政策工房 Public Policy Review

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

 

【高橋洋一・株式会社政策工房 代表取締役会長】

 

 46月期のGDP一次速報は年率換算▲1.6%だった。民放のニュース番組でも取り上げられていたが、某テレビ局の解説は酷かった。今回のマイナス成長について、エコノミストはすべて的中していたといい、そのエコノミストの説明を紹介していた。

 

 
 エコノミストの3ヶ月前の予想は全くあてにならない。今回の場合も、3ヶ月前にはやはりプラス予想をしている人も多かった。しかし、8月になれば46月の各種統計が出そろい46月期のGDPはほとんど予想できるので、直前の予想は当たるに決まっている。それをわざわざテレビで取り上げた。

その解説で、消費と輸出が落ち、輸出の減少は、中国などの景気後退ということだった。ここまではいい。年率換算▲1.6%は前期比▲0.4%だが、消費減少と純輸出減少の寄与度は、それぞれ▲0.4%と▲0.3%だった。


 しかし、問題は消費減少の理由だ。将来不安で消費が伸びないというものだった。消費の低迷は、20144月からの消費増税であるのに、消費増税とは一言もふれない。その一方で、将来不安で消費低迷と、財務省のよくいうセリフそのものと同じだった。漠然とした将来の不安より、増税によって可処分所得が減少した目先の不安のほうが大きいのだ。

 
 

 消費の低迷を示すのが、7月末に公表された家計調査による8月分の消費の大ブレーキだ。6月の実質消費は前年比2.0%減、4-6月期の実質消費水準6数は前期比1.0%減だった。1年前の消費増税の影響が長引いているのだ。消費増税は恒久的な増税であり、そのマイナス効果は1年限りではなく永続的である。消費はそのマイナス影響をまだ飲み込めていない。


 家計調査で消費が減少した理由を見てみよう。大きなマイナスの寄与度になっているのは、「その他の消費支出」0.93%減少と「被服及び履物」0.59%減少の2項目で、これらで実質消費の減少の大半を説明できる。さらに詳しく見ると、「その他の消費支出」は交際費、「その他の消費支出」は男子用上着・ズボンが目立っている。この点から、百貨店がセールを7月に後ろ倒しした効果が大きかったことが指摘されている。もしそうであれば、7月は盛り返すはずだが・・・。

 
 

 将来不安で消費が伸びないといういいぶりは、2013年秋頃にも、多くのエコノミストやマスコミ関係者がいっていた。そして、将来不安を消すために、消費増税がいいと推奨した。その大合唱の末、20144月からの消費増税が決められ、実行された。その結果、2014年度のGDP成長率は▲0.9%。消費増税を推奨した人たちは、増税の影響は軽微といっていたが、まったくウソだった。


 将来不安で消費が伸びないというのは、20174月からの10%への再増税を目論んでいる人たちだ。消費増税で落ち込んだ消費なのに、その消費増税の悪影響をいわずに、再増税への落とし穴になるような解説を、テレビで垂れ流すのは、あまりに酷いだろう。

 
 

 景気の落ち込みへの対策は、消費増税の失敗であるので、それを取り返すためには財政政策、できれば消費増税の悪影響を除去するためには、消費減税と同じような効果がある減税や給付金政策が望ましい。


 ちなみに、GDPギャップを計算すると10兆円近くになる。この分、景気対策で戻そうとすれば、510兆円規模の対策がいい。

 

 




0821高橋さん

(表作成:政策工房) 

 


 財政政策というと財源が気になる人もいるが、心配ない。アベノミクスの円安によって、政府は儲けている。外債投資をしている外為特会では含み益は20兆円もあるので、それを国民に還元すればいい。そうすれば、増税による可処分所得減少は補われて、消費の落ち込みは避けられ、成長路線に乗るだろう。

【安倍総理、戦後70年談話を発表】

先週14日、政府は臨時閣議を開き、戦後70年にあたっての内閣総理大臣談話を決定した。安倍総理は、臨時閣議後に記者会見を行って談話を発表した。

内閣総理大臣談<全文>

 

談話では、総理大臣の私的諮問機関「21世紀構想懇談会」(座長:西室泰三・日本郵政社長)の報告書を踏まえ、1931年の満州事変以降の日本が国際社会の犠牲の上に築こうとした「新しい国際秩序への挑戦者」となって、「進むべき進路を誤り、戦争への道を進んだ」「何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた」と大戦に至った経緯と結果を盛り込んで、「国内外に斃れたすべての人々の命の前に、深く頭を垂れ、痛惜の念を表すとともに、永劫の哀悼の誠を捧げる」と表明した。

そのうえで、「二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない」「自らの行き詰まりを力によって打開しようとした過去を、この胸に刻み続ける」などと深い悔悟の念とともに、「事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない。植民地支配から永遠に訣別し、すべての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない」「いかなる紛争も法の支配を尊重し、力の行使ではなく、平和的・外交的に解決すべきである。この原則をこれからも堅く守る」と、日本の不戦の誓いと平和国家としての歩みを「戦後日本の原点」「不動の方針」として堅持する考えを示した。

