと違法性を否定した。政治資金規正法は、国の補助金を受けた企業が交付決定から1年間、政治献金することを禁じている。望月大臣は、国土交通省と、環境省から一般社団法人を通じてそれぞれ補助金が交付されていた企業から、1年以内に献金を受けていた。「道義的な立場から返金した」とも説明している。

 上川法務大臣の政党支部も、同企業から政治献金を受けていた。上川大臣は「法に抵触するような献金をいただいていたという認識は全くなかった」「補助金をもらっていたことは全く承知していなかった」などと釈明して違法性を否定した。

 

民主党など野党は、それぞれの疑惑の全容解明と安倍総理の任命責任について徹底追及していく方針だ。民主党は、27日の衆議院予算委員会で、国会提出が必要な所得等報告書に顧問として得た収入を西川氏が記載していないことを問題視し、「明らかに資産公開法に反している。脱税の疑いがある」「安倍政権はカネまみれ政権だ」(後藤議員)などと批判した。これに、安倍総理や疑惑を指摘された閣僚は「何の根拠もなく、とんでもない決めつけ」「イメージを付けるためだけに質問するのは非生産的」「あたかも不正があるかのような言い方だが、根拠はあるのか」などと反論した。

 また、安倍総理は、望月大臣や上川大臣の献金問題について、補助金交付を「知っていたか、知らなかったかが構成要件」「知らなければ違法行為ではないと法律に明記されており、違法行為ではないということは明らか」と、政治資金規正法違反はないことを強調した。

 

 閣僚らの政治とカネ問題が相次いでいることから、野党各党は、全容解明と任命責任の徹底追及だけでなく、再発防止策を示す必要があるとの認識から、企業・団体献金の禁止を打ち出し始めている。

維新の党は、2月27日、全政党や政党支部、政治家個人の政治資金団体への企業・団体献金の全面禁止する「政治資金規正法改正案」を議員立法で衆議院に提出した。維新の党は自主的な取り組みとして、来年から所属議員らが企業・団体献金の受け取りを禁止する方針を決めている。民主党は、大臣・副大臣・政務官は在任中の企業・団体献金の受け取りを自粛するなどの服務規律を定めた大臣規範の改正が必要との見解を示した。この他の政党も「企業・団体献金禁止と政党助成金廃止を議論すべき」(共産党の穀田国対委員長)、「企業・団体献金禁止の立法化を進めるべき」(社民党の又市幹事長)と述べている。

安倍総理は、維新の党などが求める企業・団体献金の全面禁止について、「政党や政党支部は認められている。民主主義のコストをどう分かち合うかだ」と述べるにとどめた。民主党が主張する大臣規範の改正については、「閣僚は大臣規範の精神をしっかり守っている。今後、変えていく必要はない」と述べた。

 

 

【船舶検査の拡大や日本人救出などについて議論】

 政府は、2月26日に開催された安全保障法制整備に関する与党協議会(座長:高村・自民党副総裁、座長代理:北側・公明党副代表)で、朝鮮半島有事などの周辺事態において、国連安全保障理事会の決議や船舶が帰属する国の同意を得ることを前提に、自衛隊が船舶(軍艦除く)の積み荷や目的地を検査し、必要に応じて航路の変更を要請できると規定している船舶検査活動法を改正して、「国際社会の平和と安定」のために活動する他国軍の後方支援に船舶検査を追加するよう提案した。民間船による核関連物資やテロ目的の武器の海上輸送を阻止することなどを想定して、対象船舶が帰属する国の同意があれば船長の同意がなくとも検査できるよう要件を緩和することや、正当防衛に限って認められている船舶検査の武器使用基準の緩和も求めている。

自民党は、「任意検査だけでは実効性が担保されない。船長承諾のない検査も認めるべき」と強制的な船舶検査を容認するよう求めたのに対し、公明党は、強制的な船舶検査は憲法が禁じる武力行使にあたるため、現行法に沿って「船長の承諾」を必要とする任意検査に限定するよう主張している。また、周辺事態法改正で「周辺事態」という概念が削除されるため、船舶検査も周辺事態に限定されず、活動場所も地理的制約がなくなることへの警戒もあるようだ。

 

 政府は、米軍などに物資提供などの後方支援を行う枠組みの簡素化などの検討も要請した。共同訓練や国際緊急援助活動などで自衛隊と他国軍が物資や燃料を相互に融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)は、日本とACSAを結んでいる米国・豪州以外の対象国とACSAを締結した場合、現在、個別に自衛隊法を改正して逐次、協定内容を盛り込んでいる。こうした国内法制定手続きを簡略化するため、物品や役務を提供する根拠となる条文を自衛隊法に盛り込み、政府間合意だけで支援を可能にするとしている。また、弾道ミサイルへの共同対処や海賊対処活動も実施対象とするほか、協力範囲も情報提供や警戒監視にひろげるようだ。ただ、公明党などから「政府間の取り決めだけで提供が続く事態は避けるべき」「国会承認は残すべき」などと国会関与は必要との声も出ている。

