【1億総活躍国民会議、初会合を開催】

 先週10月29日、安倍総理が新たな看板政策として打ち出した1億総活躍社会を実現するため、関係閣僚・民間議員らが具体策を検討する「1億総活躍国民会議」の初会合が開催された。議長の安倍総理は「(新三本の矢で)明確な的の設定を行った」と強調したうえで、「それぞれ希望がかない、生きがいを持てる社会をつくりたい。省庁の枠組みを超えて、従来の発想にとらわれない新たな案を取りまとめていただきたい」と要請した。

 民間議員からは、検討課題として外国人の介護人材の活用拡大(榊原定征・日本経団連会長)や、若年者の就職支援(増田寛也・日本創成会議座長、元総務大臣)、結婚・出産を機に離職した女性の再就職促進のための環境整備(菊池桃子・戸板女子短大客員教授)のほか、結婚支援、出産・育児に関する相談機関の設置、社会保障費の抑制に向けたスポーツ振興の重要性などが提起された。また、財政健全化の方針を維持しつつ歳出改革や社会保障の重点化・効率化などを進め、少子化対策や介護問題に対応する固定的な財源を確保することが必要(三村明夫・日本商工会議所会頭)との意見も出た。

 

 国民会議では、11月末の緊急対策(第一弾)とりまとめや、中長期的な総合的対策と2020年までの具体的工程表からなる政策パッケージ「日本1億総活躍プラン」を来年春ごろまでに策定する方針を決めた。また、新3本の矢のうち、名目GDP(国内総生産)600兆円の達成をめざす「強い経済」関連は、甘利経済再生担当大臣が所管する日本経済再生本部や経済財政諮問会議などで提言をとりまとめる方向も確認した。国民会議は、緊急対策のとりまとめに向け、3回程度の会合開催や、若者へのヒアリング実施を予定している。

緊急対策には、経済施策や、若者の就労支援策などを盛り込む方針だ。「希望出生率1.8」関連では、保育所に入れない待機児童を解消するための保育所整備などを検討する。「介護離職ゼロ」関連では、特別養護老人ホームなど介護施設や在宅サービスの整備・充実、介護人材の確保、介護者1人につき最大93日までの介護休業中に支払われる「介護休業給付金」(現在、休業前賃金の40%)の引き上げなどを検討されている。このうち、介護休業給付金の引き上げは、2日の厚生労働省・労働政策審議会部会で労使代表が大筋で了承された。介護休業給付金の引き上げは、育児休業(休業前賃金の67%)との差を縮めるねらいから、50%・60%・67%のいずれかにするという。また、介護休業を取得しやすくするため、原則1回の介護休業を分割取得できるようにすることも検討されている。厚生労働省は、改正法案を来年の通常国会に提出することを念頭に、引き上げ幅など詳細を年末までに決定するようだ。

 

ただ、緊急対策とりまとめ期間が1カ月弱と少ない。幅ひろい意見を反映したり、新たに政策づくりをしたりすることが難しく、関係省庁は、既存政策や概算要求ではじかれた政策などを持ち寄るなどして調整作業を進めているようだ。このことから、緊急対策が「従来の政策の寄せ集めになりかねないのではないか」、「(来年7月25日に任期満了を迎える参議院選挙を念頭に)見栄えする対策が優先されるのではないか」との見方も出始めている。規制改革や歳出改革といった痛みを伴う改革も含め、根本的な問題解決に資する政策や実効性のある政策をどこまで打ち出せるかはいまのところ不透明だ。

このほか、政府は、「活力あふれる超高齢化社会の実現に向けた取組に係る研究会」などを新たに設置し、高齢者の知識・経験・技術・技能などを社会に活かすための施策や、高齢者が元気に暮らせる環境の整備などを検討していく予定だ。具体的な検討課題として、定年後の再就職先や社会貢献活動などを紹介する仕組みや、健康を維持する医療・介護サービスの充実などがあがっている。

 

 

