原英史・株式会社政策工房 代表取締役社長】 

 タクシー運賃について、5月下旬、大阪地裁、福岡地裁で相次いで、国の規制(公定幅運賃)に関する仮差止決定が出された。

 

 経過を振り返ると、

・昨年秋の臨時国会で成立した法律(いわゆるタクシー減車法)に基づき、この4月から、タクシー運賃の「公定幅」を国土交通省が定める仕組みに。

 例えば、大阪市域の中型タクシーの場合は、初乗りは「上限680円、下限660円」という公定幅が定められ、上限を上回ることも、下限を下回ることも認められないことになった。

http://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/tetsuzuki/taxi/20140325-73.pdf

 

・これに対し、従来から低料金で運営していたタクシー会社のいくつか(MKタクシーなど)は、4月以降も下限を下回る運賃を継続。

 一方、国土交通省は運賃を値上げするよう指導。さらに運賃変更命令という強制措置をとることをタクシー会社側に通告。

 タクシー会社側は、司法の場でこの命令の仮差止を求め、大阪地裁と福岡地裁でこれが認められた・・・という経過だ。

 

 タクシー運賃は、もともと1955年以降、「同一地域同一運賃」という規制運用がなされていたが、1990年代になると、そんな画一的な規制は緩和すべきとの問題提起がなされ、徐々に緩和(97年にはゾーン運賃制に移行)。

 2002年には、「自動認可運賃制」(上限以下の一定範囲の運賃申請は自動認可。下限を下回る運賃申請の場合は個別審査)が導入され、ワンコインなど格安タクシーの可能性が開かれた。

 

 ところが、この2002年の規制緩和は、その後、「小泉政権下での行き過ぎた規制緩和」の象徴例として批判を浴びるようになる。

 運賃規制だけでなく、参入規制の緩和もなされたことから、タクシーの台数が増えて過当競争が生じ、この結果、ドライバーの労働環境悪化、さらにそのため事故増加などを招いた・・との指摘がなされ、2009年には「タクシー適正化・活性化法」によって、運賃規制の再強化がなされた。

 さらに規制を強化すべく、議員立法による提出されたのが昨年の通称「タクシー減車法」。これによって、一定地域(法律上は特定地域・準特定地域)では、国が運賃の「公定幅」を定める仕組みに逆戻りしたのだ。

http://www.dpj.or.jp/article/103443

 

 大阪地裁と福岡地裁の決定は、「公定幅」を定める仕組み自体を否定したわけではない。運賃幅の定め方(大阪市域の中型車であれば「初乗り660~680円」という金額設定)に問題があるとの判断だった。

 

 しかし、本来、労働環境や安全上の問題に対処する必要があるのであれば、労働規制や安全規制により対処するのが筋だ。このために公定幅運賃に逆戻りするのは、問題のすり替えであり、そもそも仕組み自体、的確な方策ではないと筆者は考える。

 

 さらに、もうひとつ議論されるべき論点もある。

 百歩譲って、公定幅運賃の仕組みを認めるとして、その幅を誰が定めるべきかだ。

 現行制度では国(国土交通省)が定めることとなっているが、それぞれの地域での運賃規制については、より地域の実情に近い自治体で定めるべきではないか。

 

 地方分権の議論が最近すっかり下火になっているが、こうした問題でも、「自分たちに決めさせてほしい」と求める自治体がでてきてよさそうなものだ。