 

また、「我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきた」「戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきた」ことに触れ、「こうした歴代内閣の立場は、今後も揺るぎない」と強調した。中国や韓国などが謝罪を明確にするよう求めていることを踏まえ、戦後50年の村山談話や60年の小泉談話に言及するかたちで「侵略」「植民地支配」「痛切な反省」「心からのお詫び」の表現が盛り込まれた。

さらに、中国や韓国などへの配慮から「戦争の苦痛をなめ尽くした中国人や、日本軍によって耐え難い苦痛を受けた元捕虜のみなさんが寛容であるためには、いかほどの努力が必要だったか、思いを致さなければならない」としたほか、慰安婦問題を念頭に「戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去を、この胸に刻み続ける」と言及した。

 

安倍総理は、「未来志向」「感謝」「積極的平和主義」などの言葉も盛り込んで独自性を打ち出した。戦後生まれの世代が人口の8割を超える現状に触れ、「何ら関わりのない私たちの子や孫、その先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と、戦後70年談話を機にアジア諸国へ謝罪し続ける状態に区切りをつけたいとの思いをにじませる一方、国民に「世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければならない。謙虚な気持ちで過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任がある」と呼び掛けた。

そして、敵として戦った国々や人々の寛容の心、恩讐を越えて善意と支援の手が差しのべられたおかげにより戦後日本が国際社会に復帰できたとして、「和解のために力を尽くしてくださった、すべての国々、すべての方々に、心からの感謝の気持ちを表したい」と表明した。そのうえで、繁栄こそ平和の礎との考えのもと未来志向の姿勢を鮮明にして、「歴史の教訓を深く胸に刻み、より良い未来を切り拓いていく、アジア、そして世界の平和と繁栄に力を尽くす」「自由、民主主義、人権といった基本的価値を揺るぎないものとして堅持し、その価値を共有する国々と手を携えて、積極的平和主義の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献していく」と、今後も積極的平和主義の下で国際貢献を進めていく方針を打ち出した。

 

 

【野党、安倍談話を批判】

 安倍総理は、戦後70年談話の作成にあたり、21世紀構想懇談会報告書を「歴史の声」と評価し、「その提言のうえにたって歴史から教訓をくみ取り、今後のめざすべき道を展望した」「多くの国民と共有できる」談話をめざしたと説明した。そして、「事実を率直に反省し、これからも法の支配を尊重し、不戦の誓いを堅持していくということが、今回の最も重要なメッセージ」と位置付けた。そして、「アジアの国々、多くの国々とともに未来への夢を紡ぎ出していく、そういう地盤にしていきたい」と、各国の理解に期待を示した。

このうち、関係改善の兆しが出始めている日中関係について、安倍総理は、戦略的互恵関係の考え方に基づいて改善していくことで一致しているとして「中国のみなさんには戦後70年にあたっての我が国の率直な気持ちをありのまま受け止めていただきたい」「首脳会談についても機会があれば、そういう機会を生かしていきたいと思う。日本の対話のドアは常にオープンだ」と、習国家主席との再会談に意欲を示した。その一方で、「東シナ海など、世界のどこであろうとも力による現状変更の行為は、決して許すことはできない」と釘を刺すのも忘れなかった。日中両政府は、9月上旬に北京で開催する方向で調整に入った。日中韓首脳会談の早期実現に向けた調整も加速させていく方針で、日韓首脳会談開催の模索も続いている。

 

 安倍総理の戦後70年談話を受け、与党側は談話の内容を高く評価したのに対し、野党各党は、間接的な表現が目立っており曖昧な内容だと、批判的見解を一斉に示した。

自民党は、「20世紀が世界と日本にとってどういう時代であったかというなかで、先の大戦でのわが国の失敗がどこにあり、戦後、その失敗を克服し、国際法の進化の下で、わが国が努力してきた成果を分析したうえで、今後の我が国が取るべき方向性を示した非常にバランスのとれた談話」(谷垣幹事長)、「戦後70年の節目に歴史の何を直視し、何を反省し、それをどう生かすかが重要だ。満州事変以降戦争へと進んだ日本について何を反省すべきかを世界の中の日本という視点で直視し、その教訓を抽象的な言葉の羅列ではなく、具体的に記載し、将来の日本のあるべき姿として国際協調主義にもとづく積極的平和主義を掲げたことに意義がある。談話は安倍首相の平和への思いと世界貢献への決意の表れ」(稲田政調会長)などと支持するコメントを発表した。

 過去の談話との整合性を重視した公明党も、安倍総理が公明党の要求を受け入れて歴代内閣の立場を引き継いだ内容を閣議決定したこともあって、「歴代内閣の立場を同じ言葉で繰り返さなくても、むしろより強い意志が込められている」「今後、歴史的な意義を見いだしていくに違いない」などと談話を高く評価した。また、「先の大戦に対する深い悔悟の念とともに不戦の誓いをしている」「侵略あるいは事変、戦争など区別せず、いかなる武力の行使や威嚇も二度と繰り返してはならないという誓いを述べていることは明確だ」として、積極的平和主義が貫かれているとも強調した。

