先週21日、政府が憲法7条にもとづく解散詔書を閣議決定し、その後に開かれた衆議院本会議で解散となった。これにより、第187臨時国会は会期末(11月30日)を待たずに事実上の閉会となった。

今回の解散・総選挙を「大義のない身勝手な解散」などと批判する民主党や維新の党などは、衆議院本会議で伊吹議長が解散詔書を読み上げた後、慣例の万歳三唱をしないことで対決姿勢を鮮明にした。与野党各党とも事実上の選挙戦に突入している。


*衆参両院の本会議や委員会での審議模様は、以下のページからご覧になれます。

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【政府提出法案、成立率は67.7%】

与党は、21日の衆議院解散を前に、以下の主要法律を駆け込みで可決・成立させた。

民主党など野党は、安倍総理が衆議院解散を表明したことに「解散を決めた内閣のもとでの審議には応じられない」「信を問うとは国会の機能がいらないということだ」(民主党の川端国対委員長)などと反発して、緊急性の高い法案など一部を除き審議・採決を欠席した。また、当初、内閣不信任決議案を提出して安倍総理との対決姿勢を鮮明にすることも野党内で検討されていた。しかし、決議案そのものが衆議院を解散する口実ともなりかねないとの懸念が生じたため、決議案提出を見送ることとした。

 

まち・ひと・しごと創生法

 地方創生の基本理念などを定め、地方での魅力ある雇用創出や結婚・出産・育児の環境整備などを着実に実施するよう客観的指標を盛り込んだ平成27年度からの5カ年計画「総合戦略」の策定を国・地方自治体に努力義務を課す

○改正地域再生法

 地域支援をめぐる各省への申請窓口を一元化するとともに、地域活性化に取り組む自治体を支援

○改正外国人漁業規制法・漁業主権法<議員立法>

 小笠原諸島周辺海域での中国漁船によるサンゴ密漁問題を受けて、外国人による日本領海内などでの違法操業や、排他的経済水域(EEZ)で無許可操業などに対する罰則強化

○空家対策推進特別措置法<議員立法>

 国土交通省・総務省に基本方針策定を義務付けるほか、自治体による固定資産税納税情報を活用した所有者調査や立ち入りを可能にし、所有者に撤去・修繕に係る命令権限を付与

○改正薬事法<議員立法>

 検査・販売停止命令を出せる危険ドラッグの対象を拡大し、全国一律で販売・広告の禁止などの規制・罰則強化

 

臨時国会では、閣僚の政治とカネをめぐる疑惑追及などで法案審議が停滞し続けたため、政府が新たに提出した31法案のうち成立したのは21本にとどまった。継続法案では、改正テロ資金提供処罰法や、専門的有期雇用労働者等特別措置法が成立している。

 

 

【重要法案も審議未了で廃案、来年の通常国会で再提出へ】

解散のあおりを受け、重要法案を含む以下の法案などが審議未了のまま廃案となった。

成立できなかったこれら法案は、来年の通常国会で再提出して成立をめざすこととなる。通常国会で審議されれば、成立は来年度予算・予算関連法などが成立する来年4月以降になる見通しだ。

 

○女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案

 女性の採用・昇進機会を増やす取り組み加速を促すため、従業員301人以上の大企業、国・地方自治体に、採用者や管理職に占める女性割合、勤続年数の男女差などを把握したうえで、自主判断で最低1項目の数値目標を盛り込んだ行動計画の作成・公表を義務化

○労働者派遣法改正案

 企業の派遣受け入れ期間の上限規制を撤廃(最長3年、一部の専門業務除く)する一方、派遣労働者一人ひとりの派遣期間の上限は原則3年に制限して、派遣会社に3年経過した後に派遣先での直接雇用の依頼や、新たな派遣先の提供などの雇用安定措置を義務化

○国家戦略特区法改正案

 外国人の起用要件の緩和など、国家戦略特区でのさらなる規制緩和の追加

○五輪・パラリンピック特別措置法案

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、専任の五輪担当大臣を新設するため閣僚枠を拡大

○風俗営業法改正案

 クラブやダンス教室に係る規制の緩和

○特定複合観光施設区域整備推進法案<議員立法>

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の整備の推進

 

