政策工房 Public Policy Review

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

4月7日(木)に当社主催で「外国人材活用セミナー」を開催します。

概要は下記の通りになりますので、ご都合合う方はぜひご参加頂けましたらと思います。



【外国人材活用セミナー】


外国人観光客の急増や人手不足などを背景に、さまざまな分野で外国人材を活用するニーズは急速に高まっています。こうした中、政府でも、介護、家事支援、農業、インバウンド関連などの分野で、外国人材の受入れ拡大のための制度改正の動きがあります。

(注)最新の動きとしては、3月2日の国家戦略特区諮問会議で、「農業」、「クールジャパン関連(ファッション・デザイン、アニメ、食など)」の分野での外国人材受入れにつき、検討を進めることが決定されました。

今後、外国人材の活用を検討している企業の経営者・担当者を対象に、今後の制度改正の動き、企業がこれから外国人材を活用していく可能性と課題などについて情報を提供します。

 

【日時・場所】

2016年4月7日(木) 15:00-18:00
於: TKP有楽町会議室


【内容】

第一部: 企業の事例紹介 (15:00-16:20)

外国人材の活用に成功している企業の事例や、今後の可能性と課題などを紹介。

<登壇企業(予定)>
・株式会社アルテサロンホールディングス  取締役会長 吉原 直樹 氏 <美容>
・株式会社CVSベイエリアグループ・株式会社アスク専務取締役 泉澤摩利雄氏 <流通、ホテル等>
・株式会社野菜くらぶ 代表取締役 澤浦彰治氏 <農業>
・株式会社リエイ 常務取締役 山澤一彦氏 <介護>
・(一社)日本ホテル教育センター 理事長補佐・事業本部統括本部長 大堀 貴弘 氏<ホテル>



第二部: パネルディスカッション (16:30-18:00)

外国人材の活用に向けて、政府での制度改正の動きを紹介するとともに、企業がどのように対応していくべきかを議論。

<パネリスト(予定)>
・堺屋太一氏 作家、元経済企画庁長官
・梅澤高明氏 A.T.カーニー日本法人会長
・毛受敏浩氏 (公財)日本国際交流センター執行理事
・Phil McAuliffe 氏 オーストラリア政府移民・入国管理省移民政策担当官 ※逐次通訳入り
・藤原豊氏  内閣府地方創生室次長(国家戦略特区担当)
モデレーター: 原 英史 株式会社政策工房代表取締役

 

※第二部終了後、30分ほど名刺交換の時間を設ける予定です。

 

【参加費】 3,000円 
※以下URLから参加費のお支払いが可能です。
http://www.wazoo.jp/events/open/2763

【申し込み・お問い合わせ先】

主催: 株式会社政策工房   協力: NPO法人万年野党 


【こちらからご案内をダウンロード可能です】
http://bit.ly/1qpjPlM 

【メディア関係者の方のご案内はこちらになります】

【緊急施策を盛り込んだ補正予算案を閣議決定】

先週18日、政府は、1億総活躍社会の実現やTPP対策大綱のうち緊急性の高い施策などを柱とした「補正予算案」を閣議決定した。国の追加歳出総額(3.5兆円)から地方交付税交付金(1.26兆円)や国債費など既定経費の減額分(マイナス1.44兆円)を除いた一般会計総額は3.32兆円となった。補正予算案の規模を抑えるため、当初予算で見込んだ経費を1兆円以上減らすとともに、新規国債を当初予算で想定した発行額から4447億円減額した。そのうえで、昨年度決算剰余金(2.21兆円)や、法人税・所得税や消費税など今年度予算の税収上振れ分(1.89兆円)などを充てた。

 1億総活躍社会の実現に向けた施策(1.16兆円)として、来年前半の民間消費の下支えと生活支援を目的に低所得の年金受給者約1100万人(65歳以上で住民税の非課税世帯と年金などの収入が年155万円程度の単身世帯で、生活保護受給世帯は除外)に1人あたり約3万円を支給する臨時給付金(3624億円)のほか、地方創生加速化交付金、保育士の確保・保育所などの整備前倒し、介護施設整備・介護人材確保などが盛り込まれた。