 

 これに対し、野党各党は、安倍総理の歴史認識や、反省とアジア諸国へのお詫びについて認識が伝わりにくく本音が覆い隠されているのではないかなどと批判している。安倍総理は当初、村山談話を見直して「過去に対する痛切な反省」「戦後の歩み」「未来志向」の3本柱を軸にした談話にする方針だった。しかし、安全保障関連2法案の審議への影響、公明党や周辺国などへの配慮、内閣支持率の低下など政権基盤の不安定化などを背景に、独自色を抑制的にし、過去の談話を引用するなどして歴代内閣の立場がゆるぎないことを印象付けることにしたようだ。

 こうした談話に、民主党の岡田代表は「専門家や歴史家の議論を踏まえたものになっている」「全体としてのトーンは必ずしも否定的なものではない」としつつ、4つのキーワードが「いずれも引用のかたちで述べられている。首相がどう考えているのかが伝わってこない」と批判した。また、「反省とおわびは歴代政権が表明した事実に言及しただけで、自らの言葉として反省とおわびを一切述べていない。欺瞞的な内容」(共産党の志位委員長)、「歴代内閣の立場を踏襲しているとは全く感じられない。戦前の行動を全て肯定するかのような本音が、垣間見える」(生活の党の小沢共同代表)「首相本人の言葉として語られていない。村山談話よりも大きく後退していると言わざるを得ない」(社民党の吉田党首)などと断じた。

 

 このほか、維新の党の松野代表が「戦後50年の村山談話以後、10年ごとに毎回、同様な談話が発表されていることに疑問を感じざるを得ない」「特に、今回は国の安全保障法制を根底から変えるような法案審議をしている最中に、これまでの歴史認識を変える意図があるのではないかと疑われて国際的な混乱を招き、国益を損ねかねない事態になったことは残念というほかない」と、戦後70年談話を出したこと自体に疑問を呈した。

次世代の党の平沼党首は「未来志向の内容や、次の世代に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならないと発言したことは評価する」としつつ、「現在、アジア太平洋の平和を乱す動きがあることへの批判も入れるべきだった」と注文を付けた。

 

 

【安全保障関連法案、19日から審議再開】

与野党は、参議院で審議中の安全保障関連2法案(平和安全法制整備法案、国際平和支援法案)の是非に言及した、終戦記念日にあたっての談話・声明をそれぞれ発表した。

通常国会中の成立をめざす自民党は、「国際情勢が複雑に変化するなか、平素からの備えを万全にし、国民の命と幸せな暮らしを守り抜かなければならない」と、関連2法案の必要性を改めて訴えた。

公明党も「粘り強い外交努力と隙間のない安全保障の備えが不可欠」としたうえで、関連2法案が「わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増すなか紛争を未然に防止し、戦争を起こさせない仕組みをつくること」にあり、「憲法の平和主義、専守防衛を堅持している」などと強調した。山口代表は「紛争を呼び起こす出来事を国際社会と連携して抑え込まなければいけない。専守防衛に徹したしくみを整えることが外交の推進力になる」と述べ、安全保障関連2法案が「中国や韓国にも理解されると確信する」との認識を示した。

 

一方、野党は「戦後70年の日本の歩みを支えた国のあり方を、安倍政権は大きく変えようとしている」(民主党)、「安倍政権は戦後70年の平和の歩みを断ち切り、歴代内閣の憲法解釈を覆し、戦争法案を強行し、日本を米とともに海外で戦争をする国につくりかえようとしている。憲法破壊の暴走」(共産党)、「憲法解釈をねじ曲げて、戦争できる国に突き進む安倍独裁政治を断じて許すわけにはいかない。未来志向の行く末が戦争できる国では、国際社会からも信用されるはずがない」(社民党)、「戦前の歴史的事実を冷静に見つめ、謝るべきは謝り、正すべきは正す。歴史と正面から向き合おうとしないから、中国や韓国から歴史問題を常に蒸し返される」(生活の党)などと批判し、関連2法案を廃案に追い込む決意を示した。

 関連2法案に概ね賛成する意向を示す次世代の党は「南シナ海や東シナ海で中国による侵略が顕著」と指摘したうえで、「協働防衛という新たな理念にもとづき、同盟国・友好国との安全保障体制を構築するべき」などと注文をつけた。

 

 参議院わが国および国際社会の平和安全法制に関する特別委員会での審議をめぐっては、11日、中谷大臣出席のもと野党のみが質問に立った一般質疑で、防衛省統合幕僚監部が安全保障関連法案成立を前提に今年5月末に作成されたとする内部向けの説明資料「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)および平和安全法制関連法案について」を、共産党が提示した。