【農林水産省、TPP影響分析を発表】

日米など交渉参加12カ国が大筋合意した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)で、生産者などの間で不安が広がっていることから、農林水産省は、関税撤廃・引き下げなどによる農林水産物への影響を分析した。そして、29日、米麦や甘味資源作物、一部の野菜・果実など21品目への影響に関する分析結果と、影響を抑える対策の方向性について発表した。農林水産省は、これら21品目を含む約40品目の影響分析を進めている。

 日本政府が外国産米の輸入を一元管理する「国家貿易制度」や関税を維持したコメは、多くの例外措置を確保したとして「新設する輸入枠(米国・オーストラリアに計7.84万トン)以外の輸入増大は見込み難い」と予測している。ただ、今後、新設の輸入枠で国内の米の流通量が増えれば、国産米全体の価格水準が下落することが懸念されるとして、備蓄制度の見直しなど国産主食用米生産への影響食い止めや、さらなる競争力強化が必要とした。同じく国家貿易制度や関税が維持される小麦や大麦も、新設の輸入枠分が現行のカレントアクセスによる輸入の一部が置き換わるのが基本であり、国産小麦に置き換わるものではないとして、「輸入の増大は見込み難い」と分析している。ただ、マークアップ(輸入差益)の削減に伴う輸入麦の価格下落で、国産小麦の販売価格に影響を及ぼす懸念がある点を考慮して、競争力強化や国産の安定供給に向けた環境整備が必要とした。

 

 糖価調整制度が続く砂糖は、「テンサイやサトウキビの生産に特段の影響は見込み難い」としつつも、砂糖代替品となりえるココア粉など「加糖調整品」は品目ごとに計9.6万トンの輸入枠が設定されるため、安価な加糖調整品の流入で、糖価調整制度の安定運営に支障が生ずる懸念があると指摘した。糖価調整制度や関税が維持されるでんぷんも、新設する輸入枠(TPP参加国対象の輸入枠7500トン)は現行の低関税輸入枠の範囲内であり、「TPP合意による影響は限定的」だとした。ただ、関税引き下げの影響は、将来的にゼロではないため、一部で低価格な外国産の輸入も懸念されるとも指摘している。

 このほか、麦芽・小豆・インゲン・ラッカセイ・パイナップル・茶・コンニャクは、価格下落の懸念を指摘しつつも、「特段の影響は見込みがたい」とした。オレンジ・リンゴ・サクランボ・ブドウ・加工原料用トマト・カボチャ・アスパラガス・タマネギ・ニンジンは国産と輸入品との時期的なすみ分けや、国産との用途の差別化などが図られているとして「TPP合意による影響は限定的」と分析した。ただ、一部の農産物で、関税の撤廃・削減による輸入相手国の変化など、長期的には価格下落なども懸念されるとしている。

 

海藻類を除く大半の品目で関税撤廃となる水産物のうち、アジ・サバ・マグロなどの主要品目は、TPP参加国からの輸入が少ないことや漁獲規制が実施されていることなどを理由に「TPP合意による影響は限定的」と分析している。ただ、長期的には国産品の価格下落も懸念されるとし、生産性向上など体質強化策の検討が必要であるとした。現行税率から15%の関税削減となるノリやワカメなど海藻は、中国や韓国からの輸入が多いことから、「特段の影響は考えにくい」とみている。加工品向けのカツオ・キハダマグロ・冷凍ベニザケなどの一部品目は、国産品と輸入品の競合が懸念されると指摘した。

牛肉・豚肉、乳製品などへの影響分析結果は、11月4日にも公表される。牛肉・豚肉は、関税削減を長期間で行うことや緊急輸入制限(セーフガード)を確保したことを挙げて、輸入の急増は当面考えにくいとするようだ。ただ、長期的には国産品の価格下落も懸念されるため、体質強化策やコスト削減などの検討が必要となりそうだ。乳製品は、バターや脱脂粉乳のTPP参加国向け輸入枠の規模が、近年の追加輸入実績の範囲内であるとして「無秩序に輸入されることはなく、乳製品全体の国内需給への悪影響は回避の見込み」となるようだ。

 

 政府は、こうした影響分析の結果などを踏まえ、11月25日にも関連対策大綱をとりまとめる。政府は、農業分野への影響を最小限にするため、国内農業の体質・競争力の強化などによる「攻めの農業」と、セーフティーネットの拡充と農家の経営安定化を進める「守りの農業」の両輪から検討していく方針で、農業生産の中核となる担い手の育成、農地集約による規模拡大、農林水産物の高付加価値化、輸出促進などに取り組む考えだ。