 

自衛隊による海外での日本人救出については、自衛隊法を改正して、(1)領域国の受け入れ同意、(2)領域国政府の権力が維持されている範囲などの一定の要件を満たせば、現地の警察当局などによる救出が期待できない場合などに限って自衛隊が日本人救出をできるようにする案も示した。派遣前の国内手続きを厳格化するため、国家安全保障会議(NSC)で議論したうえで閣議決定することを義務づけている。また、正当防衛などに限定されてきた自衛隊の武器使用について、国家または国家に準ずる組織ではないことを条件に、警察的活動に限って使用できるようにするとしている。

 これに対し、公明党は「積極的に救出や奪還をするのは、武器の使用権限などから次元が異なる」「自衛隊には人質奪還まで担う能力はない」と慎重姿勢を示した。武器使用が武力の行使にあたらない担保として「受け入れ同意が安定的に維持されている」点を重視しており、「自衛隊を派遣できる判断の基準を明確にしてほしい」と注文した。政府は、自衛隊派遣を認める場合の基準を策定する予定だ。

 

 このほか、与党協議で焦点となっている自衛隊の海外派遣を可能にするための恒久法について、政府は、「これまで通り特別措置法で対応するべき」と恒久法制定に慎重な公明党が自衛隊の海外派遣について厳格な要件を求めていることに配慮して、一定の歯止めがかかるよう、憲法9条が禁じる武力行使に抵触しない、海外派遣された自衛隊の現地での武器使用基準について正当防衛などに限る方向で検討しているという。公明党の北側副代表は、(1)国際法上の正当性、(2)国民の理解と民主的な統制、(3)自衛隊員の安全確保の3原則を踏まえて法制化を検討する考えを示しており、今後、容認も視野に、派遣基準など条件面の議論について行っていくようだ。

 

 

【国会監視機関が始動へ】

 2月26日、昨年12月に施行された特定秘密保護法にもとづいて政府の運用状況を監視する「情報監視審査会」について、衆議院本会議で、委員8人の人事を与党などの賛成多数により選任した。委員は、議席数に応じての配分となり、額賀福志郎、岩屋毅、平沢勝栄、松本純、大塚高司(以上、自民党)、漆原良夫(公明党)、松本剛明(民主党)、井出庸生(維新の党)の各衆議院議員が選任された。会長には、初会合で額賀衆議院議員が互選される予定だ。

衆議院本会議に先立って開催された衆議院議院運営委員会では、特定秘密を扱う国会職員の適性評価に関する運用基準について決定した。同基準は、秘密漏洩防止を目的としており、犯罪歴、節度ある飲酒、経済状況など7項目について調査するとしている。

参議院では、各党への委員配分などをめぐって対立しているが、与野党で委員配分のあり方を調整、適正評価基準を定めて身辺調査などを実施したうえで委員選出、3月中旬にも衆参でそれぞれ初会合を開催する方針でいる。これにより、与野党対立などで遅れていた国会の監視機関の始動にメドがつくこととなる。

 

 

【採決日程をめぐる与野党攻防に注視を】

衆議院予算委員会での審議が大詰めを迎えつつある。今週3日に外交・安全保障などをテーマに集中審議、4日に来年度予算に関する地方公聴会、5日に衆議院予算委員会での一般的質疑、6日に地方創生などをテーマにした集中審議がそれぞれ開催される。来週10日に衆議院予算委員会分科会、12日に格差問題を含めた社会保障政策をテーマにした集中審議が開催される予定だ。

今後、来年度予算案の採決日程をめぐる与野党攻防がより活発となっていくだろう。年度内成立をめざす与党は、来週後半にも衆議院を通過させる方針だ。窮屈な日程により困難な情勢となりつつあるため、遅くとも統一地方選前半戦が告示される4月3日までには成立させたいとしている。一方、民主党など野党は、閣僚の政治とカネ問題で攻勢を強めるとともに、4月の統一地方選を前に党としての独自性を打ち出そうと躍起になっている。ただ、野党側の質疑がスキャンダル追及・政権批判に集中し、政策論争があまり深まっていかない状況にあるだけに、野党内でも来年度予算案の衆議院通過にあたって徹底抗戦などの国会戦術はなるべく控えたほうがいいのではとの声が出始めているようだ。

引き続き閣僚の政治とカネ問題の行方を抑えつつ、水面下での心理戦も含め、与野党の駆け引き動向を見極めることが重要だろう。