資料には、関連2法案の8月成立・来年2月施行を前提としたスケジュール表が添付されており、成立後の方向性について掲載されていたようだ。今月7日に閣議決定された南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の派遣期間延長を前提に、来年からの新法制にもとづく運用が可能だとして自衛隊の具体的な部隊編成や行動計画などが明記されているほか、今後の検討事項として、現法下で認められていない南スーダンでの駆けつけ警護・宿営地共同防衛の実施、米軍による南シナ海での情報収集活動への自衛隊の関与なども記載されているという。

 

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 共産党の小池晃・参議院議員が、防衛省内で秘密裏に作成された内部資料の存在を認めるよう迫ったが、中谷防衛大臣兼安全保障法制担当大臣は「いかなるものか承知していない」「(資料の)真贋や位置付けを即答するのは困難」などと具体的な答弁を避けた。小池議員は「国会審議の真っ最中に、法案成立を前提とした計画が議論されている。大臣が知らないとは大問題」と反発して質疑が紛糾した。

審議再開後も、中谷大臣は「同じ表題の資料は存在する」と部分的に認めたうえで、「国会での審議中に法案の内容を先取りすることは控えなければならない」と釈明するにとどめた。小池議員は中谷大臣の答弁に納得せず、「防衛省幹部の暴走。戦前の軍部独走と同じだ。絶対に許されない」と批判して関連2法案の撤回を要求するとともに、「これ以上議論できない」と質問を取りやめた。その他の野党も共産党に同調したため、鴻池特別委員長(自民党)が予定されていた散会を宣言し、質疑が途中で打ち切られる事態になった。

 

野党側は、防衛省統合幕僚監部が関連2法案の成立を前提に内部資料を作成していた問題で「一般的なシミュレーションのレベルを超えている」(民主党の枝野幹事長)などとして、中谷大臣の監督責任も含め追及する構えだ。また、沖縄本島沖で墜落した米軍ヘリコプターに自衛隊員が同乗していた経緯も問い質す意向を示している。野党側は、参議院特別委員会での集中審議や河野統合幕僚長の証人喚問のほかにも、衆議院予算委員会や党首討論などの開催も要求すべきとの声も出ている。

 着実に審議を積み重ねて採決環境を整えたい自民党は、特別委員会での審議再開を求めたのに対し、民主党・維新の党・共産党は、特別委員会で内部資料作成問題に関する集中審議を開催するよう求めた。18日の特別委員会理事懇談会で再協議した結果、特別委員会を19日から再開し、委員会冒頭で中谷大臣が内部資料について説明することとなった。また、野党側が求めていた「我が国を守るために必要な措置かどうかを問題にすべきで、法的安定性は関係ない」と発言した礒崎総理補佐官の参考人再招致は実施せず、その代わりとして21日に安倍総理出席のもと集中審議を行うことでも合意した。

18日の特別委員会理事懇談会で、防衛省が内部資料の存在を認めたうえで「課題整理と理解を深めるのが目的で、法案成立を先取りしたものでも秘密指定の資料でもない」などと説明したが、北沢俊美・野党筆頭理事(民主党)は「(成立後の運用について)法案成立前に防衛省が検討していることが問題」と批判した。自民党は、野党の追及・批判に「法律ができた時に何の準備もしていませんでした、というわけにはいかない。できた時にどう動くかは考えていかなくてはいけない」(谷垣幹事長)と反論しているものの、関連2法案への国民の理解が深まるよう丁寧に説明し疑念を払拭していくことが重要だとして、野党側が要求を受け入れることにしたようだ。

 

 

【水面下では与野党が綱引き】

安全保障法制の委員会審議が進まないなか、与野党それぞれが協議に向けて動いており、綱引きが水面下で始まっている。

参議院での採決に向けた環境を整えたい自民党と公明党は、野党一部の協力を取り付けるべく、自衛隊の海外派遣は例外なく国会の事前承認することや、海外派遣の事後検証を義務化することなどを盛り込んだ修正案の共同提案をめざしている日本を元気にする会や新党改革と、近く修正協議に入る予定だ。また、維新の党との修正協議を参議院でも継続する考えで、維新の党が参議院に対案を提出した後にも再開するとしている。

 

一方、維新の党は、12日、民主党と政調会長会談を行って、維新の党が提出予定の対案8本のうち、民主党と衆議院に共同提出した「領域警備法案」、駆け付け警護を可能とする「国連平和維持活動(PKO)協力法改正案」、民主党が要綱としてとりまとめた「周辺事態法改正案」を参議院に共同提出することを念頭に、協議入りすることで一致した。

民主党は、日本に退避する邦人らを支援する「退避民支援活動」を新設、避難民を乗せた船舶への燃料補給や医療・食糧の提供容認、後方支援や捜索救助での武器使用基準拡大など、周辺事態で米軍と「米軍とともに活動し、日本と物品役務相互提供協定を締結している国の軍隊」への後方支援を充実させる独自の周辺事態法改正案要綱を11日に決定している。政府案が可能としている弾薬の提供は認めず、自衛隊による核兵器や化学兵器の運搬も除外するとした。