また、自民党や公明党は、政府の対策大綱への反映をめざして、農林水産業対策を中心に知的財産や環境など幅ひろい分野の総合対策を盛り込んだ提言を、それぞれ11月20日までにとりまとめ、政府に申し入れる方針でいる。29日に開かれた自民党TPP総合対策実行本部の初会合で、本部長の稲田政調会長は「金額ありきの議論ではなく、強い農業をつくり、地方創生や経済再生につながる議論をしていく」と、バラマキと批判されないよう、安易な予算膨張を抑え込み、攻めの農業に重点を置いた提言をまとめる方針を示した。ただ、自民党内には、参院選への影響を回避するため、生産者保護策など従来型の財政出動を求める声も根強い。また、「バラ色の説明で具体的な経済効果が分からない」「生産者の納得が得られにくい」などと詳細な説明を求める声も相次いでいる。実行本部には、農水族の実力者らもおり、補正予算案や来年度予算案の編成をにらんだ綱引きが激しくなっていきそうだ。

 

 

【補正予算案も編成へ】

 安倍総理は、1億総活躍社会の実現に向けた緊急対策やTPPの大筋合意を受けた国内対策の一部を先行して実施する費用のほか、災害対策などを盛り込んだ今年度補正予算案の編成を11月中に指示する。これを受け、11月下旬にまとまる緊急対策や対策大綱にもとづき、年末までに補正予算案の詳細を詰める。

1億総活躍社会の実現に向けた緊急対策として、介護人材の育成などに向けた基金の積み増しや、介護施設や保育所を拡充するために国有地の安価な貸し付け、3世代同居を促すための住宅補助などがあがっている。政府が目玉と位置付けている「新たな子育て支援パッケージ」(0.1兆円規模の予定)は、来年度予算案に計上するようだ。TPPの大筋合意を受けた国内対策として、農林水産品の海外輸出を支援する施策や、来年度予算案の概算要求で農林水産省が増額を要求した農業農村整備事業の一部前倒しなどが検討されている。災害対策関連では、9月の関東・東北水害の復旧や河川整備に重点的に置いた災害対策などを盛り込む。

 

補正予算案は、総額3兆円以上の規模となる見通しで、昨年度決算剰余金(1.57兆円)の一部や、消費税や所得税など今年度予算の税収上振れ分などを、補正予算案の財源に充てる。財政再建への懸念が強まることを避けるため、3兆円台半ば以内なら国債の追加発行なしでも可能と判断したようだ。

ただ、内閣府が11月16日に発表する今年7~9月期国内総生産(GDP)速報値で、景気停滞・悪化が顕著となれば、景気下支えのための経済対策を追加で盛り込み、補正予算案の上積みすべきとの声が政府・与党内から強まる可能性がある。いまのところ、麻生副総理兼財務大臣は「雇用や所得環境は着実に回復基調にある」として現時点で景気対策は不要との立場を崩していない。財務省もバラマキ批判を受けかねないとして慎重姿勢だ。一方、与党内からは、低所得者に数万円を給付する案など個人消費の喚起策を求める声も出ている。このため、安倍総理は、速報値などを見極めたうえで、補正予算案の規模などを判断するようだ。

 

 政府内では、来年度予算案の編成に関する議論も本格化している。麻生大臣の諮問機関である財政制度等審議会は、11月下旬をメドに歳出抑制の具体策を盛り込んだ建議(意見書)を取りまとめるため、30日に財政制度分科会を開き、来年度予算案の編成に向けた議論をスタートさせた。麻生大臣は「財政健全化計画の成否は、2016年度予算に懸かっている。社会保障をはじめ歳出改革を具体化していく必要がある」と、来年度予算が2020年度に基礎的財政収支の黒字化をめざす財政健全化計画の初年度にあたり、一般会計の3割超を占める社会保障関係費の抑制・抜本的見直しなど歳出改革が予算編成の論点だと強調した。