 

 交渉参加12カ国による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意を受けてのTPP対策大綱関連(3403億円)では、農地の大区画化や農道・排水路・農業用ダムなどの整備といった土地改良事業(940億円)のほか、水田活用直接支払交付金の財源の積み増し、地域で収益力を高める畜産・畑作分野の体質強化などを計上した。農業以外では、地方自治体や商工会議所が一体となって中小企業の海外販路拡大や商品開発を支援する連携組織発足に向けた関連費用や、関税撤廃で輸入品との競争が激化する皮革産業向けの経営支援策・多国籍企業の誘致費用など(約800億円)が盛り込まれた。 

 このほか、東日本大震災の復興加速化(8215億円)、9月の関東・東北水害の復旧や河川整備などの災害復旧・防災・減災関連(5169億円)、テロ対策や2016年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)開催などに関する対策費(144億円)、2017年4月に消費税率10%への引き上げに伴って負担緩和策として導入する軽減税率に係る中小事業者向け相談窓口を商工団体などへの設置費(170億円)などを計上している。

 

 麻生財務大臣は「需要喚起の景気対策ではなく、1億総活躍で強い経済を実現する」と、今回の補正予算案の意義について強調した。補正予算案に計上された臨時給付金を念頭にバラマキ予算ではないかとの批判が出ていることについては、「(アベノミクスの賃金上昇の)恩恵が及びにくい人を支援するという考え方にもとづいており、ばらまきということはない」と反論している。

 

 

【過去最大の来年度予算案も閣議決定】

24日、政府は臨時閣議を開き、法人実効税率引き下げなどを盛り込んだ与党税制改正大綱を踏まえた来年度税制改正大綱と、一般会計総額96.72兆円(今年度当初予算比0.4%増)と4年連続で過去最大を更新した来年度予算案を決定した。来年度予算案では、所得税や法人税などの伸びを見込んで税収を57.60兆円(同5.6%増)とし、公共事業の財源となる建設国債を合わせた新規国債発行額は34.43兆円(同6.6%減)に抑制した。これにより国債依存度は38.3%(2015年度)から35.6%と、リーマン・ショック前に編成した2008年度当初予算の水準にまで改善したが、依然として歳出の膨張に歯止めがかかっておらず、予算の3分の1超を国債発行に依存する状況が続いている。

 また、来年度税制改正大綱に沿って1年間適用した場合、企業の自治体への寄付を税額控除する「企業版ふるさと納税」(国・地方125億円減)や、新たな自動車税制として購入時の自動車税・軽自動車税を拡充し上乗せ分を低燃費車ほど段階的に税率が低くなる「環境性能割」(184億円)の導入や、中小企業の設備投資を促す「固定資産税減税」(183億円減)などにより、国と地方の税収は差し引き565億円(国税160億円、地方税405億円)減少する見通しだ。さらに、消費税の軽減税率のうち年約6000億円分の穴埋め財源を確保できるメドも立っていない。 

 

 国の政策的経費である一般歳出は4731億円増の57.82兆円で、地方自治体に配分する地方交付税交付金(15.28兆円、同1.6%減)とあわせて73.1兆円となった。「1億総活躍社会」を実現するための対策費(2.4兆円)や、初めて5兆円を突破した防衛費(同1.5%増)などが今年度予算から増額となった。また、地方創生の取り組みを支援するために地方財政計画へ1兆円を計上した。安倍内閣の政策路線が色濃く反映した予算案となった。

一方、財政健全化計画に盛り込まれた2020年度にプライマリー・バランスの赤字脱却をめざして国の政策遂行に必要な経費を計上する一般歳出を年平均5300億円強の増加と収める目安を遵守するため、歳出の3割を占める社会保障関係費(31.97兆円、同1.4%増)の伸びを抑制したほか、全国の公立小中学校の教職員定数を2015年度比で3475人分を削減するなどした。

 