 

ただ、民主党内には、参議院への対案提出よりも政府提出の関連2法案の廃案を優先すべきとの慎重論があるほか、与党との修正協議にも意欲をみせている維新の党への不信感もあって、いまのところ領域警備法案を除いて合意できる見通しは立っていない。

維新の党は、18日の執行役員会で対案8法案の取り扱いを片山参議院議員会長に一任することを決めた。民主党との協議の進捗をみて、今週中にも参議院に提出するようだ。民主党との協議に時間がかかる場合、存立危機事態の概念ではなく「武力攻撃危機事態」にのみ個別的自衛権を拡大して自衛隊の武力行使ができることを盛り込んだ改正案や、自衛隊の活動範囲を非戦闘地域の公海とその上空に限定して国連決議なしには自衛隊派遣できないことなどを盛り込んだ「国際平和協力支援法案」、海外派遣した自衛隊員が武器を不正使用した際の処罰規定などを盛り込んだ「自衛隊法改正案」など、協議対象以外の5法案を維新の党単独で20日にも参議院へ提出することも含め、最終判断するとみられている。

 

 

【安全保障法制をめぐる与野党動向に注意を】

安全保障関連2法案の審議が19日から再開される。野党各党は、国会審議を通じて、防衛省の内部資料作成問題や、米軍ヘリコプターの墜落事故問題、戦後70年談話と安倍総理の認識などを質して、攻勢を強めたい考えだ。また、与野党間の協議を念頭に入れた動きも活発となりつつあり、今後、与野党入り乱れた攻防戦となっていきそうだ。

 

さらに、野党側は、国会で審議されている安全保障法制などのほか、原子力発電所の再稼働問題や経済問題、新国立競技場の建設計画見直し問題などでも追及するとしている。

原子力発電所の再稼働問題をめぐっては、11日に九州電力川内原発1号機が再稼働したことを受け、野党各党が一斉に批判している。重大事故の際の避難対応が自治体に委ねられ国が責任を持つ態勢になっていないことや、避難計画の実効性、高レベル放射性廃棄物の最終処分場が決まっていないことなどを指摘して、「住民の懸念が払拭されたとは言いがたい。政府が万一の場合に責任を取る姿勢すら見えていないなかでの再稼働には到底納得できない」(民主党の枝野幹事長)、「最終処分の方法のメドも立たないまま再稼働を進めるのは無責任のそしりを免れない。結論ありきで原発再稼働に突き進むかのような政府の姿勢に危惧を覚える」(維新の党の松野代表)、「福島原発事故の原因究明さえ行われないまま、国民多数の民意を真っ向から踏みにじって再稼働を強行したことは断じて許されない」(共産党の志位委員長)などと、原発再稼働に反対や懸念などを表明した。原発再稼働に世論の反発が強いことなどを背景に、野党各党は、追及を強める構えをみせている。

 

17日に内閣府が発表した2015年4~6月期の国内総生産(季節調整済み)速報値で、物価変動の影響を除いた実質GDPが前期比0.4%減、年率換算1.6%減と、3四半期ぶりにマイナス成長となったことを受け、民主党は「安倍政権は安全保障法制にかかりきりになっている。国民が最も求める景気、生活の改善に全力を傾けるべきだ」(枝野幹事長)、「消費、設備、輸出など民需が総崩れだ。政府がこれまで喧伝してきた所得増が実現できていないのが原因の一つ」(細野政調会長)などと批判している。

政府側は、日本経済の足踏み要因としてアジアや米国向けの輸出低迷や、天候不順などで個人消費も振るわなかったことなどをあげており、あくまで一時的との見方をしているが、自民党内からは「先を見通しての経済対策を打ち出していくことが必要だ」(谷垣幹事長)と、編成作業が本格化する来年度予算案の中身も含め、景気浮揚につながる何らかのてこ入れが必要との声も出始めている。7~9月期のGDP速報値の結果次第では、経済対策が重要課題として急浮上することもありそうだ。

  

 こうした重要課題が山積するなか、通常国会の会期末(9月27日)は残り1カ月あまりとなっている。いまのところ、安全保障関連2法案の審議が紛糾するたび、他の法案審議にも影響が及び、順調に進んでいるとは言い難い状況にある。引き続き、安全保障法制をめぐる与野党の駆け引きや、与野党間の協議の行方などに注意しながら、国会論戦をみていくことが大切だろう。

【安倍総理、下村大臣の責任を否定】

先週7日と今週10日、衆参両院それぞれの予算委員会で、安倍総理・関係閣僚出席のもと、2020年東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設計画見直しなどをテーマにした集中審議が開催された。

 

