9月2日の自民党役員人事、3日の内閣改造に向け、政府・自民党内の動きがより活発となっている。自民党は、閣僚経験のない当選5回以下の所属議員(衆議院)を対象に、副大臣・政務官や国会の委員長、部会長など党役員などの役職希望についての聞き取り調査を今週中に実施する。参議院自民党は、候補者リストを幹事長室でまとめた。これらの結果にもとづいて、新閣僚が副大臣や政務官を4~5日に人選するようだ。

 

焦点となっている石破幹事長の処遇をめぐっては、今週中にも安倍総理と石破幹事長が会談するという。

安倍総理は、幹事長交代と新設する安全保障法制担当大臣への就任を石破氏に正式要請する意向だ。集団的自衛権行使の限定容認を含む安全保障関連法案を来年の通常国会に提出する予定で、その国会審議を乗り切るためにも、安全保障政策に詳しく答弁が安定している石破氏の協力が不可欠としている。

また、来年9月の任期満了に伴う自民党総裁選での再選をにらんで、石破氏を党の人事や資金の配分などに大きな権限を持つ幹事長職から外して、影響力を削いでおきたいとの思惑もある。安倍総理は、石破幹事長が安全保障法制担当大臣への就任要請を断った場合、他の閣僚ポストや党役員への起用を見送る考えだ。

 

一方、石破幹事長は、安全保障政策で安倍総理の考え方と相違があることなどを理由に、担当大臣の就任要請を固辞する意向だ。石破氏とその周辺は、幹事長留任を望んでいる。

石破幹事長は、自民党が2012年の衆院選公約に掲げた「国家安全保障基本法案」を制定して集団的自衛権の行使を包括的に容認したうえで、自衛隊の行動を規定し行使判断について国会が最終責任を持つべきとの持論を持っている。基本法案制定に消極的で、現行の個別法改正で進めようとする安倍総理と見解の隔たりがあり、7月の閣議決定にも不満をにじませる発言を行っているという。

また、集団的自衛権の行使容認をめぐる法案審議で国会答弁の責任者となる担当大臣に就任することで、野党や世論の批判の矢面に立つことになれば、石破氏のイメージダウンにもつながりかねない。石破幹事長は総裁選に出馬する意向で、安倍総理と距離を置いて自由な立場で動いた方が得策だと判断しているようだ。

 

 安倍総理は、石破幹事長との会談で説得したい考えだ。石破幹事長も「首相からきちんと話を聞いてからだ」とも語っており、慎重に判断する姿勢をみせている。ただ、会談で両者が折り合うことができなければ、石破氏が無役となる可能性もあるようだ。一定の支持を集めている石破氏が安倍内閣と距離を置くことになれば、政権基盤や党の結束にも影響が及びかねない。会談を受けて人事構想に変更が生じるかも含め、安倍総理が石破氏をどうのように処遇するかが注目ポイントとなりそうだ。

 

 

 急激な人口減少と超高齢化、地方経済の低迷などの課題に対応するため、省庁横断的に地域振興策を策定する「まち・ひと・しごと創生本部」(本部長:安倍総理、副本部長:官房長官、地方創生担当大臣)の立ち上げに向け、有識者から直接意見を聴く懇談会を26日と27日に開催する予定だ。

地方重視の姿勢を打ち出したい安倍総理は、9月3日の内閣改造で地方創生担当大臣を総務大臣や官房長官が兼務ではなく、単独ポストとして新設し、担当大臣任命後には速やかに創生本部を発足・始動させたい考えだ。政府は、担当大臣任命・創生本部発足後、直ちに本格的な作業に着手できるよう準備を進めるねらいから、有識者ヒアリングを実施するという。

 

 

 今月末には来年度予算に係る概算要求が締め切られる。来年10月の消費税率10%への引き上げについての判断が今年末に控えており、法人実効税率引き下げの詳細も決まっていないため、税収見通しが立たず、来年度の歳出上限額は設けられていない。高齢化で社会保障費が膨らむほか、成長戦略や地方創生などで要求額を積み増していることから、各省庁の要求総額(一般会計)が100兆円を突破する見通しだ。

 内閣改造後、予算編成作業が本格化する。各府省別の概算要求内容、とりわけ地方活性化などの成長戦略に重点配分する「新しい日本のための優先課題推進枠」(上限3.9兆円)にどのような要求・要望を出すだろうか。来年度予算がメリハリのついたものとなるかを見極めるためにも、まずは各府省の要求・要望内容について確認しておくことが大切だろう。