高齢化などの影響で年金・介護や医療費など社会保障関係費は増加の一途を辿っているが、医療サービスなどの公定価格「診療報酬」のマイナス改定(改定率全体で0.84%引き下げ)や、診療報酬関連の制度見直しにより伸びを抑制した。診療報酬改定をめぐっては、薬の値段などの「薬価」部分を市場価格にあわせて1.33%引き下げる一方、医師や薬剤師の技術料など「本体」部分への切り込みが見送られ、賃上げにつなげるとともに医療充実や医療機関の経営安定などに配慮して、0.49%引き上げとなった。

また、割安な後発医薬品(ジェネリック)の価格を来年4月から先発薬の原則6割から5割への引き下げ、年間販売額が1000億円超の医薬品を最大5割値下げする「市場拡大再算定制度」の導入、特定病院の処方箋のみを集中的に受け付けている「門前薬局」の調剤報酬を引き下げて患者の服薬情報の一元管理や服薬指導を手掛ける「かかりつけ薬局」の調剤報酬を手厚くするなどの制度見直しにより、社会保障費の圧縮を図るとしている。

 

 

【安倍路線が色濃く反映した来年度予算案】

 安倍総理が重要政策として掲げる「1億総活躍社会」を実現するための対策費として、「希望出生率1.8」関連に約1.47兆円、「介護離職ゼロ」関連に約0.23兆円などを確保した。このうち、子育て支援は、保育料の年齢制限(第1子が小学3年生まで)をなくして子どもが3人以上いる年収360万円未満の低所得世帯は第3子以降を一律で無料・住民税非課税のひとり親世帯は第1子・第2子ともに無料とする対策費(345億円)、ひとり親世帯に支給される「児童扶養手当」の多子加算額倍増(第2子で最大1万円、第3子以降で最大6000円。ただし、2人目以降にも所得制限あり)など、ひとり親世帯や多子世帯に重点を置いた施策を中心に盛り込んだ。消費税率8%への引き上げに伴って中学生以下の子どもを持つ世帯に幅広く支給してきた「子育て世帯臨時特例給付金」(子育て給付金、2015年度は子ども1人あたり3000円)は、廃止される。

 このほか、資格取得をめざすひとり親世帯の親への給付金支給期間の延長や、企業が国に納める子育て拠出金負担率の段階的引き上げ(2016年度は0.05%引き上げ、2017年度はさらに0.03%引き上げ)により事業所内の保育所・病児保育所など企業主導型保育施設の整備・運営費補助なども進める。

 

4年連続で増額となった防衛費は、中国の海洋進出を念頭に離島防衛・周辺海空域の警戒監視強化に備えた防衛装備品などの購入、ステルス性能を備えた戦闘機やミサイル防衛のためのイージス護衛艦など最新装備品の調達のほか、埋め立て本体工事が着手した米軍普天間飛行場の辺野古沖移設に伴う関係費(595億円)や今年度新設した辺野古周辺3地区への補助金(7800万円)、米軍再編経費(1766億円)、駐沖縄米海兵隊のグアム移転費(140億円)などを計上することで膨らんだ。

外交関係費では、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)開催のための諸経費(140億円)や、サミットで焦点となる難民・テロ対策支援として、中東アフリカ地域への平和構築・技術協力費(27億円)、国際テロ情報収集ユニットの活動費(2億円)などを計上した。また、中国がアフリカなどの途上国に大規模な支援外交を展開していることや、日本が主要国首脳会議の議長国や国連安全保障理事会の非常任理事国など務めることなどを念頭に、今後も積極的な外交活動を展開することが必要との判断から、無償資金協力や技術協力が中心の「政府開発援助(ODA)」を17年ぶりに増額(5519億円、同1.8%増)することとなった。

 