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安倍総理は、新国立競技場の建設計画を白紙撤回したことに伴い、デザイン監修業務や設計会社4社の共同企業体との設計業務など約62億円が無駄な支出となることについて、「白紙撤回の前に締結した契約による支出は、その当時は適正な支出だったが、結果として白紙撤回したものに貴重な公的資金を使用したことは、国民の皆様に対して申し訳ない思いだ」と陳謝した。そして、「できる限りコストを抑制し、現実的にベストな計画を作ることが重要だ。責任を果たすため新国立競技場を2020年の開催までに間違いなく完成させるように内閣全体で責任を持って取り組んでいく決意」と改めて表明した。

安倍総理が新国立競技場の建設計画について白紙撤回を表明したのが、衆議院で平和安全法制整備法案と国際平和支援法案の安全保障関連2法案の採決を与党単独で行った翌日だったとして、民主党は「批判をかわすための政治利用」(小川淳也・衆議院議員)と批判した。これに対し、安倍総理は「この問題は、安全保障関連法案は全く別だ」と反論した。

 

また、民主党による「計画の見通しが甘い」「新国立競技場の問題は集団的無責任体制だ。既存の競技場の改修も含めた真剣な検討をしていない」との追及に、安倍総理は、キールアーチ構造などの旧デザインを選んだのは民主党政権下であり、日本オリンピック委員会(JOC)が国際オリンピック委員会(IOC)に提出した立候補ファイルに「必要であれば日本政府が財政支援をする」などと記載された野田総理名入りの保証書が添付されていたことを踏まえ、「国立競技場を壊して新しいものを造ると決めたのは民主党」であり、「デザインそのものに予算を膨らませる大きな原因があった」「我々はそれを受け継いだが、IOCとの関係もあり、いきなり白紙撤回するような無責任なことはしなかった」と、民主党にも責任があると反論した。

こうした反論に、民主党は、総工費をめぐる迷走は自民党政権下で起きたことで「責任転嫁も甚だしい」などと反発している。2013年10月に建設費が1300億円から約3000億円に膨らむ見通しが表面化していたものの、事業主体である日本スポーツ振興センター(JSC)が2014年5月に基本設計の概算工事費を1625億円と過少に見積もったことで、2015年6月末に政府が発表した総工費は2520億円に膨らむ結果となったからだ。JSCが正確な額を公表していれば計画見直しが早まった可能性もあるだけに、「デザインを決めたことで我々の責任がないとは言わないが、きちんと早く対応していればこういう混乱はなかった」(民主党の岡田代表)と批判した。

 

民主党など野党は、JSCを管轄する下村文部科学大臣に政治責任があるとして、下村大臣が引責辞任するか、安倍総理が更迭すべきと主張している。これに対し、安倍総理は「世界の人々を感動させる大会にする責任は政府にあり、最終的な責任は総理大臣である私にある」として下村大臣の辞任は不要との認識を示しつつ、文部科学省に設置された第三者による検証委員会で「客観的な立場で検証が行われると期待している。経緯と併せて責任の所在についても議論してもらうと考えている」と述べた。

下村大臣も、様々な批判を謙虚に受け止めるとともに、第三者委員会での検証結果を踏まえて対応していく意向を示したうえで、「大会開催に確実に間に合わせ、できるだけコストを抑制し、現実的にベストなものにすることで、国民に歓迎してもらえる対応をすることが最も責任を果たすことになる」と強調して、続投に意欲を示した。

 

 

【核兵器運搬は政策的にありえないと説明】

中谷防衛大臣兼安全保障法制担当大臣が、安全保障関連2法案の法文上、核兵器はあえてあてはめれば弾薬と整理することができ、他国軍への後方支援で自衛隊による運搬も法理論的には排除されないと答弁したことについて、民主党など野党が問題視して集中審議でも追及した。中谷大臣は、5日に開かれた参議院わが国および国際社会の平和安全法制に関する特別委員会で、非核三原則の存在を理由に「(米国から)要請があってもありえない」と強調したが、野党側は、法的な歯止めがない以上、時の政権の判断で核兵器運搬が可能になる余地が残るとして猛反発していた。

こうした野党側の追及に、安倍総理は、核兵器運搬を排除する規定がないのは現行の周辺事態法でも同じことであり、非核三原則や、核兵器を運ぶ能力が自衛隊にないことなどを理由に、「核弾頭の運搬は政策的に全くありえない。純粋法理論上の机上の空論に対して答えたにすぎない」「国是として非核三原則を表明している。国是のうえに法律を運用するのは当然」などと強調した。そして、「そもそも選択肢としてないものを議論すること自体、意味がない。ありえるかのごとく議論するのは間違っている」と、批判を強める野党側を牽制した。

 

 民主党の岡田代表は「非核三原則と、核の国外での運搬は直接関係ない。非核三原則を分かっているのか」と批判したうえで、「論理的にはありえるのだから、机上の空論と片付けるのは間違い。法理上明確にするべき」と、関連法案に核兵器運搬の排除を明記する修正が必要であり、政府はこうした訂正を行ったうえで関連法案を出し直すべきと訴えた。

