【所信表明演説の省略に野党が反発】

 先週16日、衆参両院の議院運営委員会理事会で、菅官房長官は、通常国会を1月26日に召集する日程を伝達した。また、経済対策を裏付ける補正予算案を26日に提出する方針も伝えた。野党から異論がでなかったことから、通常国会は6月24日までの150日間に確定した。

 

 政府・与党は当初、26日に安倍総理が所信表明演説を行い、来年度予算案を2月13日に国会提出のうえ、改めて安倍総理が施政方針演説を行う日程を描いていた。しかし、来年度予算案の審議入りが補正予算の成立後(2月中旬)と国会日程が窮屈なものとなるため、今年度内成立は困難な情勢となっている。このことから、来年度予算の年度内成立をめざす方針を確認した政府・与党は、安倍総理の所信表明演説を省略し、来年度予算案の審議日程を少しでも繰り上げたい考えだ。所信表明演説を省略した場合、補正予算の成立が2日程度の前倒しになる可能性があるとみられている。

 

 これに対し、民主党など野党は、総選挙により新内閣が発足した以上、所信表明演説を行うのが恒例と反発した。

与野党は、16日の衆議院議院運営委員会理事会で、26日に麻生財務大臣による財政演説を行うことで合意した。与党側は、与野党合意を根拠に、安倍総理による演説は来年度予算案の提出後に行う施政方針演説に一本化することが事実上決まったと説明する。強行突破も辞さない構えだ。一方、野党側は「所信表明演説をしないとは決めていない」と、補正予算案の早期審議入りを求める与党を牽制する。議院運営委員会理事会を21日に改めて開催するよう要求する方針だが、野党内にも、施政方針演説は行われるので、所信表明演説の実施にこだわるのは得策ではないとの声もある。

 

 

【当面、綱渡りの国会運営に】

安倍総理は、通常国会を「改革断行国会」と位置づけ、当面、景気を下支えする補正予算、および地方創生・女性の活躍推進、成長戦略の断行などを裏付ける来年度予算の早期成立に全力を挙げていく方針でいる。

 

 4月の統一地方選を前に、来年度予算を安倍内閣の掲げる「地方創生」の財政的な裏付けをアピールしたい与党は、3月上旬までには衆議院を通過させ、来年度予算の成立を確実にさせたい考えだ。また、後半国会の目玉法案とされている集団的自衛権行使の限定容認を含む安全保障関連法案の審議への影響も最小限にとどめたいとの思惑もある。来年予算の成立が次年度にずれ込んだ場合でも、統一地方選の前半戦の告示が終了する4月3日までには成立させることをめざす方針を固めている。

 

政府・与党は、衆議院予算委員会での審議日数を14日程度と見込み、順調に進めば、3月10日までに衆議院通過・参議院送付できるとしている。送付日から30日以内に参議院側で議決に至らなかったり、否決された場合、憲法第60条第2項で定める衆議院優越の規定もとづいて自然成立することが可能となる。このことから、政府は、年度内成立しない場合に備え、数日から10日程度の暫定予算案の編成準備に入っている。

16日に行われた与野党国対委員長会談で、佐藤・自民党国対委員長は補正予算の早期成立や来年度予算の今年度内成立、雇用改革や農業改革、岩盤規制改革などを進める関連法案などの速やかな審議への協力を求めた。これに対し、安住・民主党国対委員長代理は「丁寧な国会運営をお願いしたい」と与党側をけん制した。

 

野党側は、地方統一選を前に、政府・与党との対決姿勢を鮮明にしたいとの思惑がある。政府の予算案について、介護報酬の切り下げや子育て世帯への給付金減額を行ったことなどを踏まえ「弱者切り捨て」「社会保障改革が骨抜きにされている」などと批判しているほか、地方創生の具体策を欠いたままでの予算付けなど「バラマキでメリハリがない」とも批判しており、政府側の見解を徹底的に質していきたい考えだ。また、十分な審議日程を求めるなど、早期成立をめざす与党を強く牽制したいとしている。

さらに、民主党などは、政府が再提出する予定の「労働者派遣法改正案」などを対立法案として位置付けるとともに、集団的自衛権行使の限定容認を含む「安全保障関連法案」でも主張の違いを浮き彫りにしていきたいようだ。

 

与党は、統一地方選が控えているだけに、強硬路線をとって野党と全面対決に突入することはなるべく回避したいとしている。とはいえ、予算委員会の審議が紛糾したり、野党の要求などが相次げば、来年度予算の成立が大きくずれかねない。当面、政府・与党は綱渡りの国会運営が余儀なくされそうだ。

 

 

【与野党攻防の行方に注視を】

来週26日の通常国会召集を前に、国会日程などをめぐって与野党の駆け引きが行われている。当面の予算審議・採決の行方を左右しかねないだけに、国会運営をめぐる与野党攻防にも注視しておくことが大切だろう。

 

なお、与党内では、様々な検討作業がスタートしている。今週20日から、地域農協に対するJA全中の指導・監査権限を廃止して公認会計士による監査に切り替えるなどの農協改革案に関する自民党内の議論がスタートする。

来月からは、集団的自衛権行使の限定容認を含む安全保障関連法案に関し、その全体像の協議を自民党と公明党が再開させるほか、政府が今年の夏までに取りまとめる予定の新たな財政健全化計画に関連して、2020年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字に向けた歳入・歳出改革に関する自民党内の議論がスタートするという。

こういった政策争点が、通常国会前半の論戦に急浮上する可能性もある。与野党攻防の行方と予算審議・採決への影響だけでなく、与党内の検討動向も並行してチェックしておいたほうがいいだろう。