2018年産米からの減反(生産調整)廃止やTPP交渉の大筋合意などを受けた農林業対策として、農地の大区画化や水利施設整備などの農業農村整備事業を3820億円(同6.5%増)のほか、主食用米から飼料用米・麦・大豆などへの転作の助成・地域の裁量で使える産地交付金を含んだ「水田活用直接支払い交付金」の拡充(3078億円)、林業の成長産業化をめざす「次世代林業基盤づくり交付金」の積み増しなどが盛り込まれた。これにより、農林水産関連の予算総額は2.3兆円となった。当初、財務省は今年度より100億円程度の削減を求めていたが、生産者のひろがる不安払拭や来年夏に実施される参議院選挙対策などとして、関係予算の増額を要求していた自民党農林族議員に応える結果となった。

微増となった公共事業費(5.97兆円、同0.04%増)では、水害や土砂災害など頻発する自然災害を踏まえた防災・減災対策(478億円、同16%増)、自治体向けの財政支援としてインフラの老朽化対策や防災・減災対策に特化した「防災・安全交付金」(1.1兆円、同0.5%増)、新幹線建設の継続(2050億円)などに重点配分した。

 

 このほか、沖縄振興費は、普天間飛行場移設問題をめぐって国と沖縄の対立が法廷闘争に発展しているなか、約10億円の増額(3350億円)となった。沖縄振興特別推進交付金(806億円)のほか、米軍から返還された西普天間住宅地区の跡地利用に関する交付金(10億円)、子どもの貧困対策事業費(10億円)、大型テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」の進出に向けた県北部地域を観光拠点推進調査費(1億円)、那覇空港第2滑走路の増設事業費(330億円)などが盛り込まれた。

また、観光立国化をめざす安倍総理や菅官房長官の強い意向を反映して、急増する訪日外国人観光客のさらなる増加と受け入れ態勢・環境の整備・拡充につなげるねらいから、観光庁関連予算が今年度当初予算比2.02倍(約200億円)となった。

 

 

【通常国会前半の争点見極めを】

通常国会は1月4日に召集される。通常国会の開会日には安倍総理による外交報告のほか、政府が補正予算案を提出、麻生財務大臣による財政演説が衆参両院の本会議で行われる。財政演説に対する各党代表質問は、6日に衆議院で、7日に参議院で実施する。民主党など野党は、政府が年内に臨時国会を召集しなかったことに抗議するとともに、開会日に安倍総理の所信表明演説も行うよう求めたが、自民党は、来年度予算案を提出する予定の1月22日以降に施政方針演説など政府4演説を行うとして、野党側の要求を拒否した。

 政府・与党は、1月中旬にも補正予算を成立させ、22日にも来年度予算案と税制改正関連法案を一括提出する。政府4演説とそれに対する各党代表質問を行ったうえで、衆議院予算委員会で来年度予算案の実質審議に移りたい考えだ。参院選が控えて大幅な会期延長が不可能で、窮屈な審議日程となることが予想されるため、与党は、来年度予算・税制改正関連法などを2月下旬の衆議院通過、年度内に成立させたうえで、速やかに重要法案の審議に入るシナリオを描いている。

 

予算成立後は、TPPの国会承認手続きを進めるとともに、国内対策の法制化やTPPのルールに沿った法改正など7法案の成立をめざすようだ。協定と関連法案を一括で集中的意に審議するため、与党は、特別委員会を設置する方向で検討している。関連法案には、農林水産業や畜産・酪農で輸入関税の撤廃・引き下げなどにより安価な輸入品が増加し収入が生産費を下回った場合に独立行政法人農畜産業振興機構が赤字分の9割を補填する「経営安定特別対策事業」の法制化や、砂糖の代用品となる輸入加糖調整品を調整金の徴収対象に新たに加えて国内産糖の支援を実施することなどが盛り込まれる。

また、地域特有の農産物・食品を国がブランドとして保護するとともに、日本と同水準の地理的表示制度を持つ対象国と国際約束で保護すべき農林水産物を指定して、相互に保護できる体制を整備するための「地理的表示法改正案」、緊急輸入制限(セーフガード)などを規定した「関税暫定措置法等改正案」、著作権保護期間の延長や著作権侵害の一部非親告罪化を盛り込んだ「著作権法改正案」のほか、独占禁止法改正案、医薬品医療機器法改正案、特許法改正案なども提出する方針だという。