財務省は、主要焦点となる医療サービスなどの公定価格「診療報酬」の引き下げを主張している。診療報酬の本体部分(医師・薬剤師の技術料)が賃金・物価動向に比べて高く、増額も続いていることから、マイナス改定を求めた。また、薬剤師が過去の処方歴に応じて患者にきめ細かな服薬指導ができる「かかりつけ薬局」を優遇し、薬の使い過ぎを抑制するため、指導の充実度に応じて調剤報酬を算定するしくみの導入など、ゼロベースの見直しを提案している。さらに、医薬品の値段などの薬価も後発医薬品(ジェネリック薬)の普及などに伴う市場動向を反映してマイナス改定とすることや、特許が切れた先発薬(新薬)の薬価引き下げ、処方箋なしでも買える市販品類似薬を保険適用外とすることのほか、将来的には安価な後発薬の価格までしか保険適用を認めず、特許切れ先発薬との差額を自己負担とすることなども提案している。

 

こうした改訂案を財政制度分科会に提案し大筋で了承をえた財務省は、11月中に診療報酬の引き下げ幅を固め、厚生労働省に求めていく方針だ。しかし、厚生労働省は、医療の質の低下を警戒して引き下げに慎重で、参院選への影響を懸念する自民党の厚生労働族らの激しい抵抗も予想される。年末にかけて、厚生労働省との調整が難航しそうだ。

 このほか、リーマン・ショック後に地方の景気対策として導入された雇用対策事業などの予算枠「歳出特別枠」(2015年度予算約0.85兆円)の廃止・縮減を総務省に、地方創生の取り組みを後押しするために経費を積算せずに一括で歳出枠を確保している「まち・ひと・しごと創生事業費」(2015年度予算1兆円)の使途に関する事後検証を内閣官房に、公立小中学校の教職員定数を9年間で約3.7万人の削減を文部科学省にそれぞれ求める方針を固めている。所管する省や諮問機関、地方自治体などがそれぞれ強く反発しており、今後、調整が難航しそうだ。 

 

また、政府の行政改革推進会議は、歳出のムダ削減を図るため、原子力発電を含むエネルギー・地球温暖化対策事業や、2020年東京オリンピック・パラリンピック便乗事業など、8府省の計55事業<来年度予算案での概算要求総額13.6兆円>を点検・検証する「行政事業レビュー」を実施する。行政事業レビューを11月11~13日に実施し、その内容をインターネットで中継する。

エネルギー関連では、日本原子力研究開発機構の運営費交付金、所管するトラブルが相次ぎ運転停止中の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)や運用実績のないまま維持管理費がかさんでいる使用済み核燃料輸送船、石油の国家備蓄施設の管理委託費などを取り上げる。2020年東京オリンピック・パラリンピックに便乗した事業とみる文部科学省所管の日本スポーツ振興センター運営費交付金の必要経費(163億円)や、全国各地で文化プログラムを推進する文化庁のリーディングプロジェクト推進費(13億円)などだ。このほか、国際宇宙ステーションやスーパーコンピューターの後継機開発費も対象となっている。「検証結果を財務省の予算査定に反映させてほしい」(河野太郎・行政改革担当大臣)として、来年度予算案での縮減を求めていく方針だ。

 

 

【軽減税率の対象・財源をめぐって与党協議が平行線】

2017年4月に消費税率10%への引き上げに伴って負担緩和策として、飲食料品・生活必需品の消費税率を低く抑える「軽減税率」の導入をめぐっては、自民党と公明党が、27日に与党税制協議会・軽減税率制度検討委員会(座長:宮沢洋一・自民党税制調査会長)を開き、具体的な制度設計に向けた議論を再開させた。

与党協議では、消費税率引き上げ時に混乱なく軽減税率を導入するとの認識を共有したうえで、11月中旬にも大筋合意することをめざすことで一致した。また、事業者の事務負担軽減策として、まず公明党が提案している現行の帳簿や請求書に軽減税率の対象品目に印を付ける「簡易な経理方式」でスタートし、将来的には複数税率で事業者が品目ごとに税率・税額を明記する「インボイス方式」へ移行することも確認した。

 