 このほか、19日、与野党8党は、6月に施行された改正国民投票法で憲法改正国民投票の投票年齢を18歳以上に引き下げることに伴う措置として、選挙権年齢を現行の20歳以上から18歳以上に引き下げるとともに、未成年者が買収などの悪質な選挙違反をした際には成人と同じ刑事裁判を受けさせることで合意し、衆議院に会派を有しない新党改革を除く7党で公職選挙法改正案<議員立法>を衆議院に共同提出した。同法案は、解散に伴い廃案となったが、来年の通常国会で改めて提出して成立をめざす方針だ。

 

 

【安倍総理、アベノミクスの正当性を改めてアピール】

 政府は、衆議院本会議での解散後、臨時閣議を開き、第47回衆院選「12月2日公示・14日投開票」の日程で実施することを正式決定した。

 

 安倍総理は21日の記者会見で、今回の解散を「アベノミクス解散」と位置付け、「アベノミクスを前に進めるか、それとも止めてしまうのか、それを問う選挙」と、アベノミクスの是非について衆議院選挙で国民の審判を仰ぐことを改めて強調した。

アベノミクス効果や円高の弊害などを述べたうえで、「経済の好循環を力強く回し続けることで、全国津々浦々に至るまで、景気回復を実感できる。景気回復、この道しかない」「他に選択肢があるのか国民に伺いたい」と力説した。また、個人消費の落ち込み、中小企業支援などの底上げ、円安・燃料費や原材料輸入価格の高騰などへの対処については、的を絞った経済対策と衆院選後に編成する補正予算案でスピード感を持って対処する方針を表明した。

 

 消費税率10%への引き上げの18カ月延期について、財政再建・社会保障制度改革を着実に進めるため、消費税率引き上げを延期するための関連法改正案では景気弾力条項を削除して、2017年4月に実施することを明言した。安倍総理は、「野党も同意しているので選挙の争点にはならない」との見方があることを念頭に、野党がどのタイミングで消費税率を引き上げるかについて明示していないとして、争点になりうるとの認識を示した。

延期により影響を受ける社会保障の充実に向けた財源確保・スケジュールについては、「給付と負担の関係からすべての社会保障政策を行うのは難しい」と、給付抑制など見直しが必要と認識を示したうえで、待機児童の解消促進を柱とする子ども・子育て支援新制度の実施は予定どおり来年4月から実施する考えを明らかにした。

 

 

【各党の選挙公約に注目を】

 自民党1強の政治情勢の転換をめざす野党側は、「政権行き詰まりを隠す解散」「アベノミクス失敗隠し解散」「スキャンダル隠しの解散」「国民そっちのけ解散」「追い込まれた解散」などと命名して、安倍内閣批判を強めている。

 

厚みのある中間層の形成をめざして、「今こそ、流れを変える時。」と政策転換を主張する民主党は、景気回復の恩恵が大企業・高所得者を中心に偏っていることや、実質賃金の低下・金融緩和に伴う過度な円安進行・賃金上昇を上回る物価高などを指摘して、アベノミクスのマイナス面を浮き彫りにしたい考えだ。

「身を切る改革。実のある改革。」としがらみのない改革を主張する維新の党や、「次世代が希望を持てる日本を」を掲げる次世代の党は、景気の足踏み状況や経済指標の頭打ち感、業界団体や族議員の抵抗などで岩盤規制改革が進んでいないことなどを捉えて、「アベノミクスの限界」「徹底した規制改革」を主張している。

このほか、集団的自衛権の行使容認を含む安全保障法制や、原発再稼働、沖縄基地移設問題、第2次安倍内閣の政権運営・政治手法などについても選挙の焦点にしたい考えだ。

 

 次世代の党は21日、維新の党は22日、民主党が24日、自民党が25日と、それぞれ衆議院選挙公約を発表した。「いまこそ、軽減税率実現へ。」と、生活必需品の消費税率を低く抑える軽減税率の導入を公約の柱に据える公明党は、27日に選挙公約を発表する。その他の政党も近く公約を発表する予定だ。

 今回の選挙は、公示までの期間も短いだけに短期決戦となる。与野党各党がどのような政策を掲げ、政策論争がどこまで深まっていくのだろうか。まずは各党の選挙公約を見比べ、それぞれの政策・主張ポイントを抑えておくことが大切だろう。