 

 一方、野党側は、政府・与党に徹底対峙していく構えで、補正予算案や来年度予算案に盛り込まれた施策、消費税の軽減税率などについて厳しく追及するようだ。

補正予算案に盛り込まれている1億総活躍社会の実現に向けた緊急対策について、民主党は「無責任なバラマキ政策の寄せ集めに過ぎない」(細野政調会長)、「選挙前の合法的買収」(枝野幹事長)、「全くの選挙対策で、選挙前に(臨時給付金)3万円をあげますよというのは、どう考えても国民をバカにしている話」(長妻代表代行)などと酷評している。また、来年度予算案も、野党各党は「国の将来を考えず、目先の選挙の勝利だけをめざす姿勢は言語道断」(民主党の細野政調会長)、「効率化できる部分が全く効率化されていない」(日本を元気にする会の松田代表)などと批判している。

 

軽減税率をめぐっては、「財源確保を来年末まで見送ってこれから考えるというのは極めて無責任」「選挙目当てに巨額の税金を使う究極のバラマキ」などの批判的な意見が出た。特に民主党は、「高所得者ほど高い物を購入するから、たくさん軽減を受ける。到底容認できない」(枝野幹事長)と非難するとともに、医療・介護や保育などの自己負担の合算額に上限を設定し上限を超えた分を国が給付する「総合合算制度」の実施見送りを決めたことにも、自民党・公明党・民主党で合意した社会保障と税の一体改革路線に反している、社会保障に回る予算が減るなどと反発している。

また、「(政府が決めた軽減税率の経理方式では)脱税が横行することにもなりかねない。真面目に帳簿を付けた正直者が損することになっては税の根幹が揺らぐ」(岡田代表)、「(軽減税率を適用する生活必需品として)水道水や電気、ガスは生きていくうえで不可欠なものについての議論がされずに、新聞だけが議論されることに非常に強い違和感を覚える」(細野政調会長)などとも指摘している。民主党や維新の党は、現金給付と減税を組み合わせた「給付付き税額控除」の方が低所得者対策として有効だと主張しており、軽減税率の対案として、給付付き税額控除を導入する法案を通常国会に共同提出することをめざしている。国会論戦では、軽減税率が低所得者対策となりうるか、対象品目の線引き基準、経理方式と益税問題、事業者などの負担軽減策などに争点となりそうだ。

 

来年の通常国会では、参院選もにらんだ国会論戦、水面下での与野党攻防などが予想される。まずは通常国会前半に審議入りする補正予算案や来年度予算案、税制改正関連法案などの争点を整理しながら、どのような論戦が繰りひろげられるのかをみていくことが重要だ。また、昨年の通常国会で積み残された法案の扱いも含め、通常国会にどのような法案・政策課題が議論されるのか、政府内での検討動向もチェックしておいたほうがいいだろう。
 

【与党、税制改正大綱を決定】

 今週16日、自民党と公明党は、2016年度与党税制改正大綱を決定した。当初、10日にもとりまとめて決定する方針だったが、2017年4月の消費税率10%への引き上げに伴って負担緩和策として導入する軽減税率の制度設計をめぐって、自民党と公明党との間で調整が難航し、ずれ込む結果となった。

経済再生や企業の国際競争力向上、景気の底上げにつながる企業の投資拡大と賃上げを後押しするため、法人実効税率(国・地方)のさらなる引き下げについては、2016年度に29.97%、2018年度に29.74%まで引き下げる。大綱では「財源なき減税を重ねることは国民の理解をえられない」と明記したうえで、税率引き下げの穴埋め財源として給与総額など企業規模に応じて課税する「外形標準課税」(地方税)の拡大や、欠損金繰り越し控除の縮小一部前倒しなどで捻出するとした。外形標準課税の拡大に伴い、資本金が数億円レベルの中堅企業に対しては2016年度から3年間、法人事業税の負担額が増えた分から25~75%を軽減する措置を設ける。このほか、中小企業の設備投資を促すため、新たに購入した160万円以上の機械や装置などにかかる固定資産税を半分にする時限措置(3年間)も設けるとした。