7日の集中審議で質問に立った山井・衆議院議員は、6日の広島市での原爆死没者慰霊式・平和祈念式の挨拶で安倍総理が非核三原則の堅持に触れなかったとして「その国是をいわなかったのはあなたではないか」と非難した。こうした批判に、安倍総理は「非核三原則は当然のことで、その考え方に全く揺るぎはない。当然の前提として核兵器のない世界の実現に向けて国際社会の取り組みを主導していく決意を表明」と述べた。長崎の平和記念式典で非核三原則の堅持に言及したことについては、「さまざまな指摘があったので、誤解を招くことがないように言及した」(10日の集中審議)と説明した。

 

安全保障関連2法案の審議をめぐっては、与野党が10日の特別委員会理事懇談会で協議した。与党側が審議に向けた日程協議を提案したものの、野党側は「我が国を守るために必要な措置かどうかを問題にすべきで、法的安定性は関係ない」と発言した礒崎総理補佐官を再び参考人として招致するよう求めた。与党側は、礒崎総理補佐官の再招致に消極的姿勢を示して「別途、何らかのかたちで解決策を提示させていただきたい」(自民党の佐藤正久与党筆頭理事)と回答するに留めた。このことから、11日に中谷大臣出席のもとで野党が質問する一般質疑のみが決まり、礒崎総理補佐官の再招致をめぐる結論は持ち越しとなった。

自民党は、関連2法案の審議の行方に不透明感を増し、採決への道筋を描きにくくなりつつあるなか、着実に審議を積み重ねていきたい考えだ。順調にいけば、9月上旬にも採決の目安とする100時間程度の審議時間に到達するとみている。一方、成立を急ぐ与党を牽制したい野党側は、礒崎総理補佐官の再招致を引き続き求めていくとともに、関連2法案の違憲性や矛盾点などを浮き彫りにして、対決姿勢を強めたい考えだ。

 

 

【野党、対案などの提出へ】

 野党側は、安全保障関連2法案の対案または修正案を参議院に提出する方向で準備を進めている。

維新の党は、衆議院で否決された関連2法案の対案を一部修正のうえ、早ければ18日にも党内手続きを終えて参議院に提出する方針でいる。これまで党執行部内では、衆議院での採決直前に修正協議の継続を与党と合意していることもあり、対案を参議院に提出して修正協議を再開すべきとの声がある一方、与党に再び利用されかねないと対案提出に慎重な意見もあり、対応が定まらない状態が続いてきた。

しかし、与党幹部らが修正協議入りを念頭に野党側に対案の早期提出を呼びかけ、安倍総理も「政党間の協議が進んでいけば謙虚に耳を傾けたい」と柔軟姿勢を示しているほか、礒崎総理補佐官の発言などにより「我々の案との差がはっきり出る環境ができた」(松野代表)とみて、対案の提出方針を固めた。

 

 維新の党が修正のうえ提出する予定の対案は、自衛隊の活動範囲を非戦闘地域の公海とその上空に限定して国連決議なしには自衛隊派遣できないことなどを盛り込んだ「国際平和協力支援法案」や、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態に対処するために領域警備区域を指定して自衛隊が警備行動できるとした「領域警備法案」など計8本としている。

政府が改正案10本を束ねた一括法案にして国会提出したことに批判・苦言などがでていることや、他の野党から法案ごとに提出した方が審議しやすく賛成もしやすいとの声が出ていることも踏まえ、これまで政府案に合わせて改正案を束ねていた「平和安全整備法案」を、存立危機事態の概念ではなく「武力攻撃危機事態」にのみ個別的自衛権を拡大して自衛隊の武力行使ができることを盛り込んだ改正案や、駆け付け警護を可能とする国連平和維持活動(PKO)協力法改正案など6本に分割することにした。維新の党は、他の野党との共同提出も視野にいれ、法案の分割を決めたようだ。

逆風に苦慮する与党は維新の党との修正協議の再開に前向きな姿勢を示しており、維新の党の片山参議院議員会長も「法案は修正した方がいい。違憲だと集中攻撃を受けるような法案を強行したらダメだ」と与党側に柔軟に対応するよう求めている。ただ、政府案と維新案の隔たりが大きく、維新の党内には「維新案の丸のみが(採決で賛成する)条件」(小野・安全保障調査会長)といった声も出ているだけに、協議の行方は見通せないままだ。

 

 また、日本を元気にする会は、自衛隊を海外派遣する場合に、例外なく国会の事前承認することや、海外派遣の事後検証を義務化することなどを求める修正案の提出を検討している。新党改革も同様の主張をしており、お盆休み明けにも共同提案をめざしている。

 一方、周辺事態法改正案などの要綱案を関連2法案の対案として作成することを決定した民主党は、参議院への提出をめぐって意見が分かれている。党内の保守派らが対案提出すべきと主張しているのに対し、「違憲法案に対案は出せない」(蓮舫・代表代行)と、岡田代表ら党執行部らは、違憲性などにこだわって安保関連2法案の廃案を求めていくべきだとしており、対案提出に慎重姿勢を示している。

 

 

【戦後70年談話の内容とその反応に注目を】

11日に参議院で開催された安全保障関連2法案を審議する特別委員会と、労働者派遣法改正案などを審議している厚生労働委員会を除き、今週の審議は行われない見通しだ。国会審議が再開するのは来週以降となる。

 

派遣労働者の柔軟な働き方を認めることを目的に、企業の派遣受け入れ期間の最長3年という上限規制を撤廃(一部の専門業務を除く)する一方、派遣労働者一人ひとりの派遣期間の上限は原則3年に制限して、派遣会社に3年経過した後に派遣先での直接雇用の依頼や、新たな派遣先の提供などの雇用安定措置を義務づける「労働者派遣法改正案」は、同じ職務を行う労働者は正規・非正規にかかわらず同じ賃金を支払う「同一労働・同一賃金推進法案」とともに、通常国会中の成立は確実だ。ただ、日本年金機構の個人情報流出問題の影響などにより、参議院厚生労働委員会での採決見通しが立たない状況のままとなっている。

審議の遅れから、政府・与党は、関連政省令の整備などに一定の期間がかかることから、労働者派遣法改正案に明記した施行日の9月1日では間にあわないと判断して、9月末に修正する方針を固めている。通常、周知期間として法律公布から施行までに半年程度を空けるが、労働者派遣法改正案では1カ月程度と極めて短くなる見通しだ。当初、政府・与党は周知徹底するために十分な期間を空ける考えだったが、成立の遅れから異例のスピード施行となる。民主党政権下で成立した2012年労働者派遣法改正に伴う労働者保護策「労働契約申し込みみなし制度」が10月1日からスタートすることで、派遣期間の制限がない専門26業務で本来の業務と関係ない業務などをさせている派遣先の企業は、派遣労働者が希望すれば直接雇用しなければならなくなり、直接雇用を回避すべく派遣社員の契約を9月で打ち切るといった事態も想定されるからだ。

政府・与党は、こうした雇用現場の混乱を回避するべく、10月1日前の施行にこだわっている。ただ、施行日を修正すれば衆議院での再可決が必要となるため、成立阻止を掲げている民主党など野党が衆議院での再審議を求めれば、成立が大幅にずれ込む可能性もあるようだ。

 

 与党は、9月27日までの通常国会中に審議する法案の絞り込み作業を加速化させており、柔軟な働き方を広げて労働生産性を高めるねらいから高度プロフェッショナル制度創設や企画業務型裁量労働制の対象を新商品開発・立案や課題解決型営業などへの拡大、年5日の有給休暇の取得ができるよう企業に義務づける過労対策などを柱とする「労働基準法等の一部を改正する法律案」などの会期内成立を断念した。

民主党や共産党など野党が「残業代ゼロ法案」と位置付けて成立阻止を掲げているだけに、強引に審議を進めれば、安全保障関連2法案や労働者派遣法改正案の審議にも影響を与えかねないと判断したようだ。与党は、成立しやすい法案の審議を優先し、労働基準法改正案などは、衆議院で審議入りのうえ継続審議とする方針だ。これにより、秋の臨時国会以降に持ち越される公算が高まっている。

 

 今週14日に政府は、戦後70年談話を臨時閣議で決定のうえ発表する予定だ。現在、政府・与党内では、総理大臣の私的諮問機関「21世紀構想懇談会」(座長:西室泰三・日本郵政社長)が6日に提出された報告書を参考に、談話に盛り込む内容をめぐって調整が続けられている。公明党は、「植民地支配と侵略」「痛切な反省」「心からのおわび」について言及した戦後50年の村山談話や戦後60年の小泉談話で受け継がれている歴史認識、少なくともその趣旨を全面的に継承するよう求めている。

安倍総理は、戦後70年談話にあたって「過去に対する痛切な反省」「戦後の歩み」「未来志向」の3本柱を打ち出す一方、7日の集中審議では「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継ぐ。戦後70年談話はそれを前提として作成する」と述べている。談話では、先の大戦に対する痛切な反省や戦後日本の国際貢献の実績、積極的平和主義の推進などを強調するとともに、戦後日本の歩みに多くの国が理解を示していることにも感謝の意を表すようだ。また、今後も政府開発援助(ODA)による経済支援や、国連平和維持活動(PKO)などで、国際社会の安定に貢献していく方針も盛り込む。焦点となっているアジア諸国へのおわびについては、直接的表現を避けつつも、近隣諸国にお詫びと受け止めてもらえるような表現にする方向で検討されているという。

 

14日に安倍総理がどのような談話で発表し、閣議決定後に開かれる記者会見でどのような説明をおこなうのだろうか。そして、与野党各党やアジア諸国などがどのような反応をみせるのか。戦後70年談話の内容によっては、お盆明けの国会審議にも影響を与えかねないだけに、一連の動きを注意深くみておいたほうがいいだろう。
 

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