 医療・介護や保育などの自己負担の合算額に上限を設定し上限を超えた分を国が給付する「総合合算制度」の実施を見送ることで捻出できる年4000億円程度を、軽減税率導入に伴う穴埋め財源とすることでは一致した。しかし、軽減税率の導入に伴う税収減をこの範囲内にとどめたい自民党・財務省と、「痛税感を緩和する意味では、幅ひろい品目を対象にすべき」であり、税制全体で穴埋め財源を捻出する方策を模索していく必要があると訴える公明党との主張の隔たりが改めて浮き彫りとなった。

自民党と財務省は、軽減税率の導入当初は、対象品目を精米(税収減400億円)などに絞り込み、残る3600億円分を住民税が課税されない低所得者への現金給付に充てる。次年度以降、段階的に生鮮食品(税収減約3400億円)まで対象をひろげていく案を想定している。これに対し、公明党は、対象品目を「酒を除く飲食料品(外食含む)」(税収減1.3兆円)や、「生鮮食品と加工食品」(税収減約1兆円)を主張している。これらの穴埋め財源として、総合合算制度の実施見送りに加え、軽減税率導入までの臨時措置として低所得者に現金を配る簡素な給付措置分をあわせた計約8000億円の財源案を示した。さらに、たばこ税増税などで上乗せして、1兆円分をめざす考えだ。

 

 29日と30日に開かれた与党協議でも対象品目と穴埋め財源について協議したが、自民党が、簡素な給付措置は軽減税率実施後に廃止すること前提とした措置で「安定財源にならない」うえ、社会保障制度の安定・充実と財政再建の両立をめざす社会保障・税の一体改革で増税分5%の税収をすべて社会保障分野に充てるとともに、一体改革の枠内で低所得者対策を行うことが基本で「社会保障と税の一体改革や財政再建のフレームを変えるような財源は使わない」(宮沢調査会長)として、4000億円程度からの上積みは事実上困難との認識を改めて示したため、両党の主張の隔たりは埋まらなかった。いまのところ、自民党も公明党も譲歩する姿勢をみせておらず、決着できる糸口を見出すには至っていない状況だ。

 

 2016年度税制改正のうち、軽減税率の制度設計の議論を優先して取り組んでいるため、ビール系飲料の酒税見直しや自動車関連税制などの税制改正協議は、いまのところ停滞したままだ。軽減税率の制度設計をめぐって与党協議が平行線をたどっているうえ、参院選を前に支持団体と衝突する恐れから税制改正論議を可能な限り先送りすべきとの意見が与党内で高まっていることもあり、関係団体との調整が難しい案件を中心に、税制改正を先送りとなる可能性も高まっている。

税制改正論議の主要焦点のうち法人実効税率(国・地方)については、政府がさらなる引き下げを行う方向で検討に入った。2016年度に32.11%から31.33%に引き下げることが決まっているが、経済再生や企業の国際競争力向上の観点から、穴埋め財源を捻出して30%台後半まで引き下げ幅を拡大することをめざしている。税収減の穴埋め財源をどのように確保し、政府目標の20%台への引き下げに向けた具体的道筋を同時に示すことができるかが今後の焦点となりそうだ。

 

 

【閉会中審査での議論に注目を】

 安倍総理は、臨時国会を召集するか否かについて「まだ何も決まっていない」としつつも、「1億総活躍の策定や経済、財政に万全を期すことが必要」「来月以降、国際社会にとって重要な会議が目白押しだ。来年度の予算編成も進めなければならない。こうした事情も考慮しながら最終的に決定したい」「要請されてから実際に召集するまでかなりの日程を要した例もあり、合理的な期間内に通常国会を召集した例もある」と慎重姿勢を示している。これに対し、野党側は、通常国会の前倒しよりも臨時国会を召集すべきだと主張し、政府・与党の臨時国会見送り方針を批判している。

 このようななか、野党が要求した閉会中審査が10日に衆議院予算委員会で、11日に参議院予算委員会でそれぞれ行われる予定だ。閉会中審査では、野党がどのような観点から政府側を問い質し、安倍総理はじめ関係閣僚からどのような答弁を引き出すのだろうか。閉会中審査でどのような議論が展開されるのかに注目しておきたい。