 

消費税率引き上げに伴って地方税の自動車取得税が廃止されることが決まっており、それに代わる新たな自動車税制として購入時の自動車税・軽自動車税を拡充し、上乗せ分を低燃費車ほど段階的に税率が低くなる「環境性能割」を導入する。景気減速を回避する観点や国内販売落ち込みを懸念する自動車業界の懸念を払拭する観点から、全体として約200億円規模の減税となる見通しだ。税率は、達成すべき環境性能として国が定めた「2020年度燃費基準」を踏まえ、自家用普通車が購入額の3%を上限に4段階、営業車が上限2%で4段階、軽自動車が上限2%で2段階とした。燃費が良いハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車、クリーンディーゼル車などがほぼ非課税となる。

また、医療費削減につなげるために医療用医薬品から市販薬に転用した「スイッチOTC医薬品」の購入額が年間計1.2万円超になれば、上回った金額分の所得控除(控除限度額10万円)、3世代同居のための改修費の一部を差し引く所得控除(控除限度額25万円)、子・孫への贈与が非課税となる措置の対象を出産関連まで拡大、公共交通機関の定期券代や有料道路の料金に応じた通勤手当の所得税非課税限度額を月10万円から月15万円へ引き上げなどの減税措置が並んだ。

 

このほか、地方創生の一環として地方自治体への寄付にあたり実質的な持ち出しを寄付額の約4割に軽減する「企業版ふるさと納税」を導入するほか、地球温暖化対策として森林整備を進めるため「森林環境税」(国税)の創設など新たなしくみを検討するとした。TPPの農業対策の一環として農地集約を促進するため、農地中間管理機構を通じて農地を長期間貸し出す農家に対し、固定資産税を最大5年間半減する優遇措置を導入するほか、再生可能な耕作放棄地に対する固定資産税を1.8倍に増やした。

 

 

【軽減税率、酒類・外食のぞく飲食料品全般に】

最大焦点となっていた消費税の軽減税率をめぐっては、事務負担が増える事業者への配慮や財源確保の観点から、2017年4月の軽減税率スタート時には対象品目を生鮮食品(年間軽減額3400億円)に絞り、段階的に加工食品までひろげる案を主張してきた自民党が、国民の痛税感の緩和や分かりやすさ、景気対策になることなどを重視して軽減税率の導入当初から可能な限り幅ひろい対象品目とするよう求める公明党の要求を受け入れた。飲食料品内で線引きを行うと軽減税率の対象か否かで消費者・事業者が混乱することが懸念されるほか、来年夏に参院選が控えているなかで公明党との選挙協力を重視する官邸側の意向もあって、自民党が譲歩するかたちとなったようだ。

これにより、適用税率を8%(国・地方合計)に据え置き、対象品目は「食品表示基準に規定する生鮮食品および加工食品(酒類・外食のぞく)」となった。対象品目の定め方について、「飲食料品の消費実態」「低所得者対策としての有効性」「事業者の事務負担」を挙げて、総合的に勘案したと説明している。対象外となる外食は、食品を調理する飲食店や喫茶店の衛生面を規制して危害の発生を防止する食品衛生法上の飲食店営業者が、テーブルや椅子など飲食設備を設置した場所での飲食サービスの提供を基準とした。これにより、店内やフードコートなどでの飲食は外食に、ファストフードのテイクアウトや出前・宅配などは外食にあたらないとして軽減税率を適用する。また、コンビニのイートインコーナーでは、持ち帰り可能な弁当・惣菜などは軽減税率が適用されるが、返却が必要なトレー・容器に入れた食品は外食扱いとなる。ケータリングや出張料理も外食にあたるとした。

 

 飲食料品以外では、文字・活字文化の重要性を考慮するとともに、「民主主義の根幹を形成するものへのさらなる課税は好ましくない」として、週2回以上発行する新聞(戸別配達)を定期購読契約している場合に軽減税率(適用税率8%)の対象とすることとなった。定期購読以外の新聞や書籍・雑誌など出版物を軽減税率の対象に含めるかは「日常生活における意義、有害図書排除の仕組みの構築状況等を総合的に勘案しつつ、引き続き検討する」としている。

軽減税率の経理方式については、当面、現行制度を一部変更して軽減税率導入時に請求書で軽減税率適用商品に印を付けて合計額の税率・税額を記す「簡易な経理方式」の採用を認め、2021年4月には商品ごとに税率や税額を明記する「インボイス(適格請求書等保存方式)」に移行する。軽減税率の導入までの猶予期間が限られており、事業者らの準備が間にあわないのではないかとの懸念もあるため、政府・与党は、事業者の準備状況などを検証しながら、混乱なく軽減税率制度の円滑な導入・運用を可能にするための措置を必要に応じて講ずるなど、一体となって万全の準備を進めていくとしている。

 

 軽減税率の導入に伴う年間減収約1兆円分の穴埋め財源については、医療・介護や保育などの自己負担の合算額に上限を設定し上限を超えた分を国が給付する「総合合算制度」の実施見送りで捻出できる年4000億円などのほかは、確保できるメドが立っていない。2020年度に基礎的財政収支を黒字化する財政健全化目標を堅持したうえで、(1)2016年度末までに歳入出における法制上の措置などに講ずることにより、責任を持って安定的な恒久財源を確保、(2)財政健全化目標との関係や経済・財政再生計画の中間評価を踏まえつつ、消費税制度を含む税制の構造改革や社会保障制度改革などの歳入出のあり方について検討して必要な措置を講ずるとし、これらを税制改正法案で規定する。

 政府・与党は、厳しい財政状況を踏まえて新規国債発行には頼らない方針で、穴埋め財源の捻出策として、たばこ税増税(1本あたり3円引き上げ)のほか、今後の景気回復によって見込まれる税収の上振れ分の活用、国の外貨建て資産を管理する外国為替資金特別会計からの繰り入れ(2014年度剰余金3.4兆円)などが浮上している。ただ、政府・与党内から、上振れ分の活用や特別会計からの繰り入れは安定的な恒久財源にはならないとの否定的見解も示されており、今後、1年程度かけてどのように捻出するかが焦点となる。また、「明確な線引きは簡単なものではない」(麻生副総理兼財務大臣)だけに、曖昧さが残る区分け基準をどこまで明確なものにしていくかも

 

 今後、政府・与党は、与党税制改正大綱を踏まえ、軽減税率制度を含む税制改正関連法案を来年2月上旬にも通常国会(1月4日召集)へ提出し、来年度予算とともに年度内に成立させる方針だ。安倍総理は、法案化に向けた今後の手続きにあたり「党内をまとめて一致団結してやってほしい」と谷垣幹事長に指示したが、自民党内では安定的な恒久財源が確保されないまま官邸主導の政治決着を図ったことへの不満がくすぶっている。「国の財政が逼迫した状況に対する認識をもっと持たなければならない」「財源論を棚上げにして、政治判断を優先するなら自民党の税制決定の根幹が揺らぐ」「事業者などの手続きが煩雑になる」「事業者取引に多大な混乱を招く。国民生活に影響を与える背信行為」など、財政規律に影響が出かねないことや、国民生活や事業者に混乱・負担が生じかねないことへの懸念・批判の声が相次いだ。また、官邸主導で公明党に譲歩せざるをえなくなったことへの反発も大きいようだ。

 

 

【補正予算案が18日に閣議決定】

 1億総活躍社会の実現に向けた緊急対策やTPP対策大綱などを柱とする「補正予算案」を12月18日に閣議決定する。補正予算案は3.3兆円規模で、財源として昨年度決算剰余金(約2.2兆円)や、法人税・所得税や消費税など今年度予算の税収上振れ分(約1.9兆円)などを充てる。 

 

 1億総活躍社会の実現に向けて緊急性の高い事業(約1.2兆円)として、地方創生加速化交付金(約1000億円)、介護施設整備(約900億円)、保育士の確保(約800億円)、保育所などの整備前倒し(約500億円)、介護人材確保(約500億円)などが盛り込まれる。具体的には、保育・介護サービスを手掛ける中小事業者の資金繰り支援(約15億円)や、介護離職対策として介護施設の整備を加速させるために都市部の国有地を介護施設の運営事業者に相場より安い価格での貸し出し(約20億円)、来年1月以降に建設する3世代同居用住宅を対象に住宅建設費の2分の1を補助(上限100万円台、約100億円)などが計上されるようだ。

来年前半の民間消費の下支えや生活支援を目的に低所得の年金受給者約1100万人(65歳以上で住民税の非課税世帯と年金などの収入が年155万円程度の単身世帯で、生活保護受給世帯は除外)に1人あたり約3万円を支給する臨時給付金(事務費を踏む目て約3620億円)をめぐっては、16日の自民党厚生労働関係合同部会で、給付目的が不明確、高齢者優遇、バラマキと捉えられかねないなどと批判的な意見が相次いだ。17日の合同会議で、「将来世代に負担を先送りしない、真に必要な人に手厚い社会保障が届く改革を検討する場を設けるので若手に参加してほしい」(稲田政調会長)と、若者対策・貧困対策なども同時に進めていくことを約束したため、臨時給付金を含む1億総活躍社会関連の補正予算案が最終的に了承された。

 

 農林水産分野(約4008億円)のうち、交渉参加12カ国による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意を受けてのTPP対策大綱関連(約3122億円)では、農地の大区画化や農道・排水路・農業用ダムなどの整備といった土地改良事業(約940億円)のほか、地域で収益力を高める畜産・畑作分野の体質強化に向けた「畜産クラスター事業」「産地パワーアップ事業」(複数年度にわたって柔軟に運用できる基金方式で約1115億円)、担い手農家を対象にした実質無利子化などの金融対策(基金方式で約100億円)、水産業の競争力強化緊急事業(約225億円)、合板・製材の生産性強化(約290億円)などが盛り込まれた。

TPP対策以外では、2015年産の飼料用米・麦・大豆などの増産に対応し、水田活用の直接支払交付金の財源の積み増し(約150億円)、防災・減災対策としての農業農村整備事業(50億円)、青年就農給付金や台風被害対策なども計上ざれるようだ。

 

農業以外のTPP対策としては、地方自治体や商工会議所が一体となって中小企業の海外販路拡大や商品開発を支援する連携組織発足に向けた関連費用(約1200億円)や、関税撤廃で輸入品との競争が激化する皮革産業向けの経営支援策・多国籍企業の誘致費用など(約800億円)が盛り込まれるようだ。 

このほか、東日本大震災の復興事業の着実な推進と被災事業者の自立支援などに向けて復興特別会計に約7900億円の繰り入れ、9月の関東・東北水害の復旧や河川整備など(約5000億円)も盛り込む。テロ対策・難民対策、2016年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)開催に向けた対策費、2017年4月に消費税率10%への引き上げに伴って負担緩和策として導入する軽減税率に係る中小事業者向け相談窓口の設置など関連対策費、米軍再編にかかる経費、マイナンバーカードの早期交付も計上されるようだ。

 

 

【予算編成の動向と内容に注目を】

 18日には、政府が補正予算案を閣議決定する。来年度予算案の編成作業が大詰めを迎えており、来週24日に閣議決定する。来年度予算案は一般会計総額96兆円台、景気回復に伴う法人税・所得税の増加や消費税率の8%への引き上げなどにより税収が57兆円台半ばとなる見通しで、新規国債の発行は34兆円台とする方針だ。与党の歳出圧力も強まっており、財務省・各省庁間の激しい攻防が続いている。

 バラマキ施策をどのように抑え、実効性かつメリハリある補正予算案・来年度予算案を編成していくことができるのか。予算編成をめぐる政府・与党の動向を抑えつつ、最終的にどのような予算内容となるのかを見極めることが大切